「日本料理はサラダの宝庫」とは著者の弁。和え衣やたれ、浸け地にひと工夫加えるだけで、素材の組合せや盛付けの発想を少し柔軟にするだけで、日本料理がサラダに生まれ変わります。
本書では、日本料理の技法をベースに、それをサラダとしてブラッシュアップするアイデア、世界を知る著者ならではのグローバルなサラダをたっぷりと紹介します。真空調理、低温調理、ガストロバックやパコジェットなど、科学的裏づけに基づいた新しい調理法や機器類も駆使しつつ、野菜のおいしさの本質に多角的に迫ります。国籍、ジャンルを超えた、どこにもないサラダの本。
春夏秋冬の章立てで、計120品のサラダをカラーページで一挙に紹介しています。巻頭には、盛付の全体図がわかる善良理のフォト・インデックスを付けました。
本編では、その野菜の何を表現したいのか、どこを食べてほしいのかにズームインした写真を多用しているため、料理の全体像を把握しづらい点があるからです。また、料理解説は巻末にまとめましたが、ここにも料理写真を入れ、ひと目でどの料理の解説かがわかりやすいようにしました。
そしてぜひ目を留めてほしいのは、「序」と「あとがき」。もちろん、メニューアイデア集としても十二分に役立つ本書ですが、それだけではない、著者が『SALAD』に込めた深い思いが語られています。
百聞は一見にしかず。本書のビジュアルの特徴は、ご覧いただければ一目瞭然です。とにかく、野菜や魚介などさまざまな素材の美しいカットが、これまで見たこともないような斬新なカットが、紙面狭しと並んでいます。
たとえば、どう見ても吊り橋か線路の枕木にしか思えないようなカット。赤ズイキを油で炒め、甘酢をからめて、バルサミコの煮つめをかけた一品です。また、一見お花畑のように見えるカットは実は「てっさ(フグの刺身)」、宇宙の最果て、ブラックホールを思わせるカットは聖護院カブラの低温長時間ローストです。
「これ、何だろう?」。そう思ったら解説をじっくり読み進めてください。そこにはさまざまな発想やテクニックが詰め込まれています。なんでもない「なます」に見えるものが、実はガストロバックという減圧調理法でこれまでにない歯ごたえを追求したものであったり、はたまた「焼きなす」や「若竹」といった日本の伝統料理がちょっとしたアレンジで世界仕様の一皿に仕上げられていたり…。
昔ながらの厨房と、最新のラボ(実験室)と、芸術性を極めるアトリエと、そんなあらゆる創作空間の集合体から生み出されたのが本書といえるでしょう。読者の方々の受け取り方次第で、いろいろな楽しみ方をしていただけると思います。
*編集部だよりは、こちら