日本に本物のイタリア料理を伝えた先駆者として知られる吉川氏が、自らの経験と知識を広く伝えたいと執筆した「イタリア料理教本」(1999年に上巻、2000年に下巻を刊行。2冊を合わせた新版を2011年に刊行)は、イタリア料理に携わる多くの方々にご愛用いただいている名著ですが、この本の中から、現場ですぐに役立つエッセンスを抽出したハンディな用語辞典を、との意図でまとめられたのが本書です。
用語を厳選し、教本には未掲載の調理用語も追加掲載。言葉の意味のほか、語源や歴史的な背景、料理の作り方なども記しました。
レストラン関係者はもちろん、現在イタリア料理を勉強中の方や、イタリアでの修業を考えている方にもお薦めの、中身の詰った用語辞典です。
伊和篇(約3300語)は、アルファベット順に見出し語・読み(カタカナ)・意味・解説を掲載。方言や料理の作り方、その料理が生まれた背景なども合わせてご紹介しています。単なる用語辞典とは異なり、言葉の重要度に応じて解説の深さに濃淡があるのが特徴です。
料理人に限らずイタリア料理がお好きな方であれば、読み物としても楽しめるのではないかと思います。和伊篇(約380語)は、メニューなどにもよく使用する素材名を中心に、肉・野菜・加工品などのジャンル別に言葉を並べて掲載しています。
その他、肉の部位のイラストと、DOCGワインリストを収載。コンパクトながら、必要な知識や情報がギュッと詰った1冊です。
イタリア語の文献を読むのがほとんど趣味といっていい著者ですが、それでも、さまざまな文献や情報の中から必要なものを選び、精査してまとめる作業には、長い時間を要しました。それだけにこの本は、著者にとっても特別な1冊になったのではないでしょうか。
世の中はあっという間にネット社会となり、さまざまな情報が簡単に手に入る時代になりました。しかし、そんな時代だからこそ、知識を身につけて、正しい情報を選びとる力が必要だといえるでしょう。
現役の料理人でありながら、イタリア語の原書を読むことを趣味とする著者は、レストラン関係者ばかりでなく、私たち編集者にとっても頼りになる存在です。
そんな著者のフィルターを通した知識や情報は、今の時代だからこそ、貴重なものといえるのではないでしょうか。
大仕事を終えて、しばし脱力状態の著者ですが、またすぐにさまざまな書物を読み始めることでしょう。これからもずっと、私たちの頼れる存在でいてほしいと思います。