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2013年08月29日
『アロマフレスカのイタリア料理』
『アロマフレスカのイタリア料理』
著者:原田慎次
発行年月:2013年8月30日
判型:B5変 頁数:168頁
旬の食材を追いかけながら、撮影・取材をさせていただくこと約2年間。
いつも感心させられたのは、原田シェフの、食材に対するあくなき探究心です。
食べ歩きの数も半端ではありません。
「これは〇〇という鮨店のご主人から教わったやり方ですが…」
「この素材は〇〇という日本料理店で出されているものが一番おいしいと思うのですが…」
「このスパイスはたまたま東南アジアのお土産にもらって気に入ったもので…」
「これは中国料理の方々がよく使われていて、その技法からヒントを得たものですが…」
と、次から次へと、食材にまつわる国境なき話題が飛び出します。
企画段階で、どういう料理を掲載しましょうか、
というご相談をしていた時から、登場する魚介の種類の多さにはびっくりでした。
「ここはお鮨屋さん?」と思うほどの、扱う魚種の多さと下処理の丁寧さ。
アユは今でこそ、レストランでも珍しくない存在になりましたが、
シャコ、トリガイ、ノドグロ、アマダイ、クエ、アイナメ、メヌケ、タチウオ、
キンキ、白子などなど、普通のイタリア料理店ではまずお目にかかることのないものたちです。
◎きんきの海藻ココット蒸し
キンキを1尾丸ごと5種類の海藻で包み、
潮の香豊かに蒸し焼きにした一品。
◎空豆のスフレ風オムレツ
ソラ豆と卵の生地を型詰めし、
スフレ風にふっくらと焼き上げたオムレツ。
パリパリに揚げたソラ豆のシートを添えて風味を高める。
◎仔うさぎの香草ロースト、狩猟風内臓ソース
野鳥のローストに使われる内臓ソース
「サルサ・ギョッタ」を淡白な仔ウサギ肉にからめて
コクをつけたロースト料理。
もちろん、アロマフレスカのスペシャリテには肉料理もたくさんあり、
その素材選びにも、シェフは並々ならぬこだわりを持っておられますが、
季節感を重視していくと、最終的に魚料理の数が圧倒的多くなりました。
ある程度決まった魚種しか使わず、しかも同じような調理法が多い、
一般的なイタリア料理店の魚料理と比べると、その差は歴然。
お客にとっても、とくに魚好きの日本人にとっては、
大きな楽しみにつながるものでしょう。
バラエティ豊かな魚介料理は、
“アロマフレスカのオリジナリティ”を象徴するものの一つであることは
間違いないと思います。
もしかしたら、高級鮨店のおまかせ鮨を食べるような心づもりで、
アロマフレスカのコース料理を味わってみるのも、
おもしろいかもしれませんね(あくまで個人的な意見ですが…)。
投稿者 webmaster : 10:04
2013年08月27日
『ニュー・スタンダード・ドリンク 102』
『ニュー・スタンダード・ドリンク 102』
柴田書店編
発行年月:2013年8月28日
判型:A5変 頁数:168頁
本書の取材は、柴田書店の月刊MOOK『cafe-sweets』の
連載「人気カフェのオリジナルドリンクレシピ」と共同ですすめたものです。
初回の「カオリズ」さんでの撮影は、なんと2012年1月のことでした。
それから毎月各1店のペースで取材させていただきました。
取材時には、MOOKに掲載する4品のドリンクに加えて
数品のドリンクの追加撮影をお願いするというかたちで、
本書に掲載した102のドリンクが顔を揃えた次第です。
お忙しいなか、遠い先の刊行予定を信じて(?!)
