2013年11月18日
『専門料理2013年12月号』 編集後記より
『専門料理2013年12月号』
発行年月:2013年11月19日
判型:A4変 頁数:160頁
特集:年の瀬の料理
「温かみのある品、華やかな品、冬の食材を盛り込んだ品が満載!
日・仏・中3ジャンルによるお節料理とその表現も紹介します」
今年って秋あった? 夏が長かったから、なんだか秋をすっとばして冬に突入しちゃったように感じるよ。
ほんと急に寒くなったよね。温かい料理が恋しいよ。
クリスマスに忘年会に正月……レストランはこれから年末に向けて、1年でいちばん忙しくなる時期だね。
今月号の特集は、すばり「年の瀬の料理」!パイ包み、甲殻類、煮込み、パテ・テリーヌ、魚、フォワグラの6つのカテゴリーの料理を30品集めました。
温かみのあるほっこりした品、パーティを盛り上げる華やかな品、冬ならではの食材をふんだんに盛り込んだ品……実力派シェフ10人の料理がこれだけ集まると壮観だなぁ。
それだけじゃなく、今回はアミューズとプティフールも紹介いただきました。アミューズとプティ・フールってあまり注目される存在ではないけど、こうやって集めると各シェフの個性がよく出ているのがわかるね。
この時期はイベントごとで初めて来店するお客さんも多いし、読者のみなさんには、是非これらの料理をメニュー作りのヒントにして、リピーター獲得につなげてほしいと思います。
そして今号は歳末の特別企画として、お節料理も紹介します。年に一度しか作らないお節は、撮影のタイミングが年末しかありません。……で、実は今から1年前、2012年の年末にお店に伺って撮影させていただきました。
伺った30日は大雨で、各店スタッフ総出による盛り込みの真っ最中。まさに戦場でした。ご協力いただいた3店のみなさま、ありがとうございました!
ここ数年でお節事情もずいぶん変わったよね。日本料理だけじゃなく、フランス料理、イタリア料理、中国料理……と、さまざまなジャンルの店がお節を作るようになったし。
今回も西塚茂光さん(馳走 啐啄)、岸本直人さん(ランベリー Naoto Kishimoto)、新山重治(礼華 青鸞居)と、日・仏・中のお節をご紹介いただきました。
西塚さんが意識しているのは、「保存性と味わいのバランス」。今は元日中に食べるお客さんが大半で、昔ほど長期保存させる必要がないので、ある程度の保存性とともに、素材の味わいを生かすことを意識しているそうです。
曰く「修業をはじめた35年ほど前は、保存性重視で、関東風のお節の料理はほとんどすべて醤油と砂糖の濃い味つけだった」って。「1週間調理場においてあっても傷まなかった」なんて話もあったみたいだよ。
親交のある日本料理の料理人さんからお節について学び、今のスタイルにたどり着いたのが、岸本シェフ。アクリル製のボックス12個が詰まった一の重は、いわば「アミューズの集合体」。銘々で取って、シャンパーニュやワインに合わせて楽しんでもらうことを想定しているんだって。
素敵なダイニングでランベリーの料理をつまみながら正月を迎える ―― そんな生活、いつかしてみたいなぁ。
4年前からお節料理に取り組みはじめ、通販と百貨店で販売しているのが、新山シェフ。何と200セット以上の注文が入るんだって!
アワビのオイスター煮込みにイクラの紹興酒漬け、広東風の叉焼に牛舌の香り醤油煮……お酒がすすむ中国料理の前菜は、お節にぴったりかもね。
1月号では連載をリニューアル!日仏ベテランシェフの新連載も
12月を乗り越えると新年ですが、『専門料理』も来年1月号から、いくつかの新連載をスタートします。
中でも目玉は、日仏両国のベテランシェフが登場する新連載。「日」は三國清三シェフ(オテル・ドゥ・ミクニ)による「三國清三のネオ・クラシック」。そして「仏」は月替りでフランスのベテランシェフが登場する「フランス・巨匠からのメッセージ」。初回はミッシェル・ゲラール氏(レ・プレ・ドュジェニー)です!
ベテランシェフならではの料理と重みのあるメッセージにご期待ください。
投稿者 webmaster : 16:19
2013年10月18日
『専門料理2013年11月号』 編集後記より
『専門料理2013年11月号』
発行年月:2013年10月19日
判型:A4変 頁数:160頁
特集:料理人のためのワイン入門
「料理人に必要なのは、より幅広く、実践で役立つワインの知識」
「知っておくべきワインのトレンドと知識をわかりやすくまとめました」
いやぁ、もう11月か。早い早い。
11月といえば、ボジョレー・ヌーヴォーの解禁。その盛り上がりは、日本の秋の風物詩になりつつあるよね。ということで、専門料理でもワイン特集を組んでみました!
タイトルは「料理人のためのワイン入門」。シェフやオーナーシェフをめざす料理人さん向けの入門編的な内容です。
たしかにワインの本ってたくさん出てるけど、料理人向けに特化したものってあんまり見ないかも。たいていの場合がソムリエやソムリエ志望者、ワイン愛好家に向けたものだよね。
ワインの基本的な知識はもちろんだけど、料理とのマリアージュ、サービス人との連携、店のコンセプトに合わせたワインリスト作り……料理人には、より幅広く、実践的なワインの知識が必要だと思うんだ。
「四テーマで探るワインの今」では、4つのテーマについて、思い入れの強い料理人やサービス人、ワインショップのオーナーに対談をしていただいた。
「シャンパーニュ」について対談いただいたのは、清水 将シェフ(レストラン アニス)と中村豪志さん(レストラン マノワ)。清水シェフ曰く「とくに個人経営のレストランでは、1杯目のシャンパーニュに何を出すかで、店のスタイルまで判断されるケースがある」。
大手のものだけを置く店と、小規模生産者による個性的な造り手のものだけを置く店、そしてその両方をバランスよく揃える店……たしかに店や料理のコンセプト、料理人の考え方や嗜好まで透けて見える気がするね。
テーマ2は、最近レストランでもよく見かけるようになった「日本ワイン」。ともに日本ワインを愛する川手寛康シェフ(フロリレージュ)と岩倉久恵さん(カフェ ブリュ)のお話は熱かった!
有馬邦明シェフ(パッソ・ア・パッソ)と永島 農さん(フェリチタ)による「自然派ワイン」も盛り上がったね。冒頭、2人が「『自然派ワイン』という言葉は嫌いだから使わない」って言いはじめた時はどうしようかと思ったけど(笑)。
「自然派ワイン」って明確な定義があるわけじゃないし、「自然派=安全で体にやさしい」みたいなイメージが一人歩きしているところがあるからね。
そう。2人とも、好きな生産者、好きな味のワインを揃えていったら、それがたまたま、いわゆる自然派ワインと言われるものだったんだって。
最後、「ニューワールドワイン」について対談いただいたのが、菅沼 恒シェフ(弘屋)と藤丸智史さん(WINESHOP FUJIMARU)。一般的なオールドワールドワインよりも価格が安い理由、ニューワールドが抱える課題について話してもらった。
飲食店のワインリスト作成も行なう藤丸さんによる、リスト作成のコツも是非、参考にしてください。
基礎知識やワインに合う料理紹介、サービスの現場でのエピソード集も
「料理人が知っておくべきワインの基礎知識」では、ワインの産地や品種の特徴をまとめた他、素朴な疑問を集めた「Q&A」や料理とのマリアージュの方法論などを8頁にぎゅっと詰めました。
佐藤幸二シェフ(クリスチアノ)と米沢伸介シェフ(ナジャ)による「ワインがすすむ料理10」も、メニュー作りの参考にしてほしいよね。
「“よかった!”サービスと“やってしまった!”失敗」では、サービス人とソムリエ計21人のエピソードを紹介。思わず笑ってしまうような話や、ゾッとするような失敗談も、きっと現場でサービスするうえでのヒントとなるはずです。
「『ワイン酒場』に見るワインの売り方あれこれ」では、最近外食業界を席巻しているいわゆる「ワイン酒場」10店の事例を紹介。ユニークなサービスやプレゼンテーション、驚くような価格設定やワインリストをまとめました。
外食の世界におけるワインのトレンドを知るために、是非そうした店にも足を運んでもらいたいね。
投稿者 webmaster : 16:26
2013年09月18日
『専門料理2013年10月号』 編集後記より
『専門料理2013年10月号』
発行年月:2013年9月19日
判型:A4変 頁数:160頁
特集:料理書 人生を変える一冊
「シェフの自宅の本棚を拝見! 料理の個性は、読んできた本に表われる?!」
「斉須シェフをはじめ、名著の著者へのロングインタビューも必読です」
今年の夏は猛烈な暑さだったけど、ようやく涼しくなってきたね。
秋といえば食欲……じゃなくて、読書! 今月は専門料理初の試みとなる料理書特集です。
取材をしていても、本好きのシェフってけっこういらっしゃいます。そんな4人のシェフに自宅の本棚を見せていただいたのが、第1企画の「シェフの本棚拝見」。
米田 肇シェフ(HAJIME)の本棚は、横長のデスクをぐるりと取り囲んだ特注品で、かっこよかった。並んでいたのは、料理書はもちろん、芸術、脳科学、さらに宇宙論の本も!
