「なにが入っている? なんの香り? なにを表現している? そんなことを考えずに、食べた瞬間に、素直に“おいしい”と感じられる菓子をつくりたい」。東京・碑文谷のフランス菓子店「パティスリー ジュンウジタ」のオーナーシェフ、宇治田 潤さんは話します。
シンプルにおいしさが伝わる菓子は、じつは緻密な考えのもとに完成するもの。本誌では“ジェノワーズがおいしい「ガトーシェリー」”など、宇治田さんがメインで味わってほしいパーツや味わいの方向性ごとに44品の菓子を紹介。
菓子自体の完成度のみに目を向けるのではなく、「いかにして食べ手の感覚に訴える菓子を組み立てるのか」という点をテーマとした、今までにないレシピ本となっています。
“生地のおいしさ”を主役に/“基本のパーツ”を主役に/香りを楽しむ菓子/素材のマリアージュを味わう/インパクトのある“食感”が決め手/素材の個性を存分に生かす
と、大まかな特徴に分けて菓子を紹介。
宇治田さんの菓子は一つひとつ伝えたいおいしさ(味のテーマ)が明確なため、“バヴァロワがおいしい「カジノ」”と、アイテム名の前にはかならずその菓子で伝えたいテーマを載せています。
さらに、各レシピのはじまりに「伝えたいテーマをどう表現するのか」という製法ポイントをわかりやすく紹介。その次に製造工程を紹介するページへと進む構成となっています。
「味に不要な飾りや絞り、細工や色味はつけません」と宇治田さんが言うとおり、素朴な見た目も“ウジタ菓子”の魅力。表紙の「ガトー・シェリー」も、上に飾るスリーズ(サクランボ)のシロップ煮から流れた汁が、きれいにナッペした生クリームの上にたらーっとかかってピンク色の線がついていますが、「むしろこれが味」(宇治田さん)。ここでも「華やかに見せること」よりも「おいしそうに見えること」を大切にするシェフの思いが垣間見えます。
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