単行本用の撮影・取材にも快くご協力くださったカフェの皆さまには、
お礼の言葉もありません。
本当にありがとうございました。
◎葡萄とミントのソーダ
2色のブドウでグラスを鮮やかに演出。
ミントの香りで、濃厚な甘さのブドウも
爽やかな印象に。
◎グルーヴィ グァバ
鋭い酸味と香りが個性の
トロピカルフルーツ、グァバ。
その果汁をココナッツミルクと合わせると
まろやかになる。
デンファレを飾り、
味も見た目もハワイアンテイストの1杯に。
◎ティラミスラテ
ティラミスをドリンクに再構築。
チーズのミルキーなこくと
コーヒーのほろ苦さがくり返し訪れる、
飲み飽きない組み合わせ。
そして、撮影中も撮影後も、
おいしいドリンクを次々にいただけるというのは、
本企画のうれしいところでした。
撮影中にコーヒーや紅茶のドリンクでしゃきっとしたり、
早朝の撮影後に野菜たっぷりのドリンクで、早起き後の眠気も吹き飛んだり。
すっと体と心にしみ込んで元気をくれる。
そんなドリンクの力を一番実感しているのは、
じつは本書の取材チームかもしれません。
この本を手にとってくださった方にも、
102のレシピに込められたパワーが届きますように。
投稿者 webmaster : 16:13
2013年08月16日
『専門料理2013年9月号』 編集後記より
『専門料理2013年9月号』
発行年月:2013年8月19日
判型:A4変 頁数:160頁
特集:野菜料理の四季
「昨秋から1年間かけて撮った季節の野菜料理を一挙公開します!」
「旬のある野菜だからこそ、その時々の野菜に応じたアプローチが重要」
今月の特集は、2007年以来、実に6年ぶりの「野菜料理」です。
前回は5月号だったから、早春の野菜が並んだよね。ただし、野菜は旬が短く、季節で移り変わるもの。せっかくなら1年を通じて使ってもらえる号にしたいと思い、春夏秋冬、1年間の野菜料理を集めました!
いやぁ、去年の秋からコツコツ撮りだめていたわけだけど…こうして1冊になると、ある種の感動があるね。
メイン企画は「レストランの野菜料理」。若手からベテランまで22人のシェフによる旬の野菜を使った料理を、春夏秋冬に分けて掲載しました。
春に登場したのはタケノコにセロリ、ホワイトアスパラガスにミニポワローなど。春野菜は強い苦みを持つものが多いけど、それをどう生かすかにポイントをおくシェフが多かった。
夏はトマト、ズッキーニ、ナスなど代表的な夏野菜の他、ユウガオや野生のウイキョウを使うシェフもいました。
柳 令子シェフ(ピノサリーチェ)はシチリアでの修業時代に地元のトラットリアで食べた野生のウイキョウのパスタを再現。いわゆる普通のウイキョウでは風味が弱いそうで、野生のウイキョウが手に入るようになった去年から今のスタイルで作っているそうです。
ちょっと前までは手に入らなかったような西洋野菜も使えるようになって、表現の幅がグッと広がったよね。
「実りの秋」と言われるだけあって、秋も野菜が豊富。サツマイモにサトイモ、ビーツ、レンコンなどが並んだ。中でも横崎 哲シェフ(オー グルマン)のサツマイモの料理は、「大地の力」を感じさせる盛りつけがインパクト大!。
おもしろかったのは堀江純一郎シェフ(リストランテ イ・ルンガ)のパプリカを使った品。パプリカの名産地のあるピエモンテではパプリカの酢漬けがポピュラーで、それをリストランテの品にアレンジしたんだ。
冬はハクサイ、ニンジン、黒キャバツやカブなど。中でも小峰敏宏シェフ(カーヴ・ド・コンマ)の「白菜と鱈のグラタン」、しみじみとおいしかったなぁ。
寒い冬だからこそ、身も心も温まるような料理が喜ばれるよね。
「野菜のアミューズ 12ヵ月」では、川手寛康シェフ(フロリレージュ)による1月から12月まで12品のアミューズを一堂に集めました。
本物の野菜に似せて作った品や、野菜のピュレをチューブに詰めて「絵の具とパレット」を再現した品など、どれもユニークなものばかり。サービススタッフがジョークを交えて提供することで、お客さんにリラックスしてもらう効果も狙っているんだって。
コース料理となると長時間におよぶわけだし、たしかに最初の「つかみ」は重要だよね。
アラン・パッサール氏による1年間におよぶ季節の野菜料理も
本特集のもう一つの大型企画が「アラン・パッサール 農園から生まれる料理」。去年の秋から?年間、定番を中心に料理12品+デザート1品の計13品を撮影。その品が生まれたエピソードを交えて紹介しました。
パッサール氏は自家菜園を所有していて、畑で受けたインスピレーションをそのままに、菜園の隅にある厨房で試作をしているそう。こんなスタイルに憧れる料理人さんも多いんじゃないかな。
そうそう、表紙の野菜料理は田代和久シェフ(ラ・ブランシュ)にお願いしたのもなんだよね?