唯一無二のガストロノミーをめざす米田シェフならではの本棚だった。
一方、経営書が多かったのは、荻野伸也シェフ(OGINO)の本棚。
さすが、レストランだけでなく、惣菜店のプロデュースや物販店も展開するだけあります。
一方、山田チカラシェフ(山田チカラ)の本棚は文学が多かった! 何でも中学・高校時代はかなりの文学少年だったみたい。
意外にも今回の4人の中で、料理書中心の本棚だったのは、小林寛司シェフ(Villa AiDA)ただ一人。調理師学校時代からコツコツ買い集めたものだそう。
地方で営業していると本や雑誌から得られる情報は本当に貴重なんだとおっしゃっていました。
4人には、自身が影響を受けた本や愛読書も紹介いただいたので、こちらもお見逃しなく。
第2企画では、料理にたずさわる多くの人に読んでもらいたい7冊を編集部でピックアップ。著者インタビューの他、その本に影響を受けた方や愛読者にコメントをもらいました。
まずは斉須政雄シェフ(コート ドール)による『調理場という戦場』。
12年間に渡るフランス修業や帰国後にシェフとして働く中で感じたこと、考えたことが語られているんだけど、「この本を読むたびに、料理人としての勇気や誇りをもらえる」っていう料理人さん、本当に多いよね。
斉須シェフには、『調理場?』を通じて読者に伝えたかったこと、そして自身の読書体験などについても詳しくうかがいました。
コート・ドールで働いて後にオーナーシェフになった4人に、同店での修業時代について聞いたんだけど……みなさん、斉須シェフが好きで仕方がないといった感じが伝わってきたね。
この他、『ソース』では上柿元 勝シェフ(パティスリー カミーユ)と『懐石入門』では高橋英一さん(瓢亭)にインタビュー。『料理の四面体』を書かれた玉村豊男さんには、発行した1980年当時の発行当時のことをふり返って寄稿していただきました。こちらも必読です。
料理界50人に影響を受けた本、薦めたい愛読書などを聞きました
料理人を中心とした料理界の50人に5つのテーマで本を一冊ずつ挙げていただいたのが、第3企画の「影響を受けた本、薦めたい本」。
人生の転機になった本……『明日の皿』『皿の上に、僕がある』『グルマン』『味の風』の他、司馬遼太郎の『燃えよ剣』なんてのもあるね。理由としては「土方歳三の強い生き方、鉄の意志に、人生を学ぼうと思いました」。なるほど。
壁にぶつかった時に勇気づけられた一冊では……『イチローイズム』『項羽と劉邦』『壁を破る言葉』『ホーキング、宇宙を語る』などなど。
挙げていただいた中から、とくにお薦めの本として115冊をピックアップし、シェフのコメント付きで紹介しました。
第4企画では、料理書に強い書店さんと古書店を取材。インターネット全盛の時代だけど、本屋に並んだ棚を眺める時間ってやっぱ好きだな。
たしかに。今回紹介した中で気になる本があったら、是非書店さんに足を運んでください。思いもよらない一冊との出会いもあるかもしれません。
投稿者 webmaster : 09:41
2013年08月16日
『専門料理2013年9月号』 編集後記より
『専門料理2013年9月号』
発行年月:2013年8月19日
判型:A4変 頁数:160頁
特集:野菜料理の四季
「昨秋から1年間かけて撮った季節の野菜料理を一挙公開します!」
「旬のある野菜だからこそ、その時々の野菜に応じたアプローチが重要」
今月の特集は、2007年以来、実に6年ぶりの「野菜料理」です。
前回は5月号だったから、早春の野菜が並んだよね。ただし、野菜は旬が短く、季節で移り変わるもの。せっかくなら1年を通じて使ってもらえる号にしたいと思い、春夏秋冬、1年間の野菜料理を集めました!
いやぁ、去年の秋からコツコツ撮りだめていたわけだけど…こうして1冊になると、ある種の感動があるね。
メイン企画は「レストランの野菜料理」。若手からベテランまで22人のシェフによる旬の野菜を使った料理を、春夏秋冬に分けて掲載しました。
春に登場したのはタケノコにセロリ、ホワイトアスパラガスにミニポワローなど。春野菜は強い苦みを持つものが多いけど、それをどう生かすかにポイントをおくシェフが多かった。
夏はトマト、ズッキーニ、ナスなど代表的な夏野菜の他、ユウガオや野生のウイキョウを使うシェフもいました。
柳 令子シェフ(ピノサリーチェ)はシチリアでの修業時代に地元のトラットリアで食べた野生のウイキョウのパスタを再現。いわゆる普通のウイキョウでは風味が弱いそうで、野生のウイキョウが手に入るようになった去年から今のスタイルで作っているそうです。
ちょっと前までは手に入らなかったような西洋野菜も使えるようになって、表現の幅がグッと広がったよね。
「実りの秋」と言われるだけあって、秋も野菜が豊富。サツマイモにサトイモ、ビーツ、レンコンなどが並んだ。中でも横崎 哲シェフ(オー グルマン)のサツマイモの料理は、「大地の力」を感じさせる盛りつけがインパクト大!。
おもしろかったのは堀江純一郎シェフ(リストランテ イ・ルンガ)のパプリカを使った品。パプリカの名産地のあるピエモンテではパプリカの酢漬けがポピュラーで、それをリストランテの品にアレンジしたんだ。
冬はハクサイ、ニンジン、黒キャバツやカブなど。中でも小峰敏宏シェフ(カーヴ・ド・コンマ)の「白菜と鱈のグラタン」、しみじみとおいしかったなぁ。
寒い冬だからこそ、身も心も温まるような料理が喜ばれるよね。
「野菜のアミューズ 12ヵ月」では、川手寛康シェフ(フロリレージュ)による1月から12月まで12品のアミューズを一堂に集めました。
本物の野菜に似せて作った品や、野菜のピュレをチューブに詰めて「絵の具とパレット」を再現した品など、どれもユニークなものばかり。サービススタッフがジョークを交えて提供することで、お客さんにリラックスしてもらう効果も狙っているんだって。
コース料理となると長時間におよぶわけだし、たしかに最初の「つかみ」は重要だよね。
アラン・パッサール氏による1年間におよぶ季節の野菜料理も
本特集のもう一つの大型企画が「アラン・パッサール 農園から生まれる料理」。去年の秋から?年間、定番を中心に料理12品+デザート1品の計13品を撮影。その品が生まれたエピソードを交えて紹介しました。
パッサール氏は自家菜園を所有していて、畑で受けたインスピレーションをそのままに、菜園の隅にある厨房で試作をしているそう。こんなスタイルに憧れる料理人さんも多いんじゃないかな。
そうそう、表紙の野菜料理は田代和久シェフ(ラ・ブランシュ)にお願いしたのもなんだよね?
本来は根菜類が豊富な冬に作る「こだわり野菜のサラダ仕立て」を、表紙用に無理を言って夏野菜で作ってもらったんだ。田代シェフは、黒羽 徹シェフ(リストランテ プリマヴェーラ)と木村政敏シェフ(知味斎)とともに、インタビューにもお付合いいただきました。
情が厚く、食材や生産者に誠実な田代シェフが作る野菜料理だからこそ、多くの人の心を掴むんだろうね。インタビューしながらそんなことを感じました。
投稿者 webmaster : 15:35
2013年07月18日
『専門料理2013年8月号』 編集後記より
『専門料理2013年8月号』
発行年月:2013年7月19日
判型:A4変 頁数:164頁
特集:パスタ
「ベテランシェフのパスタ観と若手イタリア料理人へのメッセージは必読です」
「手打ちと乾麺、ロングとショートに分け、気鋭シェフによるパスタ料理を紹介」
イタリア料理に携わるみなさま、お待たせしました。毎年恒例、年に一度のパスタ特集です。今回は、「ベテランから若手へのメッセージ」と「気鋭シェフの創意に満ちた料理集」の2本柱で誌面を構成しました。
巻頭インタビュー「私が伝えたいパスタ 次世代へのメッセージ」では、ともにパスタ料理に定評のあるベテランシェフ2人にお話をうかがいました。
まずは「自分はおいしいパスタを作りたくて、料理を作っているようなもの」と話す片岡 護シェフ(リストランテ アルポルト)。独立して30年が経ち、「それぞれの年代で年齢に応じた料理を表現していけるのが料理人の醍醐味」と感じているそう。
若い時はパワーと冒険心、経験を積んでからは熟練した技術が、料理人の大きな武器になるとのことでした。「今の若い料理人はもっと乾麺を食べ込むべき」とも話していたね。
一方の佐竹 弘シェフ(リストランテ レーネア)はパスタをはじめ、食材全般に対する料理人としての姿勢について、熱い言葉で話してくださいました。
「パスタを自分の思い通りにするのではなく、パスタの声に耳を傾け、パスタに自分を合わせる」って。今回紹介いただいた「真鯵のスパゲッティ」もシンプルの極み。技術や経験を積み重ねた佐竹シェフならではの圧倒的な存在感を放つパスタ料理でした。
「自分にとってパスタは、コースの流れの核になる料理」(片岡氏)、「コースの主役はあくまでセコンドピアットで、パスタでお客さまの心とお腹を100%充たしてはいけない」(佐竹氏)と、コース内でのパスタの位置づけが両者で微妙に違うのも興味深かったです。
メイン企画は「種類別 パスタ料理集」。7人の気鋭シェフによるパスタ料理を手打ちと乾麺、さらにロングとショートに分けてズラリと並べました。
今回は麺自体も撮影して、手打ちなら分量と作り方、乾麺ならその来歴や特徴なんかを掲載したんだけど、個性的な麺も多かったね。
渡辺 明シェフ(イル・リフージョ・ハヤマ)が使った「フィリンデゥ」は、手でごく細くのばした麺を網目のように重ねたサルデーニャの乾燥パスタ。非常に稀少で手に入りにくいため、渡辺シェフは現地の修業先の店から送ってもらっているそう。
濱本直希シェフ(フェリチェリーナ)の手打ちパスタ「トロフィエ」は、何と米粉入り! 白玉団子風のモチモチした触感で人気があるみたい。麺一つとっても、現地の品を再現するか、日本人好みにアレンジするか、料理人のアプローチが見てとれるね。
第2特集は「チーズ活用法」
第2特集は「チーズ」。食後のチーズはレストランらしい時間を提供するための重要なアイテムだけど、相応の知識や管理する手間、そしてお客さんに注文してもらうためのサービスが必要。それゆえ扱いを断念する店も多いと思う。
そこでテーマは「チーズをもっとレストランに!」。荒井 昇シェフ(オマージュ)と小笠原圭介シェフ(エクイリブリオ)による「チーズで料理を作る」では、料理にチーズを取り入れるための活用術を紹介します。
この他、チーズの専門家とサービス人に、「チーズの扱い方や保管法」「プラトー作り」「注文をとるためのサービス」といった切り口で、じっくりと話をうかがいました。
そうそう、先月スタートした川崎寛也博士の連載「おいしさをデザインする」も盛り上がったね。生江史伸シェフ(レフェルヴェソンス)との後編となる今回は、前回を踏まえてより進化したアユ料理が登場! この間、川崎博士と生江シェフはフェイスブックでやりとりし、ブラッシュアップを重ねたそう。
「ヘテロ感」「アイス・フィルトレーション」なんて言葉も出てきたけど、見どころはドライヤーを使った加熱。 はたして成功したのか? 続きは誌面で!
