おなじみのサブレやチュイル、円盤形のパレなど、3cmから5cm大の小さなお菓子が「プティ・フール」と呼ばれるジャンルのお菓子です。
「プティ・フール」は生地の種類、お菓子の形、色どり、味わいとすべてにバリエーション豊富なのが特色だと、著者である「オーボンヴュータン」の河田勝彦シェフはいいます。
お菓子屋さんのショーケースに華を添えるアイテムとして、同店ではかねてから提供していたジャンルのお菓子です。
またジャムや飴、パート・ド・フリュイなどの「コンフィズリー(糖菓)」は、河田シェフが長年構想を温めてきて、2006年には専用厨房をつくり、いま力を入れている分野です。
本書は、このふたつのジャンルにスポットをあて、150品余りを、美しいプロセス写真とともにつくり方を詳しくご紹介したものです。
プティ・フールは「グラッセ」「ドゥミ・セック」「セック」の3つのジャンルに分かれ、それぞれ生地別に頁を構成しました。ちなみに「グラッセ」は「フレッシュな」という意味で生菓子的な生地、「ドゥミ・セック」は半乾き菓子、「セック」は乾き菓子となります。
「グラッセ」は8種類の生地で44品、「ドゥミ・セック」は同じく8種類の生地で22品、そして「セック」は9種類の生地で29品をご紹介。おなじみのシュー生地やシュクレ生地からあまり知られていない生地までいろいろあります。
コンフィズリーは18ジャンルで56品。そのうち飴のジャンルはわた飴を含めて8ジャンルもあり、河田シェフがいかに力を入れているかがわかります。それもそのはず、かつて地方のお菓子のスペシャリテというと飴が圧倒的に多かったからです。
コンフィズリーでは、飴のほかにキャラメル、ヌガー、フォンダン、マジパン類、パート・ド・フリュイ、ジャムなどをピックアップしています。
また、前著『ベーシックは美味しい』にも出ているギモーヴ(マシュマロ)は、レシピを改良したものを載せています。
プティ・フールの敷き紙には壁紙を使いました。高橋みどりさんのセンスあるお菓子のコラージュ、そしてに日置武晴カメラマンの力の入った写真をご覧ください。
後半のコンフィズリーでは飴は「蓋つきのガラス容器に入れるものである」との河田シェフの指示があったことで、全体を通してガラスの器を使うことにしました。
読みやすく、すっきりしたデザインは有山達也氏が担当しています。
こむずかしいことよりも、楽しさ、わかりやすさを伝えることを優先して、ちょっと力を抜いてプロセス写真も少なめにしています。
「わぁ、なんてかわいくて色とりどりなの? 形もさまざまだし」とわくわくしてきます。
これがプティ・フールの世界です。
ご紹介したのは生ケーキのジャンルのものでプティ・フール・グラッセ。ほかにドゥミ・セックとセックの詰め合わせがあります。
コンフィズリーのジャンルといえばジャムやパート・ド・フリュイ(フルーツゼリー)を最近よく目にしますが、このお店には棒つきキャンディーの「シュセット」や袋入りのカラフルな飴メリメロ、はたまた綿あめまであるのです。
なんて楽しいお店でしょうか。お客に選ぶ楽しさ、見る楽しさを与えています。
そう、この「楽しさ」がこの商品たちの、そしてこの本のテーマです。
これだけお菓子屋さんが増えてくると、生ケーキと焼き菓子だけでいいの?とふと思ってしまいます。つくり手もお客も楽しめ、お菓子屋さんの懐を深くするこうした菓子は魅力的だと思って、河田シェフにこの本をつくることをお願いしました。
すると、元々はまっていたテーマだけに、河田シェフはぐいぐいとテンションを上げて「前からつくろうと思っていたんだ」と厨房までつくっちゃったのです。
そして本の企画から3年から4年たつと、ご自分でも驚かれるほどの品数を撮影していたという次第です。
本書を、ぜひ「楽しんで」読んでいただけたら、と思います。シェフのパワーもビンビン伝わってくること請け合いです。