いまや業界問わず、パート・アルバイトがいなければ、業務の円滑な流れは確保できません。何といっても非正規雇用が労働力の33.5%に達し、飲食業界に限定するなら、従業員総労働時間の8―9割をパート・アルバイトが占めているのが現状です。
ということは、パート・アルバイトの接遇次第でサービス現場の質は変わるということ。賃金が抑えられ、人件費コストが絞れ、経営側は喜ぶ……という単純な話ではありません。指導面も含め、現場総体の働き方が変わるということであり、ことは組成と組織の根本的なテーマになっています。
パート・アルバイトを100%戦力化できない外食企業は、退出もやむなし。協働のパートナーシップがないと組織はもたないのです。
著者は、本書の中で現場主体の意思疎通を図る新しいキーワードとして『エン・ドウ・マメ』を提示します。さらに明確にすべき『九つのストライクゾーン』を語り、面接は『15分1本勝負』と唱えています。さらにさらに謎の言葉『ホ・タ・テ・カ・ウ・ジ・カン』…
詳細は本書で明らかにされていますが、同時に、要点を図解したイラストを多数掲載しました。これは、読者の理解の一助になるはず。何ごとも、百聞は一見にしかず。本文とイラストを照らし合わせることで、サービス現場の実態と指導の仕方が一目瞭然となります。
外食現場に求められるサービス技術の基本に対し、従来の視点と思考から脱したところに、著者の軸足があります。いずれの項目もかんたんな言葉、かつ身近な事例で語られているため、読んでいるうちに言葉が身に沁みてきます。“机上の空論”を書き連ねるより、実現できるのか、具体化が可能かこれが冷静な現場の眼です。
しかも、“普通語”で語られています。というのも当の本人が現業時代、アルバイトおよび新人教育で嫌というほど大変な思いをしてきたからこそ。
安定成長期にあった頃の外食産業は、コンサルタントが上からの視線で示す“頭の体操”的な教則本、指導書でこと足りていました。しかし、いまやこの分野はサバイバル戦の状況を呈しています。即戦の仲間としてパート・アルバイトを捉える必要性を著者は説いています。
そのためにはどうするべきか。観る目(視点)と考え方(思考)を変えることで、自ずから現場は変わるのです。