投稿者 webmaster : 16:06
2013年06月18日
『専門料理2013年7月号』 編集後記より
『専門料理2013年7月号』
発行年月:2013年6月19日
判型:A4変 頁数:156頁
特集:牛肉と仔牛
「外国産牛肉と仔牛の食べ比べ&座談会を実施。その真価を探ります」
「輸入規制緩和によって選択肢が増えた今、個性を見極めることが重要」
特集は「牛肉と仔牛」。今年2月に外国産牛肉の輸入規制が緩和されたことを受けて、急遽組んだ特集です!
表紙の「輸入規制緩和で広がる可能性」って赤字がまぶしいね(笑)。たしかにこれまで日本では手に入らなかった牛肉が使えるようになったのは大きい。「フランス産の仔牛が使えたらなぁ」ってセリフを、ここ10年で何度取材中に聞いたことか。
巻頭企画は「外国産牛肉と仔牛を食べ比べる」。その名の通り、10種類の牛肉と仔牛をシンプルなローストにして食べ比べようという企画です。
高良康之シェフ(銀座レカン)と和知 徹シェフ(マルディグラ)、小池教之シェフ(インカント)、ワインテイスターの大越基裕氏に集まっていただき、それぞれの立場からコメントをいただきました。個体差があるし、輸送方法なども違うから一概には言えないけど、特徴や傾向が見えておもしろかった。
第2企画は、5人のシェフに牛肉の焼き方を学ぶ「産地・品種別 牛肉を焼く、調理する」
三國清三シェフ(オテル・ドゥ・ミクニ)に焼いていただいたのは、輸入解禁になったフランス産シャロレー牛。ブール・ノワゼットで肉を包むようにしてじっくりと火を入れる、古典的なテクニックを見せていただきました。
この春から米国産アンガス牛を使いはじめたのは、橋本直樹シェフ(リストランテ フィオレンツァ)。そのアンガス牛を使ったビステッカは、お客の7割が注文する人気メニューだそう。
「アンガス牛=赤身のおいしい肉」って認識が広まっているんだろうね。赤身の牛肉を好む人も増えてきているし。
一方、開業以来、適度にサシが入った黒毛和種を使い続けているのが濱崎龍一シェフ(リストランテ濱崎)。鹿児島県出身で、小さい頃から黒毛和種を食べていた濱崎シェフの好みは「焼くとフワフワする肉」。1年ほど前から鹿児島県産に特化して使っているそうです。
この他の組合せは、曽村譲司シェフ(ア タ ゴール)×オーストラリア産アンガス牛、堀江純一郎シェフ(リストランテ イ・ルンガ)×高知県産褐毛和種。長年積み上げた理論とテクニックを、詳細なプロセス写真とともに余すところなく紹介しています。
「仔牛を焼く、胸腺肉を調理する」では、岸田周三シェフ(カンテサンス)と小島 景シェフ(ベージュ アラン・デュカス 東京)が登場。岸田シェフはフランス産を、小島シェフは北海道産の仔牛を用いて、肉質に合った「焼き」の技術を見せていただくとともに、胸腺肉を使った料理も作っていただきました。
フランス産仔牛の輸入解禁を待ち焦がれていたという岸田シェフだけど、フランス産だからといって飛びつくのではなく、「品質を見定める目」が重要だと話していたね。輸入の工程で少なからずダメージは受けるだろうから、と。
一方の小島シェフは、ヨーロッパ産の肉質に近いものを国内で探して、7年前にミルクを飲んで育つ北海道産の仔牛に出会ったそう。生産者と密にやり取りできるのが国産の魅力で、今後もこの仔牛を使う予定だそうです。
この他、約20人のシェフに行なったアンケートや、フランスの牛肉生産現場を訪れた現地ルポも掲載。この1冊に牛肉と仔牛の「今」を詰め込みました!
川崎博士と力石先生による新連載もスタートします!
そうそう。この7月号からは新連載が2本スタートしたんだよね。
まずは、昨年1年間「フランス料理の科学」を連載した川崎寛也博士が、科学者の視点から気鋭の料理人と対話する「『おいしさ』をデザインする」。今月と来月は生江史伸シェフ(レフェルヴェソンス)が登場し、これまでにないアユ料理の可能性を探ります。
もう1本は力石寛夫先生による「料理人のための1分間マネジメント」。「ホスピタリティの神様」と呼ばれる力石先生の料理人へのメッセージに注目です。
投稿者 webmaster : 17:14
2013年05月17日
『専門料理2013年6月号』 編集後記より
『専門料理2013年6月号』
発行年月:2013年5月18日
判型:A4変 頁数:164頁
特集:アミューズと前菜
「5ジャンル15人の気鋭シェフによる、アイデアに富んだ60品を一挙掲載!」
「素材別に並べることで、各素材のさまざまな特徴や調理の傾向を探ります」
今月号の特集は「アミューズと前菜」。気鋭シェフのアイデアに富んだ料理をとことんいっぱい紹介しよう! という内容です。
『専門料理』初掲載の料理が60品! これだけ数が揃うと圧巻だね。1月号「料理界25人の言葉」、4月号「オーナーシェフのための開業・経営読本」など、最近はいわゆる“読みもの系”の特集が多かったから、どこか新鮮な気分です。編集作業中は、頁をめくるたびにワクワクしました!
前菜は魚の皿、エビ・カニの皿、貝の皿、フォワグラの皿……というふうに素材別にまとめたんだけど、シェフによってその素材へのアプローチの仕方はさまざまだった。
普段はシェフごとにまとめて頁を構成することが多いよね。でも、こうして素材ごとに並べると、シェフによって、その素材のどこに焦点をあてているのかがよくわかる。「素材は多面的だ」って村田吉弘氏(菊乃井)も今月の柴田日本料理研鑽会(103頁)で言っていたけど、まさにそれを実感しました!
それと、「誰が作っている」という先入観がないからか、その素材のいろんな特徴や調理の傾向が、よりはっきり理解できるように思うよ。
今回は、多くのアイデアを紹介できるよう、仏、伊、西、日、中の5ジャンル15人の気鋭シェフにご登場いただきました。とくに感じたのは、ジャンルの垣根は確実に取り払われつつあるなぁということ。多くのシェフが、自身のジャンル以外の調理法をうまく採り入れていた。
スペイン料理の本多誠一シェフ(スリオラ)は「魚の皿」でサバをシードルヴィネガーや香草でマリネしていたけど、これは日本料理の“〆サバ”の技法を採り入れたもの。また、中国料理の栖原一之シェフ(龍圓)は「山海取合せの皿」で同じく日本料理の酢〆と、フランス料理のアロゼやルポゼを使って、個性的な料理を紹介してくださいました。
その栖原シェフの「香りを召し上がる燻製」は、ラップ紙を張った器の中に燻煙を閉じ込め、1ヵ所だけあけた穴から煙が立ち上る、という仕かけで、その燻香とともに料理を味わってもらうというもの。
驚きや楽しさにあふれたプレゼンテーションは、お客さんの心を掴みやすいよね。アミューズ30品では、とくにユニークな料理が数多く並びました。
中でも長谷川在佑シェフ(傳)のアミューズはインパクト大! カラスミを練り込んだクッキーでテーブルゲームの「JENGA」を模した「DENGA」は、一気に長谷川シェフの世界に引き込む力がある。
小霜浩之シェフ(コシモ・プリュス)はひと口サイズの前菜、スープ、魚料理、肉料理、デザートを細長いトーストに一列に並べたカナッペを紹介。アミューズでフルコースを表現する試みです。
60品の他、タイプの異なる2人によるフィンガーフードも
今回はこの他、スペイン人シェフのホセ・バラオナ・ビニェス氏(レ・ストゥディ)と、銀座でバーを営む間口一就氏(ロックフィッシュ)の2人による、ひと口サイズの品も紹介。
ともに最近フィンガーフードのレシピ本を上梓していて、意外性のある素材の組合せや、ひと口で満足させる味のつけ方なんかは、きっと多くの料理人の参考になるよね。素材選びや調理法、盛りつけや器使いなど、アミューズと前菜は比較的遊び心を加えやすいからこそ、さまざまなアイデアをうまく採り入れてほしいと思います。
そうそう。お気づきの方も多いと思いますが、表紙の料理は五十嵐安雄シェフ(ル・マノアール・ダスティン)が長年作り続けている「スペシャリテ 人参のムース コンソメジュレとウニ添え」。
先日、独立して20周年を迎えた五十嵐シェフの代表作だよね。
「本誌を参考に、こうした長年愛される前菜を作ってほしい」との思いを込めて、表紙に使わせていただきました!
