基礎からわかるアメとチョコレートのピエスモンテ
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121 初級編、中級編、上級編の3体は、じつは軸の形やあしらいの形はあえて同じにしています。上級編の作品だけを見ると、ピエスモンテにすごく難しいイメージをもつと思います。しかしベースの考え方は、誰でもつくれそうな初級編のそれとまったく同じなんです。アプローチやテクニックが違うだけ。ピエスモンテは決して難しくありません。基本を学んで応用力を身につければ、表現の幅はぐんと広がります。 上級編のポイントは大きく3つ。1つは塗装の色の幅が中級編よりも広いこと。中級編では3色のグラデーションでメインのウサギの陰影や立体感を表現しましたが、今回は下地にハイライトを塗装してから色を重ね、さらに複数の色のグラデーションで陰影をつけることで深みをもたせ、服の素材感や立体感が浮き立つように仕立てました。 2つ目は土台を含めた軸と、あしらいを含めたメインのバランス。これらは1対1.2のサイズ比が美しく見える理想の値、すなわち黄金比だと私は考えていますが、初級編と中級編はシンプルにテクニックを見せるために1対1のバランスにしました。今回もあえて黄金比をくずして1対1.6の比率にしましたが、その狙いは、よりダイナミックな躍動感を表現することにあります。ただし、この“くずし”の手法は、全体のパーツの配置や造作の表現に美しい流れをつくらないと、メインがドンと居座った、ただの置物のような雰囲気になってしまうので注意が必要です。 過去2回と大きく異なるのは、自作のシリコン型を使うこと。テンパリングしたチョコレートを流すので丈夫なうえ、中は空洞で軽い。今回のように宙にたなびく燕尾服の裾で風の流れを表現することもできます。テクニックが必要なのはチョコレートを型に流す作業。中が見えない状態で型を動かし、部分ごとに微妙に薄さを変えながら全体にいき渡らせる必要があります。チョコレートの流動性は室温によっても変化するので、訓練必須のテクニックといえます。構成は同じでも、技巧1つで臨場感のある作品に変身します

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