本格的なフランスパンをはじめて日本に紹介したのが、いまも芦屋でパン屋「ビゴの店」を営むフィリップ・ビゴ氏です。
日本でのフランスパンづくりにおいては、「パンの神様」といっても過言ではない存在。そのビゴ氏がはじめて出す詳細なパンの技術書が本書です。
とくにビゴ氏が考えるパンづくりの真髄を随所にちりばめている点が、最大の特徴です。人間のためではなく、パンが気持ちよく発酵する環境には何が必要なのか、いけないのか、どうこねたらパンはおいしくなるのか…などなど。これまでにはなかった、パンの立場で書かれた技術書といえます。
ベーシックな5つのジャンルのパン48品、お菓子っぽいパンやパン屋がつくる菓子40品、
パンを使ったメニューやパンに合う料理40品、その他飾りパンで構成。パンへの愛情あふれる技術書です。
基本のこね方や発酵方法は冒頭にまとめ、5つのジャンルのベーシックなパンの焼きあがり写真を切り抜きで見せ、形、焼き色などがよくわかるようにしました。
つくりかたプロセスは、状態がよくわかるプロセス写真とていねいな解説で紹介しています。パンによっては焼く前に切り目(クープ)を入れますが、その手法まで写真とともに細かく解説しています。でき上がり写真は、パンの香りがしてきそうです。
レシピは手ごねで紹介しています。それはつくる途中途中での粉や生地の状態をよく見てもらい、手でさわった時の感触や硬さを伝えるためです。ミキサーでこねてしまえば見えてこないことが、この手ごねでは見えてきます。
そもそもビゴ氏の修業時代は手ごねだったそうです。手ごねでは1キロほどの粉を使っていて、ミキサーでパンをつくる人にとっても状態がよくわかり、参考になるはずです。
人間ならば汗だくになるような環境が、パンの発酵には望ましいとビゴ氏は唱えます。エアコンの風は生地が膨らもうとするのを妨げる大敵だと。つまり、パンの立場に立ってパンづくりをしなさいと言います。
パンの基本のこね方も生地をふたつに切っては重ねる方法だったりします。現実のパン工房の環境はいろいろですが、パンが望んでいることを考えることはおいしいパンをつくるために参考になりそうです。
パンに合う料理も紹介していますが、ちょっとおすすめなのは、パンを使ったメニュー。カナッペやクロック・ムッシュ、ラスクやパン・ペルデユなど、余ったパンの利用方法としても参考になります。