投稿者 webmaster : 10:10
2013年04月18日
『専門料理2013年5月号』 編集後記より
『専門料理2013年5月号』
発行年月:2013年4月19日
判型:A4変 頁数:156頁
特集:ビストロを30年続けるためには
「パリ、東京、大阪の老舗ビストロから、長年愛されるための秘訣を探ります」
「新たなスタイルを模索する新店オーナーの個性あふれる店作りも紹介!」
今月号の特集は「ビストロを30年続けるためには」。パリ、東京、大阪で長年に渡って愛される老舗店を取材し、その秘訣を探りました。
パリは、1924年創業の「シェ・ラミ・ルイ」と1938年創業の「ビストロ・メラック」の2店。前者はパリでも1、2を争う老舗有名店だから、足を運んだことのある読者も多いかもしれないね。ビストロとはいえ、高品質の食材を使っていて、星付きレストラン並みの価格もまた有名です。
90年続いているわけだけれど、先代の名物オーナーが亡くなった直後は、多少客足が遠のいたらしい。それでも、現オーナーが前と同じスタイルを頑なに守っているうちに、お客が戻ってきたんだって。
内装も重厚で歴史を感じさせるよね。まさに本場フランスの老舗ビストロ! という感じ。店内の写真は表紙にも使わせてもらいました。
一方のビストロ・メラックは、口ひげがトレードマークの名物オーナーによる店。故郷のアヴェロンの田舎料理とメラック家の料理を今に伝えています。
2店に共通するのは、貫禄のあるオーナーがいて、時代が変わろうとそのスタイルを守っているということ。“変えない”ことで、唯一無二の個性を生んでいるわけだね。
日本の老舗ビストロは、東京・乃木坂の「シェ・ピエール」と大阪・我孫子の「フレンチ食堂 エスカルゴ」。シェ・ピエールは1968年に製パン技術者として来日したピエールさんが、40年前に開いた店です
当時、日本でフランス料理といえばホテルという時代。ピエールさんはカウンターを作って食材や料理を説明して、少しずつビストロ文化を広めていったんだって。
フレンチ食堂 エスカルゴは、25年前に、当時24歳だった藤原一良さんが開いたビストロ。これまで続けてこられたのは、「エスカルゴのオーブン焼きという看板料理があったから」と話してくれました。ちなみに三重・松阪のエスカルゴ牧場のエスカルゴを主に使っているそうです。
新しいビストロも続々オープンしています! その中でも、自らのスタイルを追求し、長く愛されるビストロをめざす3人を取材しました。
自然派ワインを数多く揃える「ル・ヴェール・ヴォレ・ア・東京」、ボリューム満点の料理で連日満席が続く「リベルタン」、そしてステーキが売りの「ル キャトーズィエム」。みな明確なコンセプトをもっていたね。
印象的だったのは、リベルタンのオーナーシェフ、紫藤喜則さんの言葉。「まずはスタッフが楽しまないと、お客さんも楽しめない。厨房からどなり声が聞こえてくるような店では、安心して楽しめませんよね」だって。確かにそうですよね。
ビストロの定番料理20品と、気鋭シェフによる “自分流” の品
ビストロと言えば、思い浮かぶのは骨太な定番料理の数々。本特集では人気店の定番料理を20品集めて掲載しました!
リヨン風サラダにパテ・ド・カンパーニュ、ブーダン・ノワールにクネル……どれもビストロには欠かせない料理だからこそ、お客を惹きつけている人気店のレシピを参考にして、ブラッシュアップを重ねてほしいと思います。
また、こうしたビストロの定番料理をガストロノミーレストランのシェフが作ったら……という発想で企画したのが「ビストロ料理を自分流に」。生江史伸シェフ(レフェルヴェソンス)と宮崎慎太郎シェフ(オー グー ドゥ ジュール ヌーヴェルエール)の2人の気鋭シェフによる7品は、驚きに満ちていました。
ビストロ料理は「多くの人に愛される安心感のある味わい」、ガストロノミー料理は「シェフの個性が表れた驚きと発見のある味わい」――この企画を通し、改めてそんなことを感じました。
投稿者 webmaster : 10:01
2013年03月18日
『専門料理2013年4月号』 編集後記より
『専門料理2013年4月号』
発行年月:2013年3月19日
判型:A4変 頁数:164頁
特集:保存版 オーナーシェフのための開業・経営読本
「オーナーシェフ70人超の実体験から、開業と経営の秘訣に迫ります。」
「「ストアコンパリゾン」「エリア動態調査」など外食企業の手法も満載!」
この春から料理人になったという読者も多いと思います。そこで、4月号の特集は「オーナーシェフのための開業・経営読本」。
独立特集はこれまでもやってきたけど、ちょっと雰囲気が違うね。
そう。今号は、日頃取材でお世話になっているオーナーシェフのみなさんへアンケートを行ない、その回答をもとに誌面を構成しているんだ。実際に開業を経験したみなさんに教えてもらった、独立前に知っておきたいこと、しておくべきこと??それらをすべて一冊にまとめた、完全保存版です。題して、「オーナーシェフ50人の成功と失敗に学ぶ 修業時代→開業準備→店を続けるためにすべきこと」!
50人とは思いきったね。フランス料理、イタリア料理、中国料理、日本料理、スペインバルのオーナーシェフ……。
幅広い業態で独立を考えている読者の参考になるように、と。だからというか、企画名は「50人」ですが、実際は70人を超えるオーナーシェフのみなさんにご協力いただいています。
修業時代、開業準備期間、開業後の3つの章立てになってるんだね。なになに……「修業時代にしておいてよかったこと」?――「開業前にあわてて器を買うと『これでええや』で買ってしまうので、修業中に集めておいてよかった」、「趣味(バイクや釣り)……自営になるといつまでもだらだら働きがち。独立した今、趣味などを使って時間(ONとOFF)を使い分けている」。ほほう。
読んでいると、シェフの個性や店にかける思いが伝わってきませんか。実体験に即しているからこその説得力があるんですよね。
確かに。なんだか独立したくなってくるよ。これはぜひ若い独立志望者に読んでほしいね。
その他にも「修業の仕上げにしたこと」、「資金集めで大変だったこと」、「物件を選んだ決め手」、「購入してよかった厨房機器」など、いろいろ伺ってます。あ、「修業時代にやっておけばよかったこと」、「購入すればよかった厨房機器」など、後から後悔した体験も聞いているので、こちらも参考にしてほしいですね。
この場を借りて、アンケートにご協力いただいたオーナーシェフのみなさんにお礼を申し上げます。
お忙しい中、どうもありがとうございました!
これ以外にも、昭和40年代に故・村上信夫さんや故・陳建民さんなど料理界の大先輩が「若い調理師のために」贈った言葉を集めたり、一部で熱狂的なファンを持つ弊社の秘密兵器、 「料理本のソムリエ」が薦める「修業時代に読むべき本12」など、他では見られない企画が盛りだくさん。
「ストアコンパリゾン」「エリア動態調査」なんて言葉も出てくるんだね。一瞬「月刊食堂」かと思ったよ。
外食企業が厳しい競争の中で磨いてきた技ですからね。せっかくの確立された手法を、個人店のオーナーも使わない手はありませんよ。
人気を維持する3人へのロングインタビューも!
「店舗デザイン秀作選06」では昨年東京で開業した6店の内装を紹介。
巻頭インタビューでは、移り変わりの早い現代に、店の人気を維持し続ける3人のオーナーシェフに、「オーナーシェフの仕事」について語っていただきました。
濱崎龍一さん、石川秀樹さん、下村浩司さん。みなさん、独自の方法論を持っている方だった。オーナーシェフには誰でもなれるけれど、続けていけるのは一握り??そんな言葉を思い出したよ。
そうですね。せっかく苦労して開いたお店。20年、30年と続けてほしい。そのためのアイデアを満載した今号を、ぜひご覧ください!
投稿者 webmaster : 16:18
2013年02月18日
『専門料理2013年3月号』 編集後記より
『専門料理2013年3月号』
発行年月:2013年2月19日
判型:A4変 頁数:160頁
特集:世代別 フランス料理の技術論
「世代による技術の違い、共通点からフランス料理の技術の本質に迫ります!」
「ベテランから若手・中堅への技術の継承は、料理界が抱える大きな課題」
今月号の特集は「世代別 フランス料理の技術論」。フランス料理の技術を世代別に比べる試みで、さまざまな世代のシェフを取材しました。
巻頭インタビューでは、50代、40代、30代の各世代を代表するシェフ3人に、自身の世代の技術について思うところを熱く語っていただきました!
50代代表は三國清三シェフ(オテル・ドゥ・ミクニ)。若手に伝えたい技術として「エテュベとデグラッセ」「ムニエル」を挙げ、それらを使った料理を披露してくださいました。
ベテランから若手への技術の継承は現代の料理界が抱える課題だよね。
40代代表は岡本英樹シェフ(ルメルシマン・オカモト)。
井上 旭シェフ(シェ・イノ)に長年師事し、昨年独立したんだよね。
「ソースのない料理が増える中、井上シェフから学んだソースのおいしさを下の世代に伝えるのが、自分の使命」と話してくださったのが印象的です。
30代代表の川手寛康シェフ(フロリレージュ)は、料理の世界に入った頃から、一貫して「時代に求められる料理」をめざしてきたんだって。「先輩たちが常に進み続けたように、自分も前に進み、時代を作っていきたい」と、まっすぐな目で熱く語ってくれました。
特集のメイン企画は「ベテラン×若手・中堅 それぞれのアプローチ」。ベテランと若手・中堅の3組6人に同じテーマで料理を作ってもらい、共通点や違いを探る企画です。
1組目は昨年末に「カーヴ・ド・コンマ」(東京・神楽坂)のシェフとして新たなスタートをきった小峰敏宏シェフと高田裕介シェフ(ラ・シーム)で、テーマは「魚を焼く」と「テリーヌ」。
高田シェフは今回の対談のために大阪から駆けつけてくれて……対談前に小峰シェフの料理撮影があったんだけど、高田シェフが食い入るように見ていたのが印象的だったな。
2組目は、かつて「蒲田の三羽ガラス」と呼ばれた(詳しくは本誌を)横倉宏明シェフ(ル・パサージュ)と河井健司シェフ(アンドセジュール)の組合せで、テーマは「パイ包み」と「煮込み」。
パイ包みでは、「パイはさっくり、ファルスはしっとり」を基本に、横倉シェフはフォン・ド・ヴォーを使ったソースに合わせてリッチなフイユタージュを、河井シェフはジュを使った軽やかなソースに合わせてホロホロとしたパータ・パテを使っていました。
3組目は谷 昇シェフ(ル・マンジュ・トゥー)と杉本敬三シェフ(レストラン ラ フィネス)。
何と杉本シェフは19歳の頃にル・マンジュ・トゥーで研修していたんだって! その頃すでに谷シェフは杉本シェフの才能を見抜いていたみたい。
なるほど。谷シェフは“親父シェフ”として料理界にもの申してくれる存在だけど、数年来もてはやさている低温調理へのアンチテーゼとして、塊肉のガス火焼きを披露してくださいました。
日本もフランスも関係ない!? “自分の料理”を作ることが大事
この他、座談会も実施。フランスで働く、世代の違う3人の日本人料理人に、「フランスの技術と日本の技術」をテーマに語り合っていただきました。
26歳の多田皓介さんは、渡仏後に最新機器を駆使するモダンな店で働いたんだけど、「基礎的な技術を一から学ばなきゃ」と、古典料理に定評のあるビストロに移ったんだって。
フランス修業を意味のあるものにするには、修業先選びが重要だよね。
41歳の金山康弘シェフ(ビガラード)と35歳の小林 圭シェフ(レストラン・ケイ)の結論は「調理機器が発達し、技術レベルが上がった今、確実に競争は激しくなっている。“自分の料理”を作らないと生き残れない」だって。
だからこそ、技術を磨いて差別化することが、料理界を生き抜くためにいっそう重要になっているんだろうね。
投稿者 webmaster : 14:23
2013年01月18日
『専門料理2013年2月号』 編集後記より
『専門料理2013年2月号』
発行年月:2013年1月19日
判型:A4変 頁数:158頁
特集:内臓料理の突破力
「内臓料理はデフレ不況を突破するための救世主!?」
「話題店「俺のフレンチ」も緊急検証。その突破力を紐解きます」
年明け最初の発売となる2月号の特集は「内臓料理の突破力」。内臓料理で不況真っ只中の2013年を突破しよう! という思いを込めた特集です。
内臓料理は原価も安いし、たしかに突破力を持った素材だと思う。それに、内臓料理に対する世間のイメージも昔に比べてだいぶ変わったよね。
「厚木シロコロ・ホルモン」がB級グルメの祭典「B-1グランプリ」で優勝したり、内臓料理好きな若い女性を「ホルモンヌ」なんて呼んだりね。もちろん明るいニュースばかりではなく、ユッケによる事件や牛の生レバー問題なんかもあったわけだけど。
そうした最近10年間の内臓事情をふり返りながら、食材としての可能性について語ってもらったのが、菊地美升シェフ(ル・ブルギニオン)、和知 徹シェフ(マルディグラ)、大西敏雅シェフ(大西亭)による、巻頭企画の座談会。
この3人は、2004年発行の内臓料理専門の料理書『モツ・キュイジーヌ』(弊社刊)の著者で、内臓料理を武器に逆風含みの飲食業界を突破してきた力の持ち主。座談会では内臓料理で不況を突破するための多くの提案もいただきました。
第2企画「レストランの内臓料理」では、仏・伊計6人のシェフの内臓料理と考え方を取材。中でも五十嵐安雄シェフ(マノアール・ダスティン)は言わずと知れた内臓料理のスペシャリスト。菊地シェフの師匠でもあるよね。
今号は国内だけでなく、フランス現地のレストランも取材。タイプの異なる新旧2店の内臓料理を紹介します。
2009年開業の「シェ・グルヌイユ」のオーナーシェフは、以前はシャルキュトリーで働いていたんだって。とくに豚は1頭丸ごとを仕入れ、自身の手で解体しているというから驚きです!
