料理人歴45年、オーナーシェフ歴20年以上。
常に現場に立ち続ける谷 昇シェフの矜持は「変わり続けること」。経験は素材を見る目を育て、ベストな調理法に至らしめ、その結果、味はどんどんピュアになる──。
全14席、夜のみの営業、1万2000円でアミューズからコーヒーまで10皿を提供するレストランで、素材をいかに余すところなく使い、手を加え、「これぞ」という一皿を仕立てるか。
ル・マンジュ・トゥーの85皿とシェフの言葉を通して、“小さな店のベテラン”ならではの素材使い、テクニック、そして谷流メソッドを伝える、集大成の一冊です。
ル・マンジュ・トゥーの仕事をすべて詰め込むべく、以下の章に分けて85品を紹介しています。
◆ ル・マンジュ・トゥーのメソッド
「塩の使い方」「油の使い方」「味のベースとしてのタマネギ」「おいしそうに焼く」などル・マンジュ・トゥーの料理を理解するうえで知っておきたい、8つのメソッドを紹介。
◆ 素材を使い尽くす
ひとつの素材をいかに展開し、使い尽くすかは小さな店に欠かせない仕事。いかに工夫してレストランの一皿に仕立てていくか。半頭の羊、ヒラメ一尾、グルヌイユの下処理から料理に仕立てるまで、実例を紹介。
◆ 定番料理のテクニック
オマールのムース、鴨やジビエ、フォワグラのテリーヌ、煮込み料理……「これを見れば腕がわかる」と言われる定番料理の、谷流の仕立て方を紹介。
◆ フランス料理の定番素材
セープやリ・ド・ヴォー、ウサギ、仔牛、青首鴨などフランス料理ならではの素材の魅力を、谷シェフなりに伝える12皿。
◆ 素材から考える
夏のタラ、フグ、紅鮭、栗毛カニ、水タコ……なじみが薄い素材の魅力をいかに引き出し、フランス料理の一皿に仕立てるか。ル・マンジュ・トゥーらしさが詰まった12品。
◆ ル・マンジュ・トゥーのスペシャリテ
鹿のコンソメに鳩のビスク、ホワイトアスパラガスのグリル。長年温めてきたり、ふとした発想から生まれた「ザ・谷ワールド」を存分に発揮する18の料理。
◆ フォン類 ソース コンディマン
いまの「ル・マンジュ・トゥー」を支える味のベースを紹介。
◆ アミューズ
2006年、ル・マンジュ・トゥーのリニューアルを機に始めた仕事。季節感、時代性、そして速やかに出せることを意識したアミューズ10品。
◆ デザート
ル・マンジュ・トゥーのデザートはフルーツのフレッシュ感を前面に出したアヴァン・デセールと、季節感とデコレーションに力を入れるメインのデセールの2皿構成。季節ごとに10品紹介。
◆ 谷 昇のメソッド
いかにして現在の谷 昇とル・マンジュ・トゥーが作られてきたか。45年の料理人人生といま考えていることをストレートに語ります。
「小さなレストランにおける料理人の仕事とは?」
たとえば、魚や肉のさばき方ひとつとっても、その店・そのシェフの方針に沿った方法があります。料理は、その一品のために材料を揃えるわけではなく、残った材料で別の料理を仕立てたり、料理そのものを展開して新しい一皿を作る。これが現場です。
そうした現場の仕事を、できるだけそのまま掲載したい。この本を作るにあたり、谷シェフから話がありました。魚は入荷したらさばいて身質ごとに切り分け、薄く塩をしておくと味がのるうえ、保存性も高まる……こうしたふだんのル・マンジュ・トゥーの仕事を、本書ではていねいなプロセス写真付きで紹介します。
写真で解説しきれないポイントは、“ムースの基本はカトルカール”(オマールの一皿)、“ミキサーを使わずに、なめらかに仕立てる”(鳩のビスク)など、別に書き出してわかりやすく。また、鹿のコンソメ、鳩のビスクなど、谷シェフのスペシャリテの詳細も初公開します。
また、「谷 昇のメソッド」の章では、「悩む姿もそのまま見せたい」と日々の思いや料理観を率直に語ります。
「僕は本当に不器用で、何をするにも時間がかかるタイプ」(こうして料理を作ってきた)
「料理はルセットではなく、メソッドを作ることが大事だ、と言っている。オリジナルのメソッドがある店は強い」(自分のメソッドを作る)「料理も店も僕自身も少しずつ変わっている。僕の前の本を読んだ人がこの本を読んだら“全然違う”と驚かれるかもしれない。それが現場というものだ」(超現場主義!)
谷シェフのように、長く第一線に立ち続けるシェフを目標とする若い料理人へのメッセージです。
料理も味のベースも、以前の本とは違います。そんなシェフに2年近く密着し、現在のル・マンジュ・トゥーの仕事をじっくり見せてもらいました。当初の予定から大幅に増えて料理は85品、随所にシェフのお話(谷シェフといえば、トークも魅力です)を散りばめ、まさに「1冊丸ごと谷 昇」という本に仕上がりました。
*編集部だよりは、こちら