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2011年09月06日

『決定版 レヌ・アロラのおいしいインド料理』 Part 3

00612.jpg『決定版 レヌ・アロラのおいしいインド料理』
著者:レヌ・アロラ
発行年月:2011年8月8日
判型:B5変 頁数:184頁


スパイス、料理の猛特訓 !!!

“ヒング” というスパイスがあります。
インド人が便秘知らず(だったのですね!)だというのは
このスパイスのおかげだと、アロラさんはいいます。

インドでは常備するスパイスのひとつで、
どんな料理にも使える万能選手だとか。

でも、アロラさんは久しくこのスパイスを遠ざけていました。
アロラさんのお母様がいくら薦めても。
なぜならばこのスパイス、
トイレの消臭剤のようなにおいがするからなのです。
アロラさんは歳を重ねていくうちに、
体にいいからというお母様の助言もあり、
このスパイスと向き合うようになったといいます。

06120_9.jpg ◎ヒング (塊、粉)

くさいけれど消化を助ける
“必須スパイス”。

西アジア原産の
セリ科の多年草からつくる。

ヒングは最初に油といっしょに熱して使う
スタータースパイスのひとつです。
でも、どこまで加熱したらいいかの見極めがむずかしかったといいます。
いまではそれを上手に使いこなしています。
油といっしょに加熱していくと、ある瞬間から香りが変わります。
くさいにおいが消えて、玉ネギを炒めたような香りになるのです。

実はこの香りの変化を実感するために私も猛特訓を受けました。

ヒングを油で加熱するとき、私とスタイリストの高橋みどりさんが呼ばれました。
アロラさんの両側にふたりが立つようにいわれ、
その位置に立つやいなやアロラさんは私たちの首根っこをつかみ、
鍋の油の上に近づけたのです。

え、ナニこれ? 

「わかりますか? そのうちにおいが変わってきます。
よーくにおいを嗅いでいてくださいね」とアロラさん。
まだ、ヒングのことも詳しく聞いていないときに突然のことだったので、
わけがわかりません。
でも、確かにくさいにおいがなくなる瞬間がありました。
そしてかすかに甘い香りが。

顔を火にかけた油に近づけたといっても心配ありません。
鍋は洗ったあとの水気をしっかりふきとるように
助手さんたちには口をすっぱくしていい、
火加減は長年の経験ではねないようにごく弱火です。

もうひとつ、 “パニール” の特訓も受けました。
パニールとは「インドのチーズ」のようなものです。
インドではバターやマーガリンなどのようにお店で買うもので、
家庭ではあまりつくらないとのこと。
でも、日本にはないのでレシピを考えました。

通常は、牛乳やヨーグルトに凝固させるための
酢やレモン汁を加えてから水分を除き、固めてつくります。
アロラさんの場合は生クリームを加えて
リッチな味にしているのが特徴です。

06120_10.jpg06120_11.jpg
(左) ◎パニール
(右) ◎レッドパッパー
     パニール

そのパニールのプロセス撮りをしました。
見ているとポイントさえ押さえればむずかしくはありません。
でも、アロラさんいわく、生徒さんたちはこんなに簡単なのに、
むずかしそうといってなかなかつくろうとしないというのです。

つくってみようとしないからそう思うのだと。
食わず嫌いならぬ、つくらず嫌い、でしょうか。

その日の撮影が終わり、さぁ帰ろうというときに、
アロラさんがこれを持って帰ってねと
私とスタイリストのみどりさんに渡したものがあります。
牛乳、生クリームとレモン、それに赤ちゃん用品売場で売られているという
2重になったガーゼハンカチ。
ヨーグルトだけは自分で買ってといわれて。
みどりさんにも当日取材したポイントも加えてレシピを渡しました。

その日は撮影終了も早めで、
自宅にもどってから見たとおり、聞いたとおりにつくりました。
簡単です。あとは重石をして1時間半以上待てばよし。
そして、少し薄めに仕上がりましたがちゃんとでき上がりました。
自分でつくったパニール。ワインにもぴったりでした。

そして次の撮影のとき、「おいしくできたよ」とみどりさんも。
以来、彼女はたびたびパニールをつくるようになっています。
コクがあるパニール。
別にインド料理にするわけではなくても、つくっているようです。

見るとつくるでは大違い。
こうしてときに特訓を受け、撮影終了時には

“““インド料理 のとりこ””” になっていました。

06120_12.jpg

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投稿者 webmaster : 2011年09月06日 09:55