料理は洗練されたシンプルな仕立ての中にひと工夫があるものばかり。連日満席というのもうなずけます。
一方、老舗の「オ・プティ・マルゲリ リヴ・ゴーシュ」も人気店。温かみがあって力強い内臓料理の魅力を今に伝えています。2店計11品、すべて作り方を掲載しているので、メニュー開発のヒントにしてください。
「いかにレストランのメニューに採り入れ、売上げをのばすか」に着目した企画が「内臓料理の活用術」。内臓の仕入れから下処理、保存方法、メニューへの展開術までを、内臓料理が売りの3店のシェフにじっくり聞きました。
「付合せにも心を配ってレストランならではの品にする」、「酒に合う味つけにして、アルコールの注文との2本柱で売る」など、いろいろ伝授していただきました。
なんだか、内臓料理の店で独立開業できそうな気がしてきたよ!
それは気が早すぎ。そもそも内臓がどうやって流通してるか知ってる? ギアラ、ツラミ、テッポウって言われて、どこの部位かすぐわかる?
ん?。
内臓料理をきわめるには座学も重要……ってことで、「内臓料理の教科書」では基礎知識をQ&Aでわかりやすく解説。加えて、各部位の写真とイラストで図鑑を作成・掲載しました。今号は連載の技術講座のテーマも「内臓」。1冊丸ごと内臓だらけの専門料理、必読です!
話題のあの店を緊急検証!料理界への影響を分析します
ところで、その圧倒的な突破力で今、外食業界を賑わせている店と言えば「俺のフレンチ」だと思う。
立ち飲みスタイルでフランス料理を格安で出して大人気だっていう。今も行列ができているよね。
俺のフレンチは外食チェーンが展開しているわけだけど、われわれが生きる料理界に何をもたらすのか、学べることはあるのか――ということにポイントを置き、『月刊食堂』編集部とともに検証してみました。こちらの記事もぜひご一読のうえ、2013年を突破しましょう!
投稿者 webmaster : 11:08
2012年12月18日
『専門料理2013年1月号』 編集後記より
『専門料理2013年1月号』
発行年月:2012年12月19日
判型:A4変 頁数:158頁
特集:料理界25人の言葉
「料理人、ソムリエ、エッセイスト、科学者など、25人にインタビュー!」
「自身の人生をふり返ってもらいつつ、今の料理界についてお話いただきました」
2013年のスタートを飾る1月号の特集は、「料理界25人の言葉」。料理界の先輩たちに、自身の人生をふり返ってもらいつつ、料理界の課題や提言、若手へのメッセージをいただきました。
仏、伊、中、日の料理人の他、サービスマンやソムリエ、そして調理師学校の校長にエッセイスト、科学者、ジャーナリスト、写真家と……それぞれの道でトップを走る25人にインタビューしたんだけど、それぞれ違う角度から今の料理界を見ていて、そこがおもしろかった。時代を築いた人の言葉には重みがあります!
日本料理だけ見ても、西 健一郎さん(京味)と高橋英一さん(瓢亭)という東西を代表する名料理人のお二人に、世界で活躍する松久信幸さん(NOBU)、そして日本料理界に革命を起こし続ける村田吉弘さん(菊乃井)――。
西さんは独立して5年から6年後に父親のもとで料理の再修業をして、料理の土台を固めたそうなんだけど、75歳を迎えた今もなお、「まだ修業の進行形」だそう。若い世代にも、やさしく、そして厳しい言葉でメッセージをくださいました。
一方、料理界の制度改革の必要性について話してくれたのが村田さん。努力した人が等しく報われる業界にするため、全国統一の検定試験を計画中だとか。
フランス料理では、坂井宏行さん(ラ・ロシェル)が登場。あの鉄人・坂井さんも、30代の頃は「坂井の作る料理はフランス料理じゃない」とか「フランス修業経験がないからあんな料理作るんだ」とかいろいろ言われたそう。それでも「おいしい料理がいい料理」という信念があったからこそ、ブレなかったんだって。
井上 旭さん(シェ・イノ)は、「どうせめざすなら、世界一をめざせ! 夜空でいちばん輝く北斗七星になれ!」と熱い言葉で喝を入れてくださいました。
フランス料理では、特別企画として「親父シェフ3人」の座談会も。田代和久さん(ラ・ブランシュ)、北島素幸さん(北島亭)、谷 昇さん(ル・マンジュ・トゥー)に実に9年ぶりに集まっていただき、5時間以上(!)に渡って、熱くもの申していただきました。
料理人以外では、エッセイストでワイナリーのオーナーでもある玉村豊男さんや、京都大学でおいしさの研究を続ける伏木 亨先生などにもお話をうかがいました。
伏木先生には科学者の立場から、「お客さんにおいしさを印象づけるための方法」や「おいしさを強く感じてもらうための提供スタイル」などについても聞きました。詳しくは誌面をご覧ください。
新連載がスタート! 鮨、対談、仏×中の異ジャンル技術講座も
今月から新連載もスタートしました。
まずフランス現地取材では、パリ在住のジャーナリスト一押しの新鋭シェフが月替わりで登場。これからどんどん脚光を浴びるであろう若く意欲的なシェフを、1年で12人紹介します。
鮨の新連載でも、月替わりで職人さんにご登場いただき、煮ハマグリや酢締めなど鮨屋ならではの技術の他、アイデアに富んだ酒肴も数多く見せていただきます。
技術講座も刷新。フランス料理と中国料理で毎月同じテーマを扱い、互いの技術を比べることで深く掘り下げます。なお、初回のテーマは「燻す」。
異ジャンルものではもう一つ、ジャンルの異なる「今、話したい」相手と対談をしてもらう企画を。初回は東日本大震災のボランティアを続ける藤巻一臣さん(サローネグループ)と生江史伸さん(レフェルヴェソンス)に、「料理人が世の中にできること」についてお話いただきました。これをきっかけに「一歩」を踏み出してくれる読者がいたら、うれしいね。
投稿者 webmaster : 10:16
2012年11月19日
『専門料理2012年12月号』 編集後記より
『専門料理2012年11月号』
発行年月:2012年11月19日
判型:A4変 頁数:172頁
特集:メインディッシュの肉料理50
「献立の花形、肉のメインディッシュをドカンと50品掲載!」
「『エスコフィエを作る!』では歳末の特別編として料理を再現してもらいました」
冷えるねぇ。こないだまでオープンテラスでのランブルスコがおいしかったけど、今は暖房の効いた店内でホットワインが飲みたいよ。
ほんと秋をすっとばしていきなり冬になった感じだよね。多くのレストランはこれから年末にかけてが1年でいちばん忙しい時期。クリスマス、忘年会などイベントも目白押しです。
そこで今月の特集は「メインディッシュの肉料理50」。献立の花形でもある肉の主菜をドドンと50品集めました!
トップシェフの肉料理がこれだけの数並ぶと、さすがに壮観だねぇ。
ご協力いただいたシェフの皆さんには、この場を借りてお礼申し上げたいと思います。ありがとうございました!
バラエティ豊かな肉料理が並ぶ中、とくにインパクト大なのが、河井健司シェフ(アンドセジュール)の「ウズラのトゥルトから」(写真1)。詰めものをしたウズラ8羽を生地で包んで焼き上げた品で、ホールケーキのような見た目も迫力満点! パーティの主役になること間違いなしです。
ウズラが顔をつけ合わせて……誕生日ケーキとしてこの品が出てきたら、子どもは泣くだろうなぁ。
余計な妄想しなくていいから!
