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2013年05月17日
『専門料理2013年6月号』 編集後記より
『専門料理2013年6月号』
発行年月:2013年5月18日
判型:A4変 頁数:164頁
特集:アミューズと前菜
「5ジャンル15人の気鋭シェフによる、アイデアに富んだ60品を一挙掲載!」
「素材別に並べることで、各素材のさまざまな特徴や調理の傾向を探ります」
今月号の特集は「アミューズと前菜」。気鋭シェフのアイデアに富んだ料理をとことんいっぱい紹介しよう! という内容です。
『専門料理』初掲載の料理が60品! これだけ数が揃うと圧巻だね。1月号「料理界25人の言葉」、4月号「オーナーシェフのための開業・経営読本」など、最近はいわゆる“読みもの系”の特集が多かったから、どこか新鮮な気分です。編集作業中は、頁をめくるたびにワクワクしました!
前菜は魚の皿、エビ・カニの皿、貝の皿、フォワグラの皿……というふうに素材別にまとめたんだけど、シェフによってその素材へのアプローチの仕方はさまざまだった。
普段はシェフごとにまとめて頁を構成することが多いよね。でも、こうして素材ごとに並べると、シェフによって、その素材のどこに焦点をあてているのかがよくわかる。「素材は多面的だ」って村田吉弘氏(菊乃井)も今月の柴田日本料理研鑽会(103頁)で言っていたけど、まさにそれを実感しました!
それと、「誰が作っている」という先入観がないからか、その素材のいろんな特徴や調理の傾向が、よりはっきり理解できるように思うよ。
今回は、多くのアイデアを紹介できるよう、仏、伊、西、日、中の5ジャンル15人の気鋭シェフにご登場いただきました。とくに感じたのは、ジャンルの垣根は確実に取り払われつつあるなぁということ。多くのシェフが、自身のジャンル以外の調理法をうまく採り入れていた。
スペイン料理の本多誠一シェフ(スリオラ)は「魚の皿」でサバをシードルヴィネガーや香草でマリネしていたけど、これは日本料理の“〆サバ”の技法を採り入れたもの。また、中国料理の栖原一之シェフ(龍圓)は「山海取合せの皿」で同じく日本料理の酢〆と、フランス料理のアロゼやルポゼを使って、個性的な料理を紹介してくださいました。
その栖原シェフの「香りを召し上がる燻製」は、ラップ紙を張った器の中に燻煙を閉じ込め、1ヵ所だけあけた穴から煙が立ち上る、という仕かけで、その燻香とともに料理を味わってもらうというもの。
驚きや楽しさにあふれたプレゼンテーションは、お客さんの心を掴みやすいよね。アミューズ30品では、とくにユニークな料理が数多く並びました。
中でも長谷川在佑シェフ(傳)のアミューズはインパクト大! カラスミを練り込んだクッキーでテーブルゲームの「JENGA」を模した「DENGA」は、一気に長谷川シェフの世界に引き込む力がある。
小霜浩之シェフ(コシモ・プリュス)はひと口サイズの前菜、スープ、魚料理、肉料理、デザートを細長いトーストに一列に並べたカナッペを紹介。アミューズでフルコースを表現する試みです。
60品の他、タイプの異なる2人によるフィンガーフードも
今回はこの他、スペイン人シェフのホセ・バラオナ・ビニェス氏(レ・ストゥディ)と、銀座でバーを営む間口一就氏(ロックフィッシュ)の2人による、ひと口サイズの品も紹介。
ともに最近フィンガーフードのレシピ本を上梓していて、意外性のある素材の組合せや、ひと口で満足させる味のつけ方なんかは、きっと多くの料理人の参考になるよね。素材選びや調理法、盛りつけや器使いなど、アミューズと前菜は比較的遊び心を加えやすいからこそ、さまざまなアイデアをうまく採り入れてほしいと思います。
そうそう。お気づきの方も多いと思いますが、表紙の料理は五十嵐安雄シェフ(ル・マノアール・ダスティン)が長年作り続けている「スペシャリテ 人参のムース コンソメジュレとウニ添え」。
先日、独立して20周年を迎えた五十嵐シェフの代表作だよね。
「本誌を参考に、こうした長年愛される前菜を作ってほしい」との思いを込めて、表紙に使わせていただきました!
投稿者 webmaster : 2013年05月17日 10:10