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2012年05月17日
『専門料理2012年6月号』 編集後記より
『専門料理2012年6月号』
発行年月:2012年5月19日
判型:A4変 頁数:184頁
特集:デザート 初夏の食事の最後を飾る皿45
「華やかさや驚きも、デザートのおいしさのうち!」
「アレンジしやすいからこそ、基本が大切なんですね」
今月の特集は「デザート」。レストランのデザート、ビストロのデザート、そして日本食材の活用法と盛りだくさんの内容で、華やかな一冊になりました。
第1企画の「『これぞレストラン』堂々たるデザート拝見」では、山根シェフ(ポンテベッキオ。20ページ)のデザート(写真1)が印象的だったね。
「果物が少ない時季に、旬の野菜でデザートを作ってみては?」という提案でした。ホワイトアスパラガスを大胆に使って、白いのはソース・オランデーズ? と思ったらザバイオーネだったり、こんがり焼けたアーモンドのタルトが添えられていたり。驚きがあって、しかもおいしい。まさにリストランテのデザートです。
第2企画には、気鋭のシェフ6人が登場。素材の特性を掘り下げたり、プレゼンテーションに遊び心を加えたりと、勢いが感じられる品を見せてくれた。
小笠原シェフ(エクイリブリオ。28ページ)の3品は一見シンプルに見えるけれど、スポンジとクリームを3日間なじませたティラミス風のデザートに、料理と並行して焼き上げるでき立てのタルト、そして半年間熟成させたクリ(写真2) ―― と、実はどれも「時間」にフォーカスにした意欲作。藤原シェフ(Fujiya1935。32ページ)の「記憶の中のイチゴ畑」をイメージした品(写真3)とも通じる、テーマ性の高いデザートでした。
ところで、「ビストロのデザート」と聞いたらどんなものが思い浮かぶ?
唐突ですね……。
ババにパリ・ブレストにタルトとか、クラシックなお菓子のイメージかな。
そうしたビストロの定番の品のブラッシュアップ版を見せてくれたのが、第3企画の金井シェフ(ブノワ。38ページ)や田中シェフ(サンパ。40ページ)。ババ一つとってもアルマニャックを使った金井シェフに、ワインのコルク形に焼いた生地に赤ワインを添えた(写真4)田中シェフと、意外性のある仕立てでいい意味で期待を裏切ってくれました。
意外性といえば、全体を通して、醤油や桜の花など日本食材を積極的に取り入れるシェフも多かったです。
そうした日本食材の活用法を、森田シェフ(リベルターブル。50ページ)に掘り下げて考えていただいた。その結果出てきた「ポイントは、無理をしすぎないこと」という言葉は示唆に富んでいた。
食材の持つ日本的なイメージに引っ張られすぎず、自然な形でフランス料理に落とし込むことが大切なんですね。
アレンジをきかせやすいデザートだからこそ、基本がしっかりしているかどうかで、でき上がりに差が出るんだね。
パリからは、新一ツ星の日本人シェフをレポート!
『ギド・ミシュラン』のフランス版で新たに一ツ星を獲得した小林シェフ(レストラン ケイ。58ページ)と吉武シェフ(Sola par Hiroki.Y。62ページ)にも、パリからご登場いただきました。
2人とも、一ツ星を「目標」としつつも、「ゴール」とはとらえていない。さらに先を見すえていたのが印象的。料理にも、その勢いが現れていましたね。
平松宏之シェフ、吉野 建シェフといったベテランが切り開いた道を今、若手が邁進中。本場・パリの日本人料理人の層も確実に厚みを増しています!
投稿者 webmaster : 2012年05月17日 19:21