本来は根菜類が豊富な冬に作る「こだわり野菜のサラダ仕立て」を、表紙用に無理を言って夏野菜で作ってもらったんだ。田代シェフは、黒羽 徹シェフ(リストランテ プリマヴェーラ)と木村政敏シェフ(知味斎)とともに、インタビューにもお付合いいただきました。
情が厚く、食材や生産者に誠実な田代シェフが作る野菜料理だからこそ、多くの人の心を掴むんだろうね。インタビューしながらそんなことを感じました。
投稿者 webmaster : 15:35
2013年08月14日
料理本のソムリエ [vol.58]
【 vol.58】
夜トマトダイエットは
甘ーいフルーツトマトでもいいの?
暑いですねえー。梅雨の話でも書こうかと思っていたら、東京は七夕前に明けちゃったよ。織姫、彦星大喜び。一方東北や北陸は8月になってようやく梅雨明けを迎えたようで、その差はなんと1カ月。今年の夏はいったいどうなってんでしょうかねえ。
さすがアベノミクス、野菜の値段がだいぶ上がってらあ、と思ったら猛暑やら少雨やら豪雨やらで、日本のあちこちで野菜の育ちがかんばしくないそうです。その点、わが家は自衛にぬかりありません。柴田書店の盟友、七つ森書館(vol.20参照)の『おいしく育てる菜園づくりコツの科学』と『有機農業コツの科学』を社内で見つけまして(何でも落ちてるね、この会社)、それを教科書に野菜作りに精を出しております。
震災の年からグリーンカーテン作りを始めたわが家でありますが、1年2年と経つうちにあの暑い夏の記憶は風化し、葉っぱよりもぶら下がるもののほうに魅力を感じるように。今年はキュウリを植えてみました。もはやただの家庭菜園であります。涼しくなるために始めたのに、この炎天下でせっせと水やりにいそしんだりして、最初の目的はどこへやら。
一応無農薬で育てておりますが、拾った教科書が有機栽培の本なのと、隣に洗濯物を干しているためでして。たかだかプランター栽培だし、街中なので害虫といってもアブラムシやヨトウムシくらいしかつかないし、園芸用薬剤ってのもばかにならないし(本音)。
そんな愛情は注ぐが金はかけていない可愛い可愛いわが家のキュウリですが、ある日根元から元気な子ヅルが伸びてきました。よしよし葉っぱと花が増えるのは大歓迎と思っていたら・・・なんだこりゃ? キュウリの花の10倍くらいの大きさの花が咲きました。むむ、このひときわでかい花、どこかで見覚えが・・・。
そう、あれは蒸し暑い、一昨年の夏のことでありました・・・。煎って食べるつもりでとっといたカボチャの種から芽がでてきたので、なにげなく植えてみたのです。そんな遊び半分の軽い気持ちで始めたのがいけなかったのでしょうか・・・。雄花ばかりで、たまに雌花がついても受粉せず、あげくのはてに葉っぱが真っ白に粉吹くうどん粉病に。咲いてはポタリ、またひとつ咲いてはポタリ・・・。うらめしそうにいくつも地面に散っていったあのカボチャの花ではありませんか! 親の因果が子に報い、生まれいでたる南瓜胡瓜…きゃー!!
