今年バーテンダー歴50年を迎えた、銀座テンダーの上田和男氏の半生を、当時のバー文化を織り交ぜながらまとめた上田和男物語。
北海道に生まれ育った上田氏が高校卒業後上京し就職、そしてバーテンダーへの転職。
東京會舘、資生堂ロオジエというバーテンダーのエリートコースを歩み、数々のカクテルコンクールで優勝し、のちに世界に上田和男の名を広めることになるハードシェークを作り上げるまでの道のりを綴った。
後半は上田氏が50年間で積み上げてきたシェーク、ステア、ビルドの技術、代表的なカクテルレシピを収録。
前半は読み物。上田氏の幼少の頃から現在に至るまでの秘蔵の写真が各所にちりばめられている。
また改装前の東京會舘やパレスホテルの写真も貴重な資料として必見。
また上田氏ハードシェークを世界に広めるきっかけとなったニューヨークタイムズの記事も収録した。
後半のカクテル技術とレシピには、そのカクテルの持ち味を表現した印象的な写真を添えている。
この写真から、上田氏が何を考え、どのような思いをもってそのカクテルを作っているのかを、読み取ることができるのではないだろうか。
読み物なので、目に優しいクリーム色の紙を使用した。
しかしクリーム色の紙に印刷して、後半のカクテルの色が再現できるか気がかりだったが、カクテルの冷たさや濃度、漂う気泡の質感のイメージはなんとか伝えられたと思う。
たとえばp107。
マティーニのフィニッシュは、レモンの表皮(レモンピール)をつまんで曲げて、レモンの皮のエキスを飛ばして香りをつけるのだが、このレモンの霧状のエキスまで写真で再現することができた。
上田氏の人となりを知ったうえで、後半のカクテルを見ると、今まで手が届かない存在だったハードシェークの印象も違ってくるのでは。
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