和菓子作りを一から学ぼうとしている人、和菓子の知識を深め、より深く理解したいと思っている人に最適の製菓専門書です。
本の8割を和菓子の作り方に割き、餡の炊き方や餡の包み方などの基本技法に始まり、四季折々の77品の端正な菓子の作り方を豊富なプロセス写真とともにオールカラーで紹介。
微妙な餡の炊きぐあいや、菓子づくりの勘所など、「こういうことこそ知りたい」という読者の目線で編集してあるので、初心者の方にもおすすめです。
本の2割は和菓子作りのバックグラウンドともいえる文化、歴史、材料、器具についての詳細な解説です。
和菓子材料の地方による名称の違いや、それぞれの製法など、事細かで充実した情報は和菓子を知る上で欠かせないものです。これ一冊で和菓子のすべてが学べる内容の濃い、質の高い一冊です。
和菓子作りの勘所は、時間や温度で数値化しにくいことばかりで、頼りになるのは手の感触だけ。
本書では、初心者にとって一番難しいこの部分に焦点を当て、「なぜこの作業が必要なのか、作業の意味は何なのか」、「どういう状態になるまで火を入れるのか」など、読者にとって真に必要な情報を詳細丁寧な解説文と写真の両面からアプローチしています。
餡や生地の質感をしっかり伝えるカラー写真を多用し、目で見て理解できる構成になっています。
掲載菓子77品は、製法別に、蒸し菓子、餅菓子(団子、おはぎ、大福など)、上生菓子(練切、きんとんなど)、流し菓子(寒天菓子や羊羹など)、焼き菓子(どら焼きやオーブンで焼く饅頭、カステラなど)に分けて掲載し、その他、栗渋皮煮や茶席用の干菓子、飴なども網羅しています。
餡の作り方は、基本となる小豆粒餡、小豆こし餡の他、白粒餡、白漉し餡、卵黄を使った黄味餡、さらには各菓子のレシピ中に抹茶餡、胡麻餡、味噌餡、栗餡、芋餡など多種類の餡が登場します。
巻末の<和菓子の基礎知識>の章では、使用全材料のカラー写真と専門的解説、使用全器具のモノクロ写真と専門的解説、さらには和菓子の季節の決まりごとや節供菓子についてわかりやすく説明した歳時記解説、和菓子のルーツを探る歴史解説、和菓子の専門用語解説など、菓子職人なら知っておきたい情報がもれなく盛り込まれています。
美を意識する菓子職人になろうとするなら、和菓子の美しい意匠と無駄をそぎ落としたミニマリズムをぜひとも学ばねばなりません。
また、余分な要素を一切用いず、素材の味だけで勝負できる技術を磨こうと思うのなら、やはり和菓子作りを一度は学ぶべきでしょう。
小豆ひとつを煮るにしても、饅頭に使うのか練切に使うのか、あるいは夏用の菓子にするのか冬用の菓子にするのかで、使うべき小豆の種類が変わり、その豆と相性のよい砂糖を選ぶセンスも要求されます。
さらに、ちょうどよい餡の炊き加減を知る術は、木杓子から手に伝わる感触、色、艶だけ。
材料や製法が単純になればなるほど、技法への深い理解が必要になるのです。
職人の技とアーティストの感性の両方を磨くために、ぜひ和菓子作りを経験してください。