なあんて、じつはこのキュウリの苗、台木はカボチャでありまして、そっちのほうから子ヅルが生えてきちゃったんですねえ。放っておいたらキュウリとカボチャの両方の形質を継いでズッキーニが実ったり・・・するわけもありません。キュウリの台木に使われている食用に向かないぺポカボチャが実るだけのようです。ここは心を鬼にしてチョッキン。
それにしても実際に野菜を作ると、農家の大変さがよくわかります。家庭菜園なんて量も質もたかが知れてますし、花が落ちたって生計が立たなくなるわけじゃありません。その点、プロはいつでも結果を出さなきゃいけないのに、天候にふり回されたり相場にふり回されたり・・・。スーパーの野菜がどれも立派なのに割安で、お買い得に見えてきました。
キュウリひとつとってもちゃんと育てるには、病気に強い台木に継ぎ木したり、風で揺れないように添え木をしたり、ネットに誘引したり、剪定したりと手間がかかること。トマトだのナスだの果菜のたぐいの作業は、なんだか花や庭木の園芸に近い感じです。
これは江戸時代から園芸文化が発達した日本のお家芸なんですかねえ。トマトはキュウリのように長く伸びるものの、巻きつくツルを持ち合わせておらず、枝を整理してうまく固定しなければなりません。その画期的な方法として、千葉県農業試験場の青木宏史先生が昭和56年に発表したのが「連続摘心栽培」。摘心とは生長点をちょん切ってこれ以上伸びないように止めることでして、普通は主枝から分かれて出てきた脇芽は摘み取って1本仕立てにし、主枝がある程度伸びてきたら先端を摘心します。ところが連続摘心栽培では、主枝から脇芽が出てきたら主枝のほうを切り、脇芽から脇脇芽が生えてきたら脇芽のほうを切り、脇脇芽から脇脇脇芽が生えてきたら脇脇芽のほうを・・・と繰り返す。常に生えたての生きのいい若枝を伸ばしていく仕立て方なのです。トマトではほかには「つる下ろし整枝法」とか「斜め誘引整枝法」とかありまして、どれもこれも器械体操の技名か何かみたいですごそう。
もう15年くらい前、イタリアのサンマルツァーノ種のトマトについて調べていたときのこと。栽培農家が減ってしまった理由の一つにこの品種は栽培が難しかったから、とあったのですが、日本の農業試験場に聞くとそんなことはないという。どうも意見が合わない、おかしいおかしいと思ったら、加工トマト品種は通常「芯止まり」と呼ばれるある程度以上丈が伸びないタイプでして、支柱も立てずに放っときぱなしなのに対し、サンマルツァーノは例外だったのです。いっぽう日本の生食用トマト品種はみな「非芯止まり」でして、先に述べたような各種整枝法が発達しております。そのため日本の感覚でいうと、サンマルツァーノの栽培がたいして大変に思えないというわけなんですね。
イタリア人の名誉のために一言申しますと、彼らが怠け者で作業が面倒だからサンマルツァーノが衰退したのではありません。手間いらずで安く作れるように改良された新しい加工用品種との競争に押されてしまったということです。いくら品質がよいといっても、トマト缶は量が勝負の世界ですから、太刀打ちできなかったというわけ。
実際、イタリアでも非芯止まりの品種のトマトもまだまだ栽培されていまして、シチリアのパキーノのようにブランド化に成功したものもあります。『イタリア・トマトのすべて』によると、カンパーニャのチェリートマトも鈴なりに実をつけるタイプで、まだ青いうちに枝つきで収穫して、束ねて吊り下げて翌春まで保存するのが伝統だそうです。これを「ピエンノロ(振り子)」というとか。おお、こっちもなんか技名みたいで格好いいぞ。この本はちょっと大判ですが、図版が豊富。缶詰加工の歴史やEUの規定に翻弄されるイタリアの栽培事情についても詳しく、現地のトマト栽培の実際について知りたい方にお勧めです。