牛肉、鴨、ハト、ウズラ、豚、仔羊、ウサギ……素材ごとに料理を見ていくと、それぞれの素材の仕立ての傾向なんかも見えるのが楽しいよね。
たしかに。牛肉だと、最近は熟成肉を使うシェフが増えているのが特徴。今回は森 茂彰シェフ(moRi)と杉本敬三シェフ(レストラン ラ フィネス。写真2)が熟成肉を使っていました。
そうそう、やまけんさん(山本謙二氏)が中心になって年に1度開催している「赤肉サミット」の今年のテーマも「赤身肉と熟成」だったね。
約30人のトップシェフに集まってもらい、エサと品種の違う5種の赤身肉に同じ熟成をかけたものを食べ比べたんだけど(写真3)、熟成肉とひと口に言っても風味や触感は千差万別だなぁと思いました。熟成についての基礎知識とともに当日の様子をレポートしているので、是非この記事を参考に、好みの熟成肉を探してみてください!
2012年最後の号として、連載記事も歳末の特別編に
そして今月号は2012年の12月号。年末の総集編として、連載の「エスコフィエを読む」で取り上げた品を、脇坂 尚シェフ(サラマンジェ ド イザシ ワキサカ)に再現してもらいました。
「オマール・ア・ラメリケーヌ」に「ブロシェのクネル リヨン風」(写真4)、「ベカスのサルミ 冷製」など、どれも威風堂々、力強いよね。
ここでは現代でも残っている料理を中心に取り上げたんだけど、工程や盛りつけ、解釈などに違いがあり……わずか100年くらいでこれだけ大きな変化があったんだなと実感しました。
連載「フランス料理の科学」では、最終回の特別編として下村浩司シェフ(エディション・コウジ シモムラ)に新作4品を作っていただくとともに、川崎寛也博士と「料理と科学の可能性」についての対談もしてもらいました。
12月に入って本格的に忙しくなる前に、じっくり読んでもらいたいよね。
投稿者 webmaster : 11:26
2012年10月18日
『専門料理2012年11月号』 編集後記より
『専門料理2012年11月号』
発行年月:2012年10月19日
判型:A4変 頁数:150頁
特集:ガストロノミー 高価格レストランの料理と技
「これからのガストロノミーは、世界規模でなく、宇宙規模で考える!?」
「技術、素材を見る目、料理観を継承していくことが、大きな課題です」
今月の特集はずばり「ガストロノミー」。美食学なんて訳されることが多いけれど、本特集では食材選びから組合せ、調理、盛りつけ、そしてプレゼンテーションに至るまで心を配ったレストランとその料理って位置づけかな。
こないだ、キヨスクで目にした経済誌の特集が「貧食の時代」でさ……われわれ、完全に世の中と逆行してない?
いやいや、お客さんに夢を売るはずのレストラン業界が下向いてたら、いつまで経っても日本は明るくならないんだから! で、そんなガストロノミーに対する熱い思いを語ってくれたのが、米田 肇シェフ(HAJIME。14ページ)。
今年の6月から、2万6250円のコース1本にしたんだよね。
そう。1日1営業にするなど、より完成度の高い料理を作る体制にしたんだって。で、米田シェフが今作ってるのは「iso 磯」(写真1)、「daichi 大地」など、地球をモチーフにした品々。氏曰く、「宇宙の別の惑星から来た相手に地球のよさを伝えるつもりで作っている」って。
海外のさらに先の宇宙に目を向けているってすごい!
第2企画では、ガストロノミーをめざす30代の若手シェフ4人を取材。みなさんそれぞれにガストロノミーへのあこがれや夢、目標を語ってくれたんだけど、とくに心に残ったのは、後藤祐輔シェフ(アムール ガストロノミーフランセーズ。20ページ)の言葉。「自分がこれまで先輩から受け継いできた技術、素材を見る目、料理観を次世代に伝えていきたい」って。
小さな店やカジュアルな店が増える中、ガストロノミーならではの技術やアプローチをどう継承していくのかは、料理界が抱える大きな課題だよね。
そんな若手シェフが憧れる高良康之シェフ(銀座レカン。36ページ)と渡辺雄一郎シェフ(シャトーレストラン ジョエル・ロブション。40ページ)の2人に、料理をプロセス付きで紹介いただいたのが、第3企画の「ガストロノミーのアプローチ」。
「軽やかな仕立て」(写真2)や「分解・再構築」など、4つのキーワードから料理を作ってもらったんだよね。2人が料理を作り上げるまでの過程が見えて、とても勉強になりました。
高級食材を見る目を養うことも、ガストロノミーには必要です
高良シェフと渡辺シェフには対談もしてもらったんだけど、2人の共通点や違いが浮き彫りになるし、人となりが垣間見えるのもおもしろいよね。今回はこの他、「ガストロノミーのサービス」というテーマで、東京のフランス料理店3店の支配人にも座談会をしてもらいました(写真3)。
そうそう、忘れちゃいけないのが、キャヴィアの食べ比べ企画(写真4)。13アイテムを集めて食べ比べたんだけど、ぜいたくな1日だったなぁ。
実際のところ、そんなに大きな違いが出るわけ?
正直、それを心配していたんだけど……それぞれ全然違いました! 細かなニュアンスは、ソムリエのお2人に語っていただいたので、是非誌面をご覧ください。
どれがいちばんおいしかった?
ええと私は……って、味覚はやっぱり個人差があるから、実際に買って食べ比べましょう。
やっぱりガストロノミーはお金がかかる!?
投稿者 webmaster : 14:25
2012年09月18日
『専門料理2012年10月号』 編集後記より
『専門料理2012年10月号』
発行年月:2012年9月19日
判型:A4変 頁数:168頁
特集:地方のレストラン 地域密着、新しいステップ
地方だからこその魅力を掘り起こすことが、店作りの秘訣!
北欧取材も敢行!「地方の時代」は世界の潮流です
地方で頑張るレストランに焦点を当てた今号。最初の企画「地方で高みをめざす!」では日本全国北から南まで、5店のシェフに話を伺いました。
みなさんユニークで、バイタリティにあふれていましたね。
東京で聞くのとはまた違ったエピソードが満載で、楽しかった。たとえば藤木徳彦さん(オーベルジュ エスポワール。19ページ)は、料理人という立場から畑への鳥獣害対策に取り組んでいた。駆除されたジビエをどんどん料理に活用して地域活性化につなげよう、と(写真1)。評判が広がって、今や全国から講習依頼が届くとか。
本田 剛さん(アンティカ オステリア トト。28ページ)は野菜直売所でいい野菜があまりに安い値段で得られているのを見つけると、生産者の電話番号を調べて「こんなにすばらしい野菜を安売りしちゃだめです!」と伝えるんですって。そうして、野菜は付け合せとして南イタリア流に別皿でたっぷり提供するそうです。(写真2)。
地方で長く店を続けるには、地域とともに生きるという覚悟を決めて、その土地ならではの魅力を掘り起こし、伝えていく姿勢が大切なのかも。
京都の山深くという立地を唯一無二の魅力として見せる中東久人さんの美山荘(37ページ)は、まさにその考えを体現しているのかもしれませんね。(写真3)。
とはいえ、地方ならではの課題もある。たとえば人材問題。「志を持つ若者は大都市に行ってしまう」「募集をかければ人は集まるけれど、本当の意味での『人材』は少ない……」なんて声も聞かれた。
であれば自ら育てましょう、というのが対談「地方だから、こんなに楽しい!」(43ページ)で登場いただいた、北海道の堀川秀樹さん(トラットリア・ピッツェリア テルツィーナ)。「サグラ」(32ページ)の村井啓人さんをはじめ、何人ものシェフが「北海道のイタリアン」を掲げて堀川さんのもとから巣立っています。
北海道では農業や畜産も若手生産者がとても元気なんだって?
北海道に入植した初代から数えて「三代目」くらいにあたる、新たな世代が台頭しているんです。生産者とレストランをつなぐ中間業者にも世代交代の波が訪れているそうで、今後にますます期待が持てそうでした。
国を挙げて「地産地消」に取り組む北欧の今をレポートします
そして今月はもうひとつ、「北欧、ガストロノミーのヴィジョン」も注目企画です(写真4)。現地で取材して、どうだった?
「地方の時代」は世界の潮流なんだな、と実感しました。世界的に見れば「地方」でしかなかった北欧が、国策として地産地消に取り組んでいる。仕掛け人がいて、プロジェクトがあって、若い料理人が楽しみながら料理をしていて……それがうまく組み合わさって、今の成功があるんです。
「ノマ」の共同経営者、クラウス・メイヤーさんにも話を聞いたね。
ノマのオープンは、メイヤーさんにとって20年間にわたる食の活動家として取組みの集大成だったそう。けれどそんなメイヤーさんにも一つだけ誤算があったとか。
ほう。
それは、ノマのルネ・レセッピシェフが「これほどまでの天才だとは気付かなかったこと」ですって。
一生に一度でいいから言われてみたいね、そんなこと。
投稿者 webmaster : 16:57
2012年08月17日
『専門料理2012年9月号』 編集後記より
『専門料理2012年9月号』
発行年月:2012年8月18日
判型:A4変 頁数:174頁
特集:スペイン料理 ガストロノミーとレストラン、バルの料理
モダン・スパニッシュはもはやスペイン料理ではなく、シェフの料理!?
近年の日本のスペイン料理ブームも、先駆者の尽力があってこそ
今月は専門料理初となる「スペイン料理」特集!
スペインと言えば闘牛にフラメンコにサッカー。料理だと……パエリア?
古いなぁ。今は日本でもモダン・スパニッシュから伝統料理に主軸を置いたレストラン、気軽なスペインバルまで、さまざまなスタイルの店があって、それぞれ個性を打ち出してるんだよ。
わかってるって。今回の特集では、ガストロノミー3店に、コースの料理をすべて紹介してもらったんだよね。
3人に共通していたのが、スペイン料理に縛られず、「自分の料理」を自由に表現しようとしていたこと。
藤原哲也さん(Fujiya1935。14ページ)がスペインから帰国して新しいタイプの料理を打ち出してから9年になるけど、この1年から2年で、ようやく料理が“しっくり”してきたって。今後、藤原さんの料理がどう変わっていくのか、注目です!
