中国料理の基礎技術を、写真を目で見ながら理解できるようにわかりやすく解説した本です。
包丁の持ち方から切り方、鍋、玉杓子など道具の使い方からとろみのつけ方などをていねいに解説する「基本の動作」にはじまり、炒める、揚げるといった各種「基本の調理」、「点心」、「麺・ご飯」に至るまでをとりあげ、内容は網羅的。
基本の調理法で陥りがちな失敗例もピックアップし、なぜ失敗したかの理由も紹介しています。またポイントもそのつど解説しています。
プロをめざす方のためにつくった本ですが、目ですぐに理解できるので、たとえば青菜炒めがうまくいかなかったという一般読者の方にもその場で役に立つ内容です。また、網羅的に技術を紹介し、事例メニューも掲載していますので、たとえば新たなジャンルの料理を導入しようというプロの方にも1冊あると参考になります。
中国料理の調理法は多岐にわたっています。
たとえば炒めるのも、そのまま炒めるのが「生炒」で下味をつけて炒めるのが「小炒」……といった具合です。文字だけで読むと、むずかしそうと腰が退けてしまいがちです。本書では具体的な料理をとりあげ、そのプロセス写真で細かく追って、1つひとつの調理法とそのポイントを解説しています。
また1つの調理法は4から5カット程度におさめ、かつ「炒め方の種類」「パオズの包み方」など同じテーマのものはなるべく見開き2頁か1頁にくくってコンパクトに見せることで、隣の調理法と比較でき、それぞれの違いが目で見てすぐに頭に入るようにしました。
動きがわかりにくいものには矢印をつけています。写真は有能な料理カメラマンとして知られる越田悟全氏で、その美しい写真にも注目です。
さらに、調理法の特徴やコツが大づかみにわかるようには囲み文字でキャッチをつけています。
たとえば「揚げる」のところは「二度揚げすることが基本である」というキャッチをつけています。温度を高めて最後にもう一度揚げることは油切れをよくし、油を使う中国料理では大切なポイントで、これを囲みにして印象に残るようにアピールしました。
「地方料理の特色」という解説頁で各地の中国料理の特徴をざっくりとつかんでいただいたあと、「基本の動作」「基本の調理」、「点心」、「麺・ご飯」の順に頁が続きます。
調理法については技術解説のあとにかならずその技術を応用してつくれる「事例」として代表的な料理のつくり方を紹介しています。この料理レシピだけでも参考になります。
また、プロの現場では中国語でやりとりすることが多いため、それぞれの頁の調理法、事例の料理名は中国語とそのルビで表示し、そのあとに小さく日本語を入れています。
日本のホテルなどで広東料理が主流であることを考慮して、料理頁の下の欄外に広東語読みを表記し、さらに巻末には「揚げる」「焼く」などの調理の項目名と事例料理名の広東語も記載しました。
なぜこうつくるかという理論がしっかりあり、上品に仕立てる味や微妙な食感を表現する技術があり説得力があります。吉岡氏を著者に迎え、とにかくわかりやすく、ポイントが理解しやすい本をと思い、企画しました。
中国料理の技術は文字で読むだけだと理解できない場合が多く、すでに技術を会得されている方には簡単なことでも初心者にはわかりにくいのです。
簡単なことでも写真で印象づけることで頭に入ってきます。素人の自分を基準に本書を構成し、中国料理の大ワク、ざっくりしたポイントは把握できるようにと心がけました
。原理さえわかれば、家庭でもある程度はおいしくつくれるはず。プロでなくても料理に興味さえあれば、初心者であっても参考になると思います。
日本の中国料理というとホテルの高級店かラーメン店といった具合で、中間層のお店が欠落しています。
リーズナブルな価格で、満足がいくレベルの料理を出すお店が増えれば、もっと中国料理のおいしさ、よさが日本人に伝わるはずと、中国料理の底上げを願って企画したのが本書です。
その中間層の街場のお店も最近ちらほら出店しはじめています。言ってみれば穴場市場。その市場に新しいお店がたくさん進出するために本書がお役に立てばと思います。