著者:ル・コルドン・ブルー
発行年月:2010年12月13日
判型:B5変 頁数:228頁
定価:4,200円(税込)
フランス人の菓子職人を取材して
書籍にまとめたのはこれがはじめてです。
「フランス人シェフはやはり違うよ」、と言っていた
日置武晴カメラマンの言葉が少し理解できた仕事でした。
なによりも形から入らず、なぜそうやるかを合理的に考えて動く。
それも頭で考える、というよりは体の中に染み込んでいる技術が
あふれてくるような感覚。
このためか「軽々と仕事をこなす」ように見えました。
チョコレートは日本ではまだまだ浸透していないお菓子であり、
技術なのでとくにそう感じたのかもしれません。
チョコレートはあらゆる点で温度管理が必要な食材です。
ある温度以下だと急にキュッと締まって固くなり、
ある温度以上だと溶けてしまいます。
型に流す時もこの特性をわかっていないと、
とり出すタイミングが遅すぎて冷えて固くなれば
割れてしまったりもします。
この温度をコントロールすることで
自由自在にボンボンがつくれることを、
かろやかに教えていただきました。
たとえばコーティングするチョコレートを厚くしたい場合は、
とろみを上げる感覚で温度を少しだけ低くします。
逆に薄くしたい時は温度を少し上げたり。
樹脂製の型を使ったピエスに
「子ども用ギフト」があります。
ここで使ったのは余分にカカオバターを加えて
柔らかくしたチョコレートでした。
レゴでつくった自家製の型は細かい溝がたくさんあります。
それを型どるのには流動性が高いチョコレートが必要だったのです。
味は本来のチョコレートよりも劣ります。
しかし、子どもが楽しめる形であることを優先させました。
また、樹脂製型は柔らかく、
手に持って作業すると簡単に変形してしまいます。
樹脂製型の場合は、トレイの上で固定して型どりをして見せてくれました。
動いたら形が崩れてしまうからです。
言われてみれば、あたり前の動作なのですが。
つくり手が優秀だったからかもしれませんけれど、
「なるほどね」とうなづける場面が多く、
それがフランス人なのかな、と思った書籍でした。
この点は、チョコレート上級者にも楽しめるのではないかと思います。