東京・銀座の天ぷらの名店「てんぷら近藤」の主人、近藤文夫氏が、長年にわたって磨き上げてきた天ぷらの技術のすべてを1冊にまとめた決定版。これまで言葉で表現することが難しかった勘所を、職人ならではの感覚を交えて細部にわたって解説した、初めての天ぷら技術書です。
「てんぷら近藤」といえば、分厚いさつまいもの天ぷらと、糸のように細くて繊細な人参のかき揚げが有名ですが、ほかにも、近藤さんは創意工夫にあふれた天ぷらを数多く生み出してきました。季節感あふれる素材の香りや味をとことん生かすために考え尽くされた天ぷらを全76種紹介します。
天種ごとに、揚げ上がりのイメージを明確にして、それを実現するために適した仕込み、最適な衣の濃度と油の温度などを工程写真とともに細かく解説しました。
第1章の天ぷらの基本編では、基本材料となる粉、卵水、揚げ油の解説、天ぷらの香りや味の決め手となる衣の濃度、油ぎれよく軽く天ぷらを揚げるための適温を見極める目安などをわかりやすく説明。「近藤」独自の2つの鍋をつかって揚げる方法と考え方を合わせて解説しました。
第2章では魚介の天ぷら、第3章では野菜の天ぷらを計76種取り上げ、仕込みから揚げるまでの作業をプロセス写真を駆使してていねいに解説します。このように種を仕込むのはなぜか、なぜこの衣の濃度が適しているのか、どうしてこの温度で揚げるのか、という一連の流れが一目瞭然。
最後に天つゆ、天丼のつゆ、天茶だしをもれなく解説しています。天ぷらの道具、鍋の磨き方まで「近藤」の天ぷらの仕事を網羅しました。
DVDやyou tubeなどの動画で一連の作業を流して見るのとは違って、要点をしっかりとらえたオールカラーの工程写真を使って解説するので、大切な部分、見るべき作業のポイントがわかりやすいというところが本のよいところです。
たとえば油温について。目で見て理解しやすいように、油の温度の目安などは、ガラス製の鍋を用いて衣を散らし、液面を上から見た写真と、鍋の側面から見た写真の双方を用いて、温度の見極め方のポイントを解説します。
衣の濃度についても同じです。衣が種が隠れるくらいの濃さ、種にうっすらと残るくらいの濃さ、種にほとんど残らないくらいの濃さ、といった状態をワンカットの写真で解説します。
ワンカットで見るべきポイントを解説する。これは動画にはない写真ならではの利点です。
それまでの江戸前天ぷらの常識を打ち破り、新しい天ぷらの形を生み出したのが近藤さんです。
近藤さんの揚げる天ぷらは、他の天ぷらと比べると、カロリーが圧倒的に少ないそうです。それは、その天種に合った濃度の衣をつけて、適温で揚げるからです。油温は低すぎてもだめ、高すぎてもだめ。そのあたりの勘所を写真を使って解説します。
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