そんなイタリアを代表する野菜のトマトも、もともと観賞用として南米からもたらされ、最初の頃は毒があると信じられていたというのは有名な話。そうしたトマトがヨーロッパに受け入れられるまでの経緯については、『トマトが野菜になった日』をどうぞ。原産地のペルーやメキシコ訪問記もありまして、野生トマトがどんな植物なのかがわかります。
ところでトマトといえば永田農法が有名ですね。原産地に近い環境で育てるというのが謳い文句で、水と肥料を与えすぎないようにすると、トマトもホウレン草も本来備えている味になるそうです。もっとも、そもそも原産地のアンデスやイラン高原ってそんなに甘いトマトやホウレン草が出回っているのかしら、という素朴な疑問がわいて参りますが・・・。
トマトに関しては、甘く育てるためのノウハウはかなり解明しているようで、先の青木先生の『消費者志向を重視したトマトの栽培技術』によりますと、水分ストレスをかけるとよいとあります。それには土壌水分を乾燥気味にする方法(水切り栽培ってやつですね)と、肥料を多く与えて根圏を濃度障害気味に管理する方法があるそうです。具体的には根の周りを囲うようにシートを埋めて、ある程度以上根が広がらないようにするとか・・・。群馬産のブリックスナインはまさにこれですな。糖度が10度近い甘いフルーツトマトってのも、最近は珍しくなくなっちゃいましたね。
なお永田農法では有機肥料は否定しておりまして、液体の化学肥料を使うのが前提です。ぎりぎりの量を与えるわけですから、不確定要素の多い有機肥料は使いづらいのでしょう。永田農法創始者の永田照喜治氏は、1960年代に九大農学部の福島栄二先生と砂栽培を共同研究していたそうでして、その当時から一環して液肥主義なのです。今でいう養液栽培ですね。
じゃあ、もういっそ液肥を加えた水の中で育てちゃえ、というのがハイポニカ農法です。球根の水栽培のようにして育てますと土の中の病原菌やら害虫の害が防げるうえに、土が成長を邪魔しないぶんぐんぐん根が伸びる。釣られて枝もぐんぐん伸びて一本のトマトが大木になるそうで、昭和60年のつくば万博で展示されていました・・・が、若い人は知らないかな。グリーンカーテンにはもってこいではありますが、根が常に新しい水に触れるようにポンプで循環させねばならず、節電にならないのが悩ましい。あと、水切り栽培と対極の方法なので、永田農法と違って甘く育てるのは難しい模様です。
「〇〇農法」は百家争鳴汗牛充棟玉石混交。リンゴひとつで映画が作られる昨今ですが、どうも私は〇〇健康法や〇〇ダイエットの本を読んでいるのと同じ既視感にとらわれてしまいます。そのうち農パン栽培法とか、右農・左農診断とか現れたりしそう・・・。
あ、ちなみにわが家のプランターではミニトマトも栽培しているのですが、花が落ちたと思ったら、葉色がすぐれず、すっかりおやつれになられまして・・・(泣)。梅雨明け直後のいきなりの猛暑がこたえて体調を崩されたか。はたまたちょん切られたキュウリの台木のカボチャに呪われたか。ネットで調べたら引っこ抜いて焼却処分しろですって。有機栽培関係の本を見ても、もともと健康に育つのが前提なので、病気に対する情報はあんまりありません。
農家の場合は、病気が広まったら一大事だし、治療に手間をかけると採算がとれなくなる。だから初めから病気にならないよう、消毒したり病気を媒介する虫を殺したりしてきたわけです。そんな農薬に頼りっきりの過保護な育て方ではいけないってのはわかるのですが、病気になってもお薬ひとつ与えないってのもなんだかせつないです。
うちのトマトは1本しか植えてないので広まりようがないし、引っこ抜いたら今年の楽しみがなくなっちゃう。そこでいちょう病を抑える効果があるとかいうコーヒーかすをダメもとでまいてみました。お金がかからないし(これ大事)。そうしたら不思議なもんで今まで枯れてばかりいたのが健全な脇芽が生えてきまして、再び花もつけました。おお、コーヒーかす農法。私はこれでみるみる元気になった!という本を書いたら売れるかしら。