川島 宙さん(アコルドゥ。22ページ)がめざすのは、「何かを感じてもらえる料理」。メロン形の器に盛られたメロンのデザート(写真1)は、幼き日に母に駄菓子屋で買ってもらったメロン味のシャーベットを思い出し、思わず目頭が熱くなりました。
親孝行、しなさいよ。
……気を取り直して。それにしても、今は店を閉じてしまった「エル・ブジ」以降、ガストロノミーの世界がガラリと変わったけど、スペイン本場でその洗礼を受けた日本の若い料理人たちが、いよいよ地に足エをつけてがんばりはじめているのを感じました。
「自分流のスペイン料理」では、「ガストロノミーとバルの間」に位置する、4店のシェフを取材しました。
4人のうち2人はスペインでの修業経験がないんだけど、そのぶん修業先の影響を受けずに、自由に料理を表現しようとしていました。
一方、山本嘉嗣さん(エチョラ。38ページ)と嵐田憲和さん(アラシダ。40ページ)の2人は、ともにバスク地方で2年から3年ほど修業。嵐田さんの「桜姫鶏のピトゥ風」(写真2)、素朴な味わいで、しみじみとおいしかったなぁ。
あー、カヴァを片手に、タパス(写真3)食べたい……。
急だねぇ。スペインバルも取材したって言いたいんでしょ。
よくわかったね。今回の4店だけ見ても、銀座に浅草に横浜・黄金町に大阪・福島……ここ10年ほどで、本当にいろんなところに本格的なバルができていて、人気を集めてるんだよね。
日本にスペイン料理を広めた3人にも話をうかがいました!
今でこそ、いろんなタイプのスペイン料理店があるけど、それもすべて先駆者がいてこそ。今回は、日本でスペイン料理を広めるために尽力した3人のキーパーソンにも話を聞きました。
まずは、スペイン料理を志している人なら知らない人はいない、深谷宏治さん(レストラン バスク。36ページ)。函館に店を出したのは、今から31年前! スペインでの修業中には、新バスク料理の旗手だっイス・イリサール氏に師事していたんだよね。
そして、小西由企夫さん(エル ポニエンテ。46ページ)と下山雄司さん((株)グラナダ。56ページ)という、それぞれ大阪と東京でスペイン料理を広めた立役者にも取材しました。
1冊丸ごとスペイン料理、料理もインタビューもたっぷり詰まっています!
投稿者 webmaster : 17:02
2012年07月18日
『専門料理2012年8月号』 編集後記より
『専門料理2012年8月号』
発行年月:2012年7月19日
判型:A4変 頁数:182頁
特集:パスタとピッツァ より豊かに、より的確に作る
伝統か、モダンか。二者択一ではない幅広さがパスタの魅力」
「ピッツァも熱い! 豪快なイメージの裏に緻密な計算がありました」
今月の特集は「パスタとピッツァ」。健康診断も終わったし炭水化物ドンと来い! の意気込みで取材して参りました。
では早速ふり返ろう。「パスタの表現力を高める」では、8人のシェフに自慢のパスタを見せてもらった。
イタリア人のルカ・ファンティンさん(ブルガリ イル・リストランテ。14ページ)が「伝統は大事だけどそこにこだわらない。自由な発想で料理を作りたい」と仰っていたのが印象的でした。イタリア料理=地方料理と考えがちだけれど、それは一面的なイメージなのかなあ、と。
中尾崇之さん(レストラン ファロ資生堂。17ページ)も、「第一に考えるのは非日常の料理でお客さんに喜んでもらうこと」と話していた。それを象徴するのがオマールのパスタ! シンプルなトルテッリとオマール料理が合体した、まさにレストランの一品だった(写真1)。
私は奥村忠士さん(リストランテ アカーチェ。24ページ)の潔さにもやられたなあ。「パスタは粉を味わうもの。ソースにたくさんの具はいらない」という言葉通り、キタッラのソースはシャンピニョン・ド・パリを炒め煮にしたラグー(写真2)。シンプル極まりないのにしみじみとおいしい。経験のなせる技です。
奥村さんたちベテランシェフが粘り強く広めてきた手打ちパスタだけれど、個人店でたくさんの種類を作るのはなかなか大変。みんなどうやってるの? という疑問に応える企画が「小規模店 手打ちパスタのオペレーション」です。
藤田政昭さん(タヴェルナ デッレ トレ ルマーケ。34ページ)はタリアテッレの生地を1人分ずつ板状にのばして、ラップ紙で密封して冷凍保管してました(写真3)。注文ごとに解凍するのでロスが出ないし、解凍することで水分が抜けるからか歯ざわりもよくなるんだって。
湯本昌克さん(シエロ アズッロ。42ページ)は3種の生地を15種のパスタに展開。驚くのは、すべてを1人で、注文が入ってから成形するってこと!
ボリュームのある前菜を用意したりと、お客さんにもゆっくりと食べ進んでもらう工夫をしていたけれど、「今作っているのは私のパスタかしら?」という期待感で不思議と待てちゃうんですよね。
ピッツァの熱い世界にも踏み込んでみました!
後半はピッツァ編。みなさん熱く、情熱的に語ってくださいました。
めざす生地は「さくっと軽く、モッチリした部分もあり、小麦が香る」と概ね共通していたね。けれどもアプローチの仕方は十人十色で、粉の配合や焼成には緻密な計算と経験が反映されていた。
青木嘉則さん(ピッツェリア ダ・アオキ タッポスト。55ページ)はナポリで習ったやり方を今も続けているそう(写真4)。でも最近ナポリを訪れたら、現地では技術が簡略化されていたとか……。
青木さんにはぜひ伝統的な仕事を伝えていって欲しいね。ところで、ピッツァ窯の重さがどのくらいか知ってる?
200kg……ってことはないですよね?
桁が違うよ。2トン、3トンはあたりまえなんだって。だから、店探しでいい物件を見つけても構造的に窯を置けなくて断念、なんてこともあるみたい。
ピッツェリア開業準備中のみなさん、物件探しの際は気をつけてくださいね!
投稿者 webmaster : 13:42
2012年06月19日
『専門料理2012年7月号』 編集後記より
『専門料理2012年7月号』
発行年月:2012年6月19日
判型:A4変 頁数:166頁
特集:自分の店を持つ 料理が主役の店作り、現在形
「自身のキャリアや料理観を、どう個性に結びつけるかが成功のカギ!?」
「料理人の人生は長い! 第2のステップにも要注目です」
料理人であれば、誰でも一度は独立を夢見たことがあるはず。今月の特集はずばり「独立開業」。第1・第2企画では、昨年3月の震災以降に開業した新人オーナー7人を取材しました。
共通して感じたのが、みなさん自分ならではの個性を発揮し、特徴ある店作りをしているということ。
たとえば対照的だったのが、同じフランス料理の兼子大輔さん(L'AS。14ページ)と杉本敬三さん(レストラン ラ フィネス。18ページ)。
兼子さんは店の造りからサービス、料理に至るまで徹底的に合理化を図って、サービス料無しの5250円のコース1本で勝負。結果として高いコストパフォーマンスを実現しています。
一方の杉本さんは客単価2万円以上を想定。ウエイティングもできるバーカウンターを設置し、器もオーダーメイドするなど、自身の理想のガストロノミーレストランを追求しています(写真1)。
なんでも杉本さん、8歳で料理人を志し、その頃から地元の料亭の厨房を見学してたって。ただものじゃないよね。
他の5店も個性豊か。あえて雰囲気別に分けると「メッシタ」(22ページ。写真2)と「築地 ロ・スコーリオ」(29ページ)がワイワイにぎやか系、「シャントレル」(26ページ)と「中国料理くろさわ東京菜」(35ページ)が地元密着アットホーム系、そして「東家」(32ページ)が大人しっとり隠れ家系、といったところ。
東家は夫婦2人だけで切り盛りしている店なんだけど、お客さんとしっかりと向き合うため、昼夜ともに1日1組限定。食後には店主の坂内さん自らお茶を点ててくれるんだって。お客からしたら、ホント心が満たされちゃうよね。
今回は、新店以外に、移転や2号店のオープンなど、新たなステップに挑む4人も取材しました!
中でも驚いたのが、東京・恵比寿から木場に移転した「ア タ ゴール」の曽村シェフ(42ページ)。日本人で唯一オリエント急行のシェフを務めたことがあるんだけど、その個性を打ち出すべく、新生ア タ ゴールの前に豪華列車「夢空間」の車両を運んできちゃいました!(写真3)
電車を持ってくるって、どうやったらそんなことできるの?
JR東日本の代表番号に電話するところからはじめて、半年かけて交渉したんだって。その行動力には脱帽です。
4ジャンル4人のベテランシェフから若手料理人へ、
力強いメッセージも!
それと今回、仏、伊、日、中の4ジャンル4人のベテランシェフから、独立やシェフをめざして修行中の若手料理人に、メッセージをいただきました。
吉野シェフに鮎田シェフに野崎料理長に山本料理長……今も活躍されている超ビックネームですね! 名前を聞くだけで緊張してきます。
4人に共通するのが、「修業時代は技術だけじゃなくて人間性を磨いて、情熱を持って夢を追え」ということ。
山本料理長の「中国料理はまだまだ日本で紹介されていない料理や技術がいっぱいあるから、若手には大いにチャンスがある」って言葉もよかったな。「事業計画書の作り方」(65ページ)をじっくり読んで独立しようかな。
君、自炊すらしたことないでしょ。
投稿者 webmaster : 12:08
2012年05月17日
『専門料理2012年6月号』 編集後記より
『専門料理2012年6月号』
発行年月:2012年5月19日
判型:A4変 頁数:184頁
特集:デザート 初夏の食事の最後を飾る皿45
「華やかさや驚きも、デザートのおいしさのうち!」
「アレンジしやすいからこそ、基本が大切なんですね」
今月の特集は「デザート」。レストランのデザート、ビストロのデザート、そして日本食材の活用法と盛りだくさんの内容で、華やかな一冊になりました。
第1企画の「『これぞレストラン』堂々たるデザート拝見」では、山根シェフ(ポンテベッキオ。20ページ)のデザート(写真1)が印象的だったね。
「果物が少ない時季に、旬の野菜でデザートを作ってみては?」という提案でした。ホワイトアスパラガスを大胆に使って、白いのはソース・オランデーズ? と思ったらザバイオーネだったり、こんがり焼けたアーモンドのタルトが添えられていたり。驚きがあって、しかもおいしい。まさにリストランテのデザートです。
第2企画には、気鋭のシェフ6人が登場。素材の特性を掘り下げたり、プレゼンテーションに遊び心を加えたりと、勢いが感じられる品を見せてくれた。
小笠原シェフ(エクイリブリオ。28ページ)の3品は一見シンプルに見えるけれど、スポンジとクリームを3日間なじませたティラミス風のデザートに、料理と並行して焼き上げるでき立てのタルト、そして半年間熟成させたクリ(写真2) ―― と、実はどれも「時間」にフォーカスにした意欲作。藤原シェフ(Fujiya1935。32ページ)の「記憶の中のイチゴ畑」をイメージした品(写真3)とも通じる、テーマ性の高いデザートでした。
ところで、「ビストロのデザート」と聞いたらどんなものが思い浮かぶ?
