フランス菓子のパティシエとして常に目標とされてきた「オーボンヴュータン」河田勝彦シェフは、意外にも自身の著書がありませんでした。その仕事を後生に残したいという思いから、河田氏の40年間にわたる菓子づくりの成果を網羅的に凝縮してまとめたのがこの書です。
商品アイテム125品。河田氏の菓子のすべてではありませんが、生菓子から焼き菓子、チョコレート、アイスクリーム、糖菓にいたるまでを紹介。生菓子の生地21種類や自家製の36種類の基本材料レシピも掲載しています。
その技術は実に多彩です。フランスでの修業時代には、各種のパティスリーで働くほか、コンフィズリー(砂糖菓子)の店やチョコレート店などにも入って、さまざまな仕事を覚えてきました。古典を読みあさり、地方菓子にも没頭。そんな河田氏の奥深い仕事内容をのぞきに、河田ワールドをどうぞご覧ください。
レシピを細かく追った美しいプロセス写真つきで紹介しました。長いレシピを解読するための「わかりやすさ」に配慮したレイアウトと文字のシンプルな美しさは、デザイナーの有山達也氏によるところ大です。
カメラマンの日置武晴氏もスタイリストの高橋みどりさんも、ともに以前から河田氏のお菓子のファンです。2人とも、いかに河田氏らしいお菓子の世界を表現するかに力を入れて撮影しました。高橋さんは、「黒子に徹して」できるだけ削ぎ落としたスタイリングを心がけたとのこと。
こうしてできた陰影のある写真をとおして、河田氏がつくる「濃いおいしさ」が伝わってきます。ちなみに、材料の文字は勉強になるようにとフランス語でも表記しています。
お菓子づくりは、決められた配合でつくればいいというのではなく、「なにを食べさせたいか」というつくり手の考え方が重要です。それは河田氏のお菓子から伝わってきます。
また、9つのコラムでは、焼き方、甘さの問題など、常日頃から河田氏が「基本」とするお菓子づくりの考え方をじっくり読み込めます。ぜひご覧ください。レシピも大切ですが、考え方も大切なのです。
本と自分の足と目と舌で確かめた伝統菓子。これにさらにおいしさをプラスした河田流レシピに注目してください。「ガトー・デュ・テ」として紹介しています。
紹介したレシピ数はわずかですが、「糖菓」は河田氏が昔から、そしていまも楽しげに没頭しているジャンル。パート・ド・フリュイ(フルーツゼリー)と紅茶などという、組み合わせも楽しく、新しいお菓子の世界が広がります。最近日本でも見かけるようになったギモーヴも、河田氏の影響が大かもしれません。