「月刊 専門料理」に2007年から2017年まで連載していた、「日本の伝統食品」から101食品を厳選し、まとめたものです。
著者の陸田氏とカメラマンの大橋氏が、日本各地を訪ねて集めた、つくり手たちの生の声と姿は貴重な情報であり、資料的価値も高い一冊です。
今読み返してあらためて思うのは、昔ながらの食品のなかにある、知恵や技の素晴らしさ。近年、関心の高まっている発酵や熟成といった加工技術も、多くの日本の伝統食品の中に脈々と受け継がれてきたものです。日本の伝統食品は、食の知恵と技術の宝庫といえるでしょう。そしてそれを支えているのは、伝統を守りつくり続けてきた人々の情熱と、それを待ち、生かす人たちの存在です。
大きくは、「植物性食品」「動物性食品」「調味料・酒・油」の3部構成。植物性食品はさらに、漬物、乾燥品、海藻・水草、大豆加工品、その他に分けて、動物性食品は乾燥品・燻製品、塩蔵品、漬物・すし、練り製品、その他に分けて掲載しています。
食品のつくり手たちから聞いて、見て、感じて書かれた著者の文章は臨場感にあふれ、読み手を楽しませてくれます。また、文章とならび素晴らしいのが、大橋氏の写真です。食品の原料となる素材を得るところから、加工、ときにはそれを使用した料理まで。丁寧に、かつ大胆に、その食品の魅力が表現されています。判型は、読みやすいA5サイズ。頁数はちょっとした辞典なみの560頁。手元におきたい佇まいです。
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