素材の表現力が天才的にすぐれ、かつ繊細な味わいがあるのが杉野英実シェフのお菓子です。
たとえばポム・デーヴというケーキ。苦みが強調されたキャラメルのムースと、酸味が強いリンゴのピュレのムースが層になっています。でも、これを口にすると「あっ、青リンゴだ!」と感じてしまう不思議。素材と素材を組み合わせて、よりその素材らしさを表現してしまうのが杉野シェフらしさなのです。
そんな感性あふれる生ケーキ40品を素材別に、詳細なプロセス写真とともに紹介しています。ほかに比較的簡単な焼き菓子13品、デザート15品もあります。
ケーキ自体が、どれもとても美しいのですが、その繊細な味わいを伝えるように写真を撮ってくれたのが、カメラマンの越田悟全氏。以前から長く杉野シェフのお菓子の写真を撮っていることもあって、息もぴったり。プロセス写真まで美しく、質感もよく表現されているので、どこまで泡立てていいのか、混ぜればいいのかも一目瞭然です。
また、フランス菓子を勉強したい人のために材料名はフランス語を併記しているのもポイント。それぞれのパーツごと、手順ごとにくくって見やすくしました。
杉野シェフのケーキは多層構造です。しかも1つずつ小さな型でつくるのも杉野流。プロセス写真を連ねても、お菓子の構造はすっと頭に入りません。そこで、小さな型でつくる生ケーキについては、断面写真をのせました。断面写真からもそのおいしさが伝わってきます。
また、つくり方には、なぜそうするか、といった理由や考え方ものせています。より深くレシピを理解できます。
基本の生地にコーヒー、クルミ、ココナッツを合わせてしまえばまた別の生地になるものもあったり。中でも、フード・プロセッサーでつくるタルト生地「パータ・フォンセ」はとても簡単です。
また、小さな型でつくるタルトレットも多いのですが、そんな場合に1度に型に生地を敷き込んでしまう手法もプロセス入りで紹介しています。