日本料理の仕事には、細かい役割分担があり、それらがうまく連携することが、質の高い料理を生み出す条件となります。そのためには、高い調理技術や食材に関する知識はもちろん、仕事を全体の中で捉える視点が必要です。
新人から板長まで、日本料理の仕事を部署ごとに順を追って解説した本書は、柴田書店MOOK「料理百科」1号から24号まで掲載された連載に、新たな内容を追加してまとめたもの。自分の仕事に必要な技術、全体の流れ、他部署とのつながりがよく分かり、1冊を通して日本料理の仕事がしっかりと把握できます。
たとえば重要な包丁使いに関しては、持ち方、研ぎ方、野菜の切り方、魚のおろし方などを丁寧に写真で追って見せていますので、指の位置や力の入れぐあい、刃の角度など、文章ではわかりづらい点も細部まで確認できます。
新人にとっては料理ばかりでなく、器や盛りつけの決まりごとを覚えることも大切なこと。たとえば割山椒は割れているほうを手前に、ひさごはヘタの部分を右におく。とじ目のあるものは角型ならとじ目が向こう、丸型ならとじ目は手前など、忘れがちな決まりが写真ですぐに確認できます。
新人の心構えからはじまり、野菜の洗い方と保存法、包丁の使い方・手入れの仕方、野菜の切り方、魚の水洗い、貝の水洗いと徐々に高度な板場の仕事に進み、脇板・向板から煮方、焼き場、揚げ場、八寸場など、それぞれの部署の仕事だけでなく、他部署とのつながりがよく分かる構成になっています。
煮方は調理場のもっとも難しいパートですが、本書でも煮方、およびそのアシスタントである脇鍋の仕事を丁寧に紹介しています。だしの引き方からはじまり、基本の煮物9種類、肉を使った煮物5種類、椀物5種類。その他、葛と卵の公式や、向板から煮方への仕事の流れなど煮方の仕事が多角的に理解できる内容が盛り込まれています。