「お菓子作りは味作りの積み重ねである」「おいしさは、どこまで細かくもの作りをするかで決まる」と寺井則彦シェフは言います。素材を吟味し、最もふさわしい製法を探すなかでたどり着いた「エーグルドゥース」のお菓子の数々を例に、それを構成するパーツや組み合わせのメソッドを、具体的に解説します。
ベーシックな素材の組み合わせや伝統的なお菓子を、いかにオリジナリティのある表現に昇華するか。主役とそれを引き立てるもの、味の強弱、季節感、みずみずしさ、軽やかさ、食感、色合いのバランス──味作りを軸に今のフランス菓子を伝える一冊です。
※本書は『cafe-sweets(カフェ-スイーツ)』121から132号の連載「エーグルドゥースのフランス菓子」に大幅に新規取材を加え、編集したものです。
37のお菓子を「第1章 ベーシックな菓子」「第2章 スペシャリテの菓子」「第3章 アントルメ」に分け、その考え方からじっくり紹介します。
本書の特徴は、ルセットの前に、お菓子の構成を分解し、その要素(パーツ)を掘り下げて解説している点。
たとえばひとくちに「シャンティイ・フレーズ(イチゴのショートケーキ)」といっても、イチゴが主役なのかジェノワーズ(スポンジ)が主役なのか、イチゴを主役にした場合、組み合わせる生地や生クリームはどんな味、量、食感がふさわしいのか──。
寺井シェフは「これを熟慮・吟味し、コツコツ積み重ねることで仕上がりに大きな違いが生まれ、オリジナリティが表現できる」と言います。
そのメソッド──なぜそのパーツにしたのか。なぜそのように作るのか。どうやって味を深め、コントロールするのか──を多くの写真とともに具体的に、詳しく解説することで、ルセットだけでは理解しづらい“味作りの本質”を伝えます。
また、より理解を深めるため、随所に【比較】と掲げた写真を掲載しました。失敗しやすいポイントや、文章ではわかりづらいポイントが一目でわかります。
書籍化にあたっては、エーグルドゥースのスペシャリテはもちろん、シュークリームやクレーム・キャラメル、トルシュ・オ・マロン(モンブラン)、ミルフイユなどのベーシックなアイテムやアントルメを加え、再編集しました(もちろん、それぞれシェフならではの表現がされています)。
シェフの意見を随所に取り入れ、ポイント部分の写真はできるだけ大きく、わかりやすく。寺井シェフがまえがきで触れているように、最初に全体像と各パーツの要点を理解し、そのうえでルセットを読み解くことで、味作りのポイントが見えてくる構成になっています。
「パティスリー エーグルドゥース」は2014年2月に10周年を迎えました。そのタイミングで満を持して発売する、寺井シェフ初の著書です。