日本料理における炭火焼きの技術をまとめた一冊。
炭火焼きの魅力は、なんといっても独特の食感と、煙でいぶされてつく燻香。日本料理店だけでなく、鰻、焼き鳥、焼肉など、炭火を使う店は数多くあります。非常に人気がある調理法ですが「炭火で焼く」という技術は、とても難しいもの。本書はその技術と感覚を解説したはじめての本です。
まずは炭の知識からはじまり、火のおこし方、焼き台の準備、魚や肉の仕込み、串の打ち方、適した火加減の調整といった、炭火焼きに欠かせない基本を解説。なぜこうするのか、どうしてこうなるのか、を横浜国大の杉山久仁子教授が科学の視点で補足して理解の助けとしました。
この基本技術をもとに、魚介や肉などをひとつひとつ素材ごとに、仕込み、串打ち、焼き方の順を追って、多数のプロセス写真を使って解説しています。
第1章は基本篇。仕込みから焼き上げるまでの、「上手に焼くためのこつとポイント」が詳細に解説されています。大型の魚を使うこと、熟成させること、切り目を細かく入れること、塩をあてること、串を打つこと、それぞれにはおいしく焼くための理由があります。この理由を科学的解説を補足して説明しています。
「幽庵地やウナギのタレなどの仕込み」ももれなく解説。「炭の扱い方」「炭火焼きの道具」のほか、「基本の塩焼き」「基本の幽庵焼き」「肉の焼き方」といった仕上げの工程も細かく解説しています。
第2章は素材別炭火焼きの魚介篇。それぞれの魚種に適した焼き方で焼く工程を解説。小十のスペシャリテのウナギはもちろん、長時間かけて焼く若鮎の塩焼きも登場します。
第3章は肉と野菜篇。牛肉はサーロイン、ヒレ、いちぼ、ももといった部位別だけでなく、最近注目を集めている赤肉品種の焼き方も解説。鴨、鶏、豚なども部位別に焼き上げます。
より現場に近い感覚で読んでいただけるように、全編にわたって、数多くの工程写真を駆使しました。
本書の魅力は、焼き上げた魚介や肉のシズル感あふれる写真。1頁に引き伸ばし、素材の持つ迫力をしっかりと捉えているこれらの写真は、盛りつけ以前の焼きっぱなしの状態であるがゆえに、炭火焼きの魅力をダイレクトに伝えています。
炭火焼きの焼き手に一番大切なことは「思い切りのよさ」。その言葉が裏付けられるような、力強さのなかにも繊細さが息づく炭火焼きをご堪能ください。
また、焼きの工程写真ごとの解説の文末に、炎マークをつけて、火加減の強さを表す数字を添えています。1から10までの数字で表現されたこの火加減は、実際に温度を計って決めたわけではありませんが、熟練した焼き手の感覚とイメージで表現したもので、参考になるはずです。
最高の焼きものを焼くためには、いくつかのポイントがあります。このポイントをきちんと解説しているところに注目してください。炭火独自の特性を生かすワザが満載です。
まずは、炭火を理解するために、第1章の「炭火の魅力を科学する」をぜひ読破してください。少々難解な部分もあるが、きっと仕事の役に立つはずです。
*編集部だよりは、こちら