兵庫県三田市の超繁盛菓子店「パティシエ エス コヤマ」オーナーパティシエ小山 進氏による初のショコラ技術書。
小山氏は、パリのサロン・デュ・ショコラ2014にて外国人部門最優秀ショコラティエ賞を満点評価で受賞。またフランス国内外のベスト150を投票で決めるC.C.C.(クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ)2014では最高位評価となる『ゴールドタブレット+☆』を獲得。3度目のW受賞の栄誉に輝きました。
インターナショナル・チョコレート・アワーズ2013世界大会では、世界から集められた400作品の中で氏の3作品が特別賞「ゴールド&クリスタル」を受賞するなど、まさにいま世界が注目するショコラティエです。
本書は小山氏が一粒一粒に込めた世界観とレシピの全容を解き明かします。またショコラ製造に欠かせない「乳化」の技術やガナッシュの基礎と実践、成形についても詳しく解説。巻頭では著者自ら原産地マダガスカルに旅し、果実であるカカオがショコラになるまでの道のりをたどります。
まずは、著者とカメラマンが自ら原産地マダガスカルに旅し、果実であるカカオがショコラになるまでの道のりをたどります。
カカオ豆の生育する環境、品種を観察し、豆の発酵プロセスから複雑な香りの一部が生まれること、焙煎から流動体になるまでの工程を追い、「農作物としてのカカオ」「発酵食品としてのカカオ」の側面を知ることができます。
チョコレートの専門技術書であるが、このマダガスカルでの現地レポートをはじめ、それぞれのボンボンショコラやチョコレートを使った菓子を発想したストーリー、チョコレートづくりや菓子職人としての哲学が詰まっており、菓子を愛する方ならば誰にでもおすすめしたい1冊です。
小山氏が使う素材の多くは、氏が産地におもむいて、栽培や製造の方法はもちろん、手がける人びとが何を大事につくっているのかを実地に感じとり、菓子に取り入れています。
パリで大好評を得た「DNA Kyoto Japon」と呼ぶアソートセットでは酒粕、大徳寺納豆、醤油など日本の素材を大胆に採り入れたボンボンショコラを組み合わせましたが、これらも酒粕なら酒蔵、醤油なら醤油メーカーを訪れて吟味しています。
書名「ショコラ・ジャポネ」つまり日本のショコラという意味は、単に和素材とかエキゾチックさを狙うということではなく、日本人の京都生まれの職人としての氏が、自身のDNAの中にあるおいしさ、味覚を表現した結果として生まれたということを示しています。
通常の書籍編集ではほぼ省略するような途中の過程(チョコレートの状態など)を掲載し、失敗しないショコラづくりのための道しるべとしています。世界的に評価の高い小山氏のショコラの技術とレシピがすべて公開されていることが本書の価値であり、とくに後進の方には役立てていただきたい1冊です。
印象的なビジュアルの写真は、写真家・石丸直人氏によるもの。小さなボンボンショコラに含まれた素材のイメージを、独自の世界に写し出しています。石丸氏は広告写真を主として活動するカメラマンで、書籍として1冊を担当するのは初めて、さらに製菓の製造手順(プロセス)写真を撮るのも初の挑戦。しかし素晴らしい感性で、ショコラ製造という一瞬のドラマを切り取っています。