« 『専門料理2013年12月号』 編集後記より | TOPページへ | 料理本のソムリエ [vol.62] »
2013年11月19日
日本料理の基礎 『焼き物と塩の本』
日本料理の基礎 『焼き物と塩の本』
日本料理の四季 編集部編
発行年月:2013年11月20日
判型:B5 頁数:112頁
この夏から刊行を始めた日本料理の基礎シリーズですが、早く皆さんにその存在を知ってもらおうと、第1弾の『刺身と醤油の本』からあまり間をおかずに、第2弾をリリースしました。
このシリーズは広い読者層に向けてがモットーなので、あまりマニアックに走らないようにしているのですが、2冊目ともなると、ついつい各種木炭を集めたり(みんな真っ黒で同じだと思ったら大間違いですからね)、各製法の塩を集めたり(みんな真っ白で同じだと思ったら大間違いですからね)、はるばる塩田にくりだしたり。木炭図鑑だの塩作りルポだのにその成果が表れております。
もっとも聞くも涙、語るも涙。
能登半島までバカンス気分でのこのこ出かけたおかげでバチがあたりまして、雨にたたられて出張が2日延長に。土日に開かれた輪島大祭と珠洲のトライアスロンレースにぶつかって宿がありません。いっとき野宿も覚悟いたしました。
海水を塩田にまいて蒸発・濃縮させるのは、湿度の高い日本独特の方法です。途中で雨が降ったらこれまでの作業がおじゃん。とはいえ、その大変さばかりが注目されていますが、塩作りの決め手は釜で結晶させる工程だったりします。
できたての温かい塩は結晶の形が壊れていなくて、おいしかったですよ。5日も待ったせいかもしれませんが……。
図鑑用の塩は塩で一苦労。
調子に乗っていろいろ集めたはいいが、撮影に6時間以上かかりました。同じ量の塩をできるだけ同じ高さから落として自然な山の形にするのですが、ぱあっと散ったりぼたっと固まったり加減が難しい。積んでは崩し積んでは崩しの賽の河原。
これだけ塩にいろいろな種類があるのは、日本料理の塩の使い方がなかなかに繊細で、いろいろあるからかもしれません。煎って細かくした塩を高いところからふったり、紙をかぶせて間接的にふったり、塩水に浸けたりと、場合によって使い分けたりします。
ところが「塩コショウする」は家庭でも使われるのに、「塩をする」は日本料理店の外ではあまり耳にいたしません。
そもそも家庭で魚を焼かなくなってきた。そのせいで外食でも焼魚が喜ばれなくなってきたとか。和食が世界遺産に登録される見通しなのはとても誇らしいことですが、それがどんなものでどんなにすばらしいか、われわれ自身が理解できているでしょうか。
日本料理の焼き物は、ソテーやグリルとは大きく異なります。フライパンもグリルパンも焼き網も使わず、串を打ってあぶるのが基本です。「バーベキューとどこが違うのか」というのはとんちきのセリフでして、串で美しい形に固定したり、たれを何度もぬり重ねて味をのせたりと、さりげない工夫をするのが日本料理の真骨頂です。世界に誇るべき優れた技術だと思うのですが、料理人さんもそのよさにお気づきになってない。備長炭のコンロも遠火での強火で焼ける上火式ガスグリラーも、家庭にはないので、料理店に行かなければ味わえませんよ。
だいたい和食について外国の人に自慢しようにも、「焼魚の横にある赤い棒って何なの?どうやって作るの?」って尋ねられたときにちゃんと答えられますか? 既製品があるので、今の若い料理人さんも知らないかも……。
不安になったあなた、すぐに本屋さんへGO!
*** シリーズ 日本料理の基礎 好評発売中!! ************
日本料理の基礎 『刺身と醤油の本』
日本料理の四季 編集部編
発行年月:2013年8月1日
判型:B5 頁数:108頁
***************************************************************
投稿者 webmaster : 2013年11月19日 13:23