なあんて喜んでいたら中腰で作業をしすぎて、こっちが腰をいわしました。痛てててて。インドメタシンの湿布のありがたさよ。人間様にはいろいろ治療薬があって幸せですね。
投稿者 webmaster : 16:11
2013年08月01日
日本料理の基礎 『刺身と醤油の本』
『刺身と醤油の本』
柴田書店 『日本料理の四季』 編集部編
発行年月:2013年8月1日
判型:B5 頁数:108頁
28年間にわたってご愛読いただきました別冊 『日本料理の四季』は、昨年の43号をもって、惜しまれつつもひとまず幕を閉じました。裏事情を申しますと、会社側は42号で終えるつもりだったのですが、「とんでもない、まだ1冊は作れるし、勝手にやめては読者に対する背信行為」と、43号は半ば強要するような形で編集、発売に踏み切ったものです。
それでも案の定、きちんと挨拶をのせて終刊したのにも関わらず、専門料理編集部には「なぜ今年は『日本料理の四季』が出ないのだ」と苦情の電話がかかって参ります。
『日本料理の四季』は月刊専門料理に掲載されました日本料理特集や記事を再録する形で作られておりました。ところが昨今、本誌に日本料理特集を載せたからといってとくに売れ行きが伸びない。売れないと載せなくなる、載せた記事がなくなると別冊が作れない、というわけで源泉が枯渇したのが終刊の原因です。
とは申しましても、このまま手をこまねているわけにはまいりません。日本料理のみを正面から取り上げた、全国書店で販売する定期刊行物を持つ出版社は小社以外にありません。ちまたではやれミシュランだ、やれクールジャパンだと外野の掛け声ばかり威勢がよろしいようですが、肝心の作り手の創造力がやせ細るようなことがあってはなりません。
日本料理を盛り立てようと、『日本料理の四季』に代わるものとして始めましたのが、この『日本料理の基礎シリーズ』です。献立の各ジャンルと調味料、それぞれひとつずつにスポットをあてて、必要な技術や知識、料理例をまとめております。
「日本料理の“基礎”なんだろう? 俺たちは基礎なんかとっくに卒業したからさ」なんて思ったあなた。基礎はいつになっても大事なものですよ。本書は今さらちょっと聞きづらいような基礎中の基礎にも真正面から向き合う反面、料理長クラスの方にも満足いただけるよう充実した数の料理例を掲載したつもりです。関東と関西の両方の仕事を載せ、世代もベテラン中のベテランはもちろん脂ののった若い料理長にも登場願うなど、できるだけ広い範囲をカバーするよう配慮しております。
第1巻めは「刺身」とそれにかかせない「醤油」がテーマ。加熱調理をともなわない(湯霜や焼き霜は別ですが)刺身は、包丁の冴えが命という側面があります。そこで、刺身の引き方やつまの作り方(よりニンジンやいかりボウフウの作り方なんて、正面きって取り上げた機会は少ないから貴重な情報ですよ)のほかにも、包丁の図鑑や産地ルポも載せました。けっして「かん袋」や「けし餅」が食べてみたくて堺市に行ったわけではありません。
醤油の章でも天然醸造の蔵元を訪ねたほか、開封して空気に触れるとどのように色が変わるのかミニ実験を実施しました。包丁も醤油も、さらにつきつめればそれだけで本が1冊作れるテーマでありまして、本書ではあくまでもさわりではありますが…。
単行本ですので年1回4月刊行というわけには参りませんが、できれば春と秋の年2冊くらいずつのペースで、今後、さらにシリーズの巻数を重ねていきたいと考えております。とはいえ、それもこれもお客さまの支持次第。どうか『日本料理の四季』の弟分として、こちらもご愛顧のほどよろしくお願いいたします。
投稿者 webmaster : 16:00