唐突ですね……。
ババにパリ・ブレストにタルトとか、クラシックなお菓子のイメージかな。
そうしたビストロの定番の品のブラッシュアップ版を見せてくれたのが、第3企画の金井シェフ(ブノワ。38ページ)や田中シェフ(サンパ。40ページ)。ババ一つとってもアルマニャックを使った金井シェフに、ワインのコルク形に焼いた生地に赤ワインを添えた(写真4)田中シェフと、意外性のある仕立てでいい意味で期待を裏切ってくれました。
意外性といえば、全体を通して、醤油や桜の花など日本食材を積極的に取り入れるシェフも多かったです。
そうした日本食材の活用法を、森田シェフ(リベルターブル。50ページ)に掘り下げて考えていただいた。その結果出てきた「ポイントは、無理をしすぎないこと」という言葉は示唆に富んでいた。
食材の持つ日本的なイメージに引っ張られすぎず、自然な形でフランス料理に落とし込むことが大切なんですね。
アレンジをきかせやすいデザートだからこそ、基本がしっかりしているかどうかで、でき上がりに差が出るんだね。
パリからは、新一ツ星の日本人シェフをレポート!
『ギド・ミシュラン』のフランス版で新たに一ツ星を獲得した小林シェフ(レストラン ケイ。58ページ)と吉武シェフ(Sola par Hiroki.Y。62ページ)にも、パリからご登場いただきました。
2人とも、一ツ星を「目標」としつつも、「ゴール」とはとらえていない。さらに先を見すえていたのが印象的。料理にも、その勢いが現れていましたね。
平松宏之シェフ、吉野 建シェフといったベテランが切り開いた道を今、若手が邁進中。本場・パリの日本人料理人の層も確実に厚みを増しています!
投稿者 webmaster : 19:21
2012年04月19日
『専門料理2012年5月号』 編集後記より
『専門料理2012年5月号』
発行年月:2012年4月19日
判型:A4変 頁数:166頁
特集:豚肉 特別な豚肉、特別な料理
「国産も輸入も、まずは自分に合った豚肉選びが肝心」
「全国にいる情熱的な豚肉生産者の取り組みにも注目です!」
今月号の特集は「豚肉」。
仏、伊、西、中……計16人のシェフに、30品を超える豚肉料理をご紹介いただきました!
第1企画では7人のシェフが登場。とくに印象深かったのは、石井シェフ(ラ・ロシェル南青山。18ページ)の「これまでの固定観念を壊すような豚肉料理を作りたい」という言葉。豚肉って「家庭料理の食材」ってイメージがあるぶん、それをくつがえす料理を出した時にお客さんが受ける驚きや感動は、いっそう大きいって。
逆に言えば、それだけ料理人の腕がはっきりと出る食材ってことでもあるよね。
でも、たしかに石井シェフの豚肉料理(写真1)、見た目もすごくきれいだよ。
かたや、渡辺シェフ(パルテノペ。28ページ)はナポリの伝統料理2品を紹介。
とくに「豚皮のロール巻き?」は、とても古い家庭料理で、店のナポリ人スタッフでさえ、何十年ぶりに見たんだって(笑)。どこかなつかしい味わいが魅力です。
第2企画では、輸入豚肉にスポットをあてました!チンタ・セネーゼ、マンガリッツァ、キントア、イベリコ、ノワール・ド・ビゴールをそれぞれ使っているシェフに、どこが気に入り、どうやって使っているのかを聞いたんだよね。
十時シェフ(レディタン ザ・トトキ。35ページ)が使っているのが、チンタ・セネーゼ。イノシシに近く、濃厚で力強い味わいが魅力とのこと。
川手シェフ(フロリレージュ。40ページ)は、フランスのキントア。肉質はもちろん、生産者がはっきりしていて、品質に信頼がおけるのも、使ってる理由の一つだそう。輸入豚は、肉質も風味も個性的なものが多いし、だからこそいろんなものを試して、自分のめざす料理に合った豚肉を見つけることが重要だよね。
一方、ノーブランドの豚肉を多用していたのが、中国料理のシェフたち。いろいろとマニアックな料理もご紹介いただきました!
和田シェフ(五指山。53ページ)が作ってくれたのが、豚の尾を使った冷前菜(写真2)と、骨付きバラ肉や豚足をスープ仕立てにした上海の伝統料理。
しっぽに豚足、顔に皮に内臓に……1頭丸ごとを無駄なく活用できるのが豚肉の魅力だし、中国料理が得意とするところでもあるよね。
産地ルポに、基礎知識――。
熟成や加工肉についても詳しくレポート
今回は、北海道は石狩の「望来豚」と帯広の「どろぶた」、そして沖縄の「今帰仁アグー」……3つの銘柄豚の産地も訪ねました!
「どろぶた」ってまたすごい名前。
使放牧で泥だらけになって遊ばせてる豚だから、どろぶたなんだって(写真3)。
名前のイメージとは違う上品な味でした。
「望来豚」は、飼料の原料の8割が地元・北海道産という豚。そして、昔ながらの沖縄の豚「島豚」の種の保存をめざして、情熱を持った生産者が手がけている豚が「今帰仁アグー」。
絶滅の危機の豚を復活させたといえば、バスク地方のピエール・オテイザさん。日本にも、似た活動をしている生産者がいるとは、目からウロコです。
その他、部位や品種の基礎知識、ヨーロッパの加工肉(写真4)、熟成についてなどトピックも盛りだくさん! どうぞ、じっくりとお読みください。
投稿者 webmaster : 10:14
2012年03月23日
『専門料理2012年4月号』 編集後記より
『専門料理2012年4月号』
発行年月:2012年3月19日
判型:A4変 頁数:168頁
特集:人気料理、自信作 “支持される品”の作り方
「気になるあの店の定番料理を、徹底解剖しました!」
「料理体系の完成度とシェフ個人の創意、その両方に驚かされます」
「あの店の、あの料理が食べたい!」と無性に思うこと、ありますよね。
今月号では、そんな「人気料理、自信作」の技術ポイントを
徹底的に紹介します!
フランス料理からは3シェフが登場。共通して思ったのは、
やはりフランス料理は手がかかっているなあ、ということ。
五十嵐シェフ(マノアール・ダスティン。14ページ)の料理(写真1)は、
フォワグラのテリーヌ、仔牛の胸腺肉のコンフィ、ウナギのタレ焼き、
コンソメのジュレが1品の中に詰まったぜいたくなもの。
それでいて一つひとつの食材が主張しすぎず、
一体感があるのがすごい技術といい食材といい、
まさに「この一切れの中にフランス料理の宇宙がある」。
イタリア料理からも同じく3氏が登場。
こちらは郷土料理を再現しつつ、さらに完成度を高めるというのが共通項。
早川シェフ(トラットリア イ・ビスケロ。32ページ)の
自信作は、「ミートソース」。
早川さんは、挽き肉をハンバーグみたいな塊にして表面を焼き固めて、
塊のまま煮込むんだって(写真2)。
そうして挽き肉の旨みを閉じ込める。
誰もが作れる「ミートソース」だけど、
やっぱりプロの技はひと味違いますね。
プロの技といえば、中国料理もそう。
南シェフ(一碗水。43ページ)は、鍋1つで完結する料理を見せてくれた。
調理時間はあっという間で、すべての工程にムダがなく、
すべての動きの意味が最後につながって一品になる。
中国料理の体系の完成度の高さに驚きました。
では、日本料理は?
高畑さん(太庵。46ページ)と山本さん(日本料理 龍吟。49ページ)が、
ともに肉料理を見せてくれました。
今は日本料理にも肉料理が求められる時代。
高畑さんは、「箸が通る柔らかさと、コースに無理なく組み込める
穏やかな味わい」を重視していたね。
一方で山本さんは、「真鴨の皮を乾かす」ことへの
突き詰め方がすごかった!(写真3)。
使った道具はバーナー、液体窒素、そして舌ブラシ!
こんなの、どうやったら思いつくんでしょう?
今回の山本さんの料理の調理工程は、YouTubeにアップされています。
みなさん、チェックです!
もう一つの企画は「春! 旬の定番・評判メニュー15」。
春といえば仔羊、山菜、アスパラガス……。食欲の春です。
芽吹き時の食材は「気」を蓄えているっていうけれど、
まさにそんなエネルギーを感じる料理が揃ったね。
これを糧に、明日からまたがんばっていきます!
大震災から1年。
専門料理では今後も被災地の取組みを追っていきます
この3月で、東日本大震災からまる1年。
連載「東北から 食の震災 食の復興」(108ページ)では、
福島と宮城の米をめぐる現在の状況を取材しました。
福島県の米農家、鈴木博之さんによると今年の米は味もよく、
放射性物質は概ね10Bq/kg以下。
それでも「『安全ですか?』の問いに
自信を持って答えられないのが辛い」という言葉が胸に刺さった。
鈴木さんは、よりセシウムの移行が少ない米作りに
取り組んでいくそうです。
被災地には、復興に向けて苦闘を続ける生産者や料理人がたくさんいます。
今後も、長期的視点に立ってそうした取り組みを
紹介していきたいと思います。
投稿者 webmaster : 14:33