本書は、1987年に刊行以来30版を重ねたロングセラー本の『お菓子「こつ」の科学』を全面改訂して新版として刊行したものです。
全面書き直しし、なくてはならない新しい情報も加えて7割以上の内容を入れ替えました。なんと頁数は40頁増!
著者が改訂にあたって10年以上かけて調査、分析、実験した成果を余すところなく表現。さらにおいしいお菓子づくりの「糧」となりそうです。
また、「分子レベルまで見える」ようにわかりやく書かれた内容は、料理を科学でとらえる傾向も出てきた昨今、お菓子だけではなく、食全般にとっても役に立つ1冊となるでしょう。
たとえば、フランス産小麦粉。今ではフランス産小麦粉も輸入されるようになり、現地で使われるタイプ40、55などという小麦粉の名前も知られるようになりました。しかし、この「タイプ」とはどんな違いがあるのかについてピンとくる人はまだ多くはありません。本書では小麦粉のつくり方とあわせてフランスの小麦粉が何を基準に分類されているかについても説明しています。
また、ガナッシュのつくり方もかつては沸騰した生クリームをチョコレートに加え混ぜて乳化させる手法が主流でしたが、いまでは新しい手法が目立ってきています。「温めた」生クリームを混ぜたチョコレートを物理的にスティックミキサーで攪拌して乳化させる手法です。こうした時代の流れで新しくなった手法や材料も解説すべく、とくにチョコレートと乳製品ついては大幅に頁数を増やしています。
以前の旧版はひとつの流れの中で解説する方向でしたが、新版は読みやすく分類されているのが特徴のひとつです。とくに同じ項目で頁数が3頁以上と長くなったり、製造工程を順を追って説明したりする場合、小分類された小見出しを太字にして目につきやすくし、ぱっと見て項目やポイントがのみ込みやすくなるよう工夫しています。
新版ではイラストも全面描き直しました。よりわかりやすくなることを考えて著者自身が図とあわせて描いています。
また、小麦タンパクと水が結合してできる「グルテン」や泡立てた状態の「生クリーム」など、つくった生地やクリームの状態を、イラストの図解とともに顕微鏡写真でも紹介しています。
ミクロの分子の世界をこの目で見ることができ、かつ、図解やイラストによってどんな状態になっているかもよくわかります。お菓子をつくる時に、想像力がかきたてられるかもしれません。
ちなみに頁数の関係で、新版にするにあたって多少省いたところもあるので、旧版と合わせてご活用いただければと思います。