流派を越え、料理としての懐石のすべてを集約した1冊です。500におよぶ料理事例をはじめ、懐石としての約束事、ひと通り懐石をこなすために必要な基礎調理技法(ご飯の炊き方・盛りつけから、香のものの切り方・盛りつけまで)、器の手入れや取り扱いなど、懐石について知りたいと思う内容をすべて網羅しました。
特筆すべきはコラムとして差し入れた基礎知識のページ。懐石で使われる器・箸の種類、流派別箸の使い方、茶事全体の流れとその中の懐石、流派別の懐石の流れ等々、懐石に携わる立場として知っておくべきでありながら、意外に参考資料がなく把握できていないという事がらについて、わかりやすくコンパクトにまとめてあります。
懐石各論/飯、汁、向付、煮もの椀、焼きもの、預け鉢・強肴、箸洗い、八寸、香のもの、湯桶の各項目別に、懐石としての料理心得、知っておきたい基礎調理技法、12ヵ月の料理集をまとめました。12ヵ月の料理集は各月2から3品ずつ、計240品を収載(料理解説付き)。
四季の懐石と点心の献立/1月から12月までの月ごとに分け、正式な懐石と軽い点心を合わせて28事例、献立形式で紹介しました(料理解説付き)。
また、四季のお菓子/季節感あふれる12ヵ月の主菓子(京都・嘯月製)、干菓子(京都・亀屋伊織製)を紹介しました。千家十職(宗哲・永楽・浄益・一閑・楽)の手になるものをはじめ、乾山、道八など、名品揃いの器も必見です。
見やすさ、使いやすさを第一に考えたシンプルなデザインです。
たとえば八寸12ヵ月では、1月から12月まで各月2品ずつの料理例を淡々と並べて紹介していますが、ページの右側には裏千家流、左側には表千家流を配置してあります。
また、向付の約束事については、その献立項目の最初のページで料理写真を大きく印象的に使い、それを取り囲むように番号をふってポイントを明記。そのあとに詳しい解説が続きます。
その点、さまざまな流派の懐石に対応しなければならない料理店にとって、実践の場で本当に役立つ1冊であることはまちがいありません。
さらに料理店に限らず、懐石を深く知りたいと思っている人にとっても、”目からウロコ”の1冊になるはずです。流派による違いを知る、また、一般の会席料理と懐石との違いを知ることで、懐石というものの全体像が見えてきます。約束事をまる暗記するのではなく、なぜそうするのかを知ることで、その理解はより確実なものとなります。
基礎から応用まで、懐石のすべてが詰まっています。