本書は日本料理の野菜料理集です。
特徴は使う食材が植物性ということ。一部卵や牛乳を使っていますが、固形の魚肉類を一切使用せず、あくまでも野菜、穀物、豆、果物などが主役です。オーソドックスな定番料理から、ひと工夫したアレンジ料理まで、たくさん食べてもお腹にもたれない、からだにやさしい野菜料理全590品を収録しました。
かたくるしい精進料理の本ではありませんから、スープやだしなどには、かつお節、肉、魚などの動物性素材の旨みを利用して、野菜の味をぐっとアップさせる工夫をしています。
野菜料理だけでかいせきコースに組み立てることもできるし、お通しや先付をはじめ、一品料理として単品でも利用できる重宝な野菜料理集です。
まず最初に野菜をおいしく食べるために欠かせない、日本料理のだしのとり方を、材料写真とプロセス写真つきで解説しています。
一番だしからはじまって、二番だし、昆布だし、野菜スープ、魚スープ、鶏がらスープ、牛すねスープ、丸(すっぽん)スープの全9種のだしとスープのラインアップです。野菜料理だからこそ、だしの旨みは欠かせないのです。
野菜料理一品集の章では、使い勝手を考えて、料理写真のすぐ近くに料理解説をレイアウトしました。頁を繰らなくてもその料理のつくり方がわかります。
また、各種たれや和え衣、合せ調味料などの配合は、できるだけ料理解説内に*をつけて解説しました。どんな厨房でも使いやすいように、配合は極力割合で表記しています。
構成は野菜をおいしく食べるためのスープやだしのとり方、野菜料理の決め手となる下調理のし方や、アク抜きなどの手法、色鮮やかに仕上げるコツなどをていねいに解説した「基本篇」、先付からはじまって前菜、椀、向付、焼物、焚合・鍋物、蒸物、揚物、酢物、飯、水物、甘味まで、コースに沿って料理ごとに春夏秋冬の順に並べた「野菜料理一品集」、最後は野菜だけで組み立てた四季の「野菜かいせき・野菜弁当・野菜お節のコース篇」。それぞれ親切な料理解説がついています。
巻末には、材料別のさくいんもついて充実。手持ちの材料から料理を捜すことも簡単です。
本書の冒頭では、女性客に絶大な人気を博する「井中居」の料理長である著者が、コースを組むときの味にめりはりのつけ方や、お客の満足度を上げるための提供時の工夫など、知っておきたいポイントを教えてくれます。
焼物や揚物、焚合などのメイン料理はもちろんですが、私が一番魅力に感じたのは、「飯」と「水物」「甘味」です。ご飯は季節の山菜や野菜をたっぷり使った具沢山の炊き込みご飯やおこわなどを料理屋らしい盛りつけで紹介しています。どれもつくってみたくなってしまいます!
また、かぶや海老芋や蕨などの野菜を使ったデザートは、実にヘルシーな感覚で、甘いものですが、とてもからだに良さそうです。
頁を繰るごとに、忘れかけていた日本の四季と旬の味を思い起こす、そんな1冊をお手元にお届けします。