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いくら讃辞を書き連ねてもなお足りない名著。そんな料理書が存在するでしょうか?
しかし、この一冊だけは、そのように形容することが許されると思います。貴方が西洋料理、とくにフランス料理に関わるか、その道を志すのであれば、本書を無視して通過することは不可能です。
1969年、柴田書店から翻訳刊行された本書に、当時マキシム(パリ)の社長で、オーギュスト・エスコフィエ協会会長であったルイ・ヴォーダブル氏は、次のように言葉を寄せてくれています。「エスコフィエ・フランス料理は、料理にとって、言語に対する文法や辞書のようなものである」と。収録された調理法は実に5000種類。ここにフランス料理の全ての基本が語られています。
本文総ページ数1428。さらに巻頭には別に32ページのカラーを付加した大著です。カラーはカテゴリー別の代表的な料理を収録。調理は日本を代表する偉大なグラン・シェフ、井上幸作氏。ほかにピエール・カシェ、浅野和夫の2氏が担当しました。
造本を見れば、紙クロス装の上製本。これを布クロス貼りの箱入りに仕立て、さらにダンボールの移送箱に収めるという内容。決して豪華美装ではありません。しかし、長く読み継がれ、使われ続けることだけを想定した堅牢さは、本書が屹立した存在の料理書であることを物語ります。本文は装飾性一切なし。原著の雰囲気そのままに、エスコフィエの偉大な足跡、遺産を忠実、正確に日本語に書き移し、印刷しました。
目次から大項目を拾い上げるだけで、与えられている字数が尽きてしまうほどの大著です。
原著初版は1902年の刊行。エスコフィエは自序でこう語っています。「40年の間、料理の実務にたずさわった経験に即して、料理の伝統的な基礎というものを、少なくとも原則的な点で確立したい」、「書棚に飾っておくような本にしたいとは思わなかった。あらゆる時に役立つ伴侶、いつでも手近にあって、豊かな経験に根ざした、信頼できる知恵を貸してくれる友、といったものにしたかった」。
彼の願いは達成されたというべきでしょう。本書は、フランス料理のバイブルとして、すでに1世紀の時を経た今もなお、多くの料理人の技と心の支えになっています。
しかし、彼は自序などからも知れるように、極めて謙虚で、節度ある人物でした。「人は学べば学ぶほど、さらにいっそう学ばねばならないことがわかる。そして、学習は知性を啓発するばかりではなく、料理の実践において、自らを完成させていくのを助ける方法を与えてくれるのである」。
彼は生涯を通じて3度改訂版を刊行していますが、いずれもフルモデルチェンジというべき、徹底的な見直しを図ったことでも知られています。彼は学び抜いた料理人でした。だからこそ、彼の著作は今もその輝きを失わないのです。