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2013年04月16日
『シンプルでも素材らしく』
[イデミスギノ] 杉野英実のスイーツ
『シンプルでも素材らしく』
著者:杉野英実
発行年月:2013年4月19日
判型:B5変 頁数:88頁
簡単につくれても杉野流にこだわる!
撮影をスタートする何カ月か前のこと、試作品が何品かできたというので杉野シェフのお店「イデミ スギノ」に行きました。
まずは、イチゴとオレンジに白ワインなどを加えてつくった色鮮やかなカクテル「フレゼット」をいただきました。
そのカクテルのおいしかったこと!
修業先のスイスのレストランでアペリティフ(食前酒)として出していたものだそうです。
味はいいけれど商品としてはそのまま使えない形の悪いフルーツなどを利用したもので、フレッシュフルーツをふんだんに使った「デザート」のような味わいで、レストランでもめったにお目にかかれない味でした。
次に出てきたのは
パイナップルとライムのマリネです。
砂糖とライムとキルシュでマリネしただけなのに、パイナップルがライムの香りをまとって、まるで優雅な香水をつけた貴婦人のような上品な味に変化していました。
こうした素材の組合せこそが 「杉野マジック」 なのです。
かつて『素材より素材らしく』の撮影時に試食したイチジクのタルトレットを思い出します。茫洋とした味わいのイチジクが砂糖とキルシュでマリネすることでその味の輪郭がくっきりと浮き上がってきたのです。
この本では、そんな驚きのある味わいの「パーツ」をとり出し、シンプルだけれど杉野さんらしいスイーツに仕立ててほしいと願っていました。その感動を読者にも伝えたいと考えていたからです。
それからもうひとつ。
序文にも書かれていることですが、杉野さんは素材を替えてもおいしく仕上がるレシピであるようにと意識してつくっています。
それは自分がお菓子をつくる時に素材を替えてつくる中で新しい味の発見をしてきたからで、読者にもそんな体験をしてもらいたいと考えているからです。
たとえば冷凍カシスのシロップ煮が、カシスじゃなくてブルーベリーだったらどうなるか。その味の変化を感じてほしいというのです。
複雑にカチッと組まれたレシピでは、この追体験はむずかしい。シンプルだからこそ素材の組合せから生まれる驚きある味もわかるし、簡単だからこそ何回もつくることができます。
実は担当である私も編集にあたって何品か試作しました。
料理はつくっても、お菓子はほとんどつくりません。でも何品もつくることができました。
シンプルだけれどポイントはあります。
冷凍ベリーのシロップ煮はベリーによってはレモン汁を加えたほうがいいなと思ったり、また、チュイルは1ミリの厚さの違いで食感が変わったり。
つくって食べて感じ、ポイントをさぐりながら自分でおいしい味を求めるのは楽しい作業です。
楽しいのは、「想像力が広がる」レシピだからです。
何度もつくりたくなるのです。次は少し工夫して、と。
それもこれも、日頃お菓子をつくらない読者にもできる簡単なレシピだからこそできること。そして、杉野さんの力のあるレシピだからこそ楽しくなるのだと思います。
「簡単なだけ」ではつまらない。
杉野マジックで簡単でおいしいデザートをつくるだけでなく、おいしさを追求するお菓子づくりの楽しさも味わっていただければと思います。
*** 杉野英実さんの本 好評発売中!! ************
『杉野英実の菓子 素材より素材らしく』
発行年月:1998年11月5日
判型:B5 頁数:216頁
『杉野英実のデザートブック』
発行年月:2003年12月15日
判型:B5 頁数:108頁
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投稿者 webmaster : 2013年04月16日 13:21