東京・自由が丘の住宅地近くにあって、近隣のリピーターはもちろん、遠方からの根強い菓子ファンに愛されている「モンサンクレール」。オーナーの辻口博啓氏は、多彩なブランド展開を手がけながらも、生菓子を扱う店は地元自由が丘の店だけというこだわりを持っています。
オープン仕様のキッチンから毎朝できたてをケースに並べ、当日売り切る鮮度を何よりも大切にしています。数々のコンクールで優勝経験を持ち、製菓学校の講師も務める辻口氏のオリジナル菓子も多く、そのおいしさは「軽やかで食べやすい」「もう一つ食べたくなる」と幅広い層から高い評価を得ています。
本書では、オペラ、シブーストなど定番菓子を現代的に生まれ変わらせた人気レシピを始めとして、菓子に合わせて微妙に加減する生地とクリームの関係、日常づかいやギフトに欠かせない焼き菓子や半生菓子からアントルメまで、モンサンクレールのすべてを1冊にまとめました。
菓子の軽やかな味を表現する最新技術とは?
砂糖を減らさないで甘さを控える手法は?
もう一度あの菓子を食べたいと思わせるには?
モンサンクレールの実際のレシピから学べる、初のプロ向け専門技術書です。
「軽やかさの秘密」
オペラ、レアチーズケーキなど定番菓子を、伝統に敬意を表しながらも、独自のテクニックによって軽やかにつくり上げる手法を紹介。たとえば溶かしバターを加えないビスキュイジョコンドや、凝固剤を使わずにチーズクリームを固める方法など。
「生地とクリームは表と裏」
基本的な生地こそ、理想とする味の表現にもっとも欠かせないパーツ。パートシュクレ、パータシュー、パートフイユテアンヴェルセなどをモンサンクレールの実際のレシピから学び、最終形となる菓子と併記することで、「菓子によって生地を調整する」という繊細なテクニックに迫ります。
「すべての工程には意味がある」
小さな焼き菓子や半生菓子は、華やかな生菓子に比べると地味ですが、菓子店では重要な存在です。工程がシンプルだけに、腕の良し悪しがすぐに結果に現れます。パティシエを志す人には最初の関門ともいえる、これら小さな菓子のコツを実技、解説します。
「菓子のオリジナリティ」
オリジナル性の高い菓子をつくり、世に残すことは、パティシエにとって究極の目標。ここでは辻口氏が秘蔵のスペシャリティを満を持して公開。これまで秘密とされてきたコンクール優勝作品「ジャルダン デ サンス」「セラヴィ」をはじめ、辻口氏の名を最初に轟かせた飴細工のテクニックまで掲載。
菓子の本来の色は、とても繊細です。たとえば白の中にも、クリームの白、小麦粉の白、砂糖の白、メレンゲの白といった違いがあります。表紙となった菓子「フロマージュ クリュ」はチーズのクリームに生クリームをかけ、粉糖をふります。その白い菓子を白い皿にのせ、どこまでも軽やかな世界観を表現しました。
めざしたのは「上品でクリーンな色気」。男らしく骨太な写真を得意とするカメラマン大山裕平氏が、新しい境地に挑みました。大山氏と辻口氏によるにこやかながら鬼気迫るコラボレーションが、菓子づくりの一瞬を切り取った手順写真に浮かび上がります。
ここでは、なんと菓子「シシリー」の原価を公開。秘密とも思えるこれらの情報を本書で公開する意図は、辻口氏が後進のパティシエの皆さんに必要な情報と感じているから。辻口氏は若くして独立開業され、さまざまな苦労をされて、独自の技術と経営を確立してきましたが、競争の激しい現代のパティスリー業界で生き抜くための、道標となる技術書が必要と感じていたそうです。辻口氏の初のプロ向け専門技術書として本書をぜひ進化する菓子づくりに役立ててください。
*編集部だよりは、こちら