新鮮な野菜には、それ自体の力があります。したがって野菜100%はもとより、他の食材と出会うことで加算・相乗というプラスアルファの新しい世界が拓かれるのです。
京都・四条川端『枝魯枝魯』(渡仏のため閉店)、西木屋町通『枝魯枝魯ひとしな』の他、東京、名古屋、京都、金沢などで数多くの店をプロデュースする著者は、2008年4月に開業した『枝魯枝魯Paris』(パリ・モンマルトル)の新天地で人気沸騰。
前著『くずし割烹 枝魯枝魯』を受け今回は野菜に注力、魚介類や肉類など動物性のうま味と重ね合わせた複層・重層の味の拡がり、複利的なうま味の発生に焦点を合わせた皿をつくりました。210皿248品に凝縮された“枝魯枝魯流”野菜料理をとくとご賞味ください。
人気店の枝魯枝魯は、カウンター割烹料理の“くずし”に基軸を置き、高額業態の敷居を低くした、いわばその道のアヴァンギャルド。。
11から12品のコース料理を3000円を切る価格帯で提供するので、高額の食材は使えません。しかし、味のレベル・クラスは上を狙うため、品質は落とせません。したがって、知恵と工夫の方程式で解決しなければなりません。流通・市販品をいかにおいしく食べてもらうか、がテーマとなっています。
百聞は一見にしかず、すべては皿の上にあります。枝魯枝魯十八番(おはこ)とも言える野菜をピュレにした上で魚介、肉類と合わせるならそこは新世界です。
あくまで枝魯枝魯流、著者独自の腑分けにより
(1) 一般野菜(香味野菜、芽菜含む)
(2) 野菜、土もの系
(3) きのこ、豆、穀物、海藻類
(4) 果物、木の実、その他(Mixed)
の4部構成となっています。
前半、約三分の二が料理写真のカラー頁、後半に料理解説のモノクロ頁という造作。
各料理の写真には簡単な作り方が明記されているため、想像力を駆使して個性的なメニューをつくることができます。
もちろん、それぞれに対応する解説頁は付記されているので、詳細はモノクロ頁を参照してください。
掲載料理は素材別となっており、材料別90品目の索引付きなので使い勝手はいいはず。
枝魯枝魯の真骨頂は“くずし”にあります。意表を突く野菜の使い方が一望できる本です。
著者は「朝摘み、朝掘り野菜をそのまま食べるのが一番おいしい」と語ります。ですが、多くの場合、それは難しいため「あの手、この手でいろいろな要素を引き出します。
シンプルにつくる野菜料理のクラシックだけでなく、つくり込む複雑さにより、「野菜のプロフィールを際立たせるのも個性」と考えています。
冬を忍んだ春の息吹の山菜、朝穫り、朝掘りの力強い風味・素材味を壊さず、提供するための手法をあれこれ試みています。
参考に寄与するため《作り方》および素材選びなどの要所で、それぞれの料理に《ワンポイント》の注釈を付けました。
また、汎用性のための《応用》も付記しています。メニュー開発の一助になれば幸いです。