« 『ラ・パティスリー・デ・レーヴ レシピブック』 | TOPページへ | 料理本のソムリエ [vol.50] »

2012年12月26日

『イタリア菓子』

06158.jpg『イタリア菓子』
著者:藤田統三
発行年月:2012年12月28日
判型:B5変 頁数:176頁

イタリア菓子って大ざっぱで大味、ボソッとしておいしそうじゃない、
そんなふうに思っている人、けっこういるんじゃないでしょうか。
不肖、編集担当は、今回の撮影を通じて、以下のような結論にいたりました。


イタリア菓子は、手を抜いていい加減に作れば全然おいしくない。
でも、確かな素材を使ってきちんと基本を押さえて作ればこんなにおいしいものはない。


イタリア菓子に限らず、どんなものでもそうだとは思いますが、シンプルなだけに逃げ道がなく、手をかけたことも、手を抜いたことも、結果として際立ってくるのだと思います。
そして、イタリア菓子ってけっこう繊細だということもわかりました。シェフと本のタイトルについてご相談していた時、『意外と芸細(ゲイコマ) イタリア菓子』というのが浮上しました。内容的にはピッタリですよね、と、危うく決まりかけたほどで…(笑)。


「シンプル、飽きない、生地がうまい!」

イタリア菓子を端的にあらわしているキーワードだと思います。
本書に登場したお菓子の中から、まさにそんな一品をいくつかご紹介しましょう。
担当者が感動した、ほんのほんの一例です。


06158_1.jpg『メリンゲ・コン・フルッタ』
絶品でした。
卵白だけで、なんでこんなにおいしいの?というくらい。
卵白にグラニュー糖を加えて泡立て、低温で焼くだけのお菓子なのですが、合わせたホイップクリームとフルーツが絶妙のマッチングで、甘ーいけれど、クセになる一品でした。
苦いコーヒーと合いますね。

06158_2.jpg『トルタ・デッラ・ノンナ』
直訳はおばあちゃんのタルト。
タルト生地にカスタードクリームを詰め、松の実、塩、あられ糖、粉糖をふって焼くだけの素朴なタルトです。切り分けたらガブリとかぶりついて、あっという間にペロリ。生地とクリームの一体感、松の実の香ばしさ、砂糖と塩のコンビネーション……。
何なんでしょう、もう、文句なくおいしいのです。
毎日食べても飽きないと思います。


粉、砂糖、卵、バターだけで作る『トルタ・パラディーゾ』(左)や『トルタ・サッビオーサ』(右)は、まさに粉を味わうお菓子です。粉のおいしさが舌の上でフワーッと広がるお菓子なんて、他にはなかなかないでしょう。

06158_3.jpg


ただし、これら、一見単純そのものに見えるお菓子でも、粉のふるい方、バターの温度、砂糖を加えるタイミング、生地の混ぜ具合、型の準備、オーブンの設定(ダンパーの開閉や上火・下火の強弱)などなど、注意すべき点がいくつもあります。そこがイタリア菓子の奥深さです。


06158_4.jpgさて、ここで著者、藤田シェフのお人柄について少々。
シェフは一つのことをトコトン追究するタイプです。そして常に工夫を加え、練習を繰り返して、前へ前へと進むタイプです。いつもバイタリティにあふれています。ですから、いろいろな肩書きをお持ちです。
たとえば、イタリア菓子歴史研究家、ティラミス研究家、ジェノワーズの達人などなど。ジェラート開発については専門家です。あと、余談ですが、典型的なおしゃべり大好き関西人(スミマセン!)。お話がおもしろくて、熱くて、気がつけば1、2時間があっという間に過ぎていることもしばしば。


本書では、実際にお店で販売されているものの他、店では出されていない伝統的なお菓子も多く作っていただきました。そんな中シェフは、昔の文献をひもとき、解釈して、時に自分なりの工夫を加え、また時にはそのままの形で、いずれにしてもきちんと咀嚼をした上でレシピをご提案くださいました。
最後に、いつもシェフからいただいていた明るい言葉で、この本の紹介を締めくくりたいと思います。

「これ、メッチャおいしいんですよー。いっぺん食べてみてください!!」(目を輝かせながら)

06158_5.jpg

柴田書店Topページへ

投稿者 webmaster : 2012年12月26日 09:54