パンストック 長時間発酵のパンづくり
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発酵に不可欠の酵母の力。パンに合わせて選び、使い分ける024 パンづくりにおける「酵母」(英語ではyeast またはleaven)は、生地の発酵に欠かせない。 その代表は、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae )という菌種。これらの酵母は、みずから持つ、また小麦粉やモルトに含まれる分解酵素を利用して、たんぱく質やでんぷんから分解された糖やアミノ酸を取り込むことで、新たな物質を排泄しながら生きている微生物だ。 結果として、生地の中には炭酸ガスが発生して生地は膨らむ。さらに、でんぷんが分解された麦芽糖やブドウ糖、たんぱく質が分解されたアミノ酸などさまざまな風味成分が生まれ、生地には甘み、旨み、苦み、香りなど発酵前には存在しなかった味が醸し出される。つまり、パンが発酵するのは、おもに微生物たちの生命活動のおかげというわけだ。 ちなみに、一般に製パン材料として販売されている「イースト」は、サッカロマイセス・セレヴィシエを純粋培養してから冷蔵・乾燥などの加工で保存性を高め、安定した品質を保って容易に流通・使用ができるようにしたもので、もとは同じ微生物である。 そして、酵母と同様にパンの発酵に深くかかわる「乳酸菌」は、同じ微生物でも「酵母」が属する真菌類とは異なる「細菌類」(英語ではbacteria)というグループに分類されている。 自家製したレーズン種やサワー種の中では乳酸菌も活動しているので、微生物学的に見れば、自家製酵母種とは「酵母」だけを指すものではなく、「細菌」も含めた多様な微生物の集合体と言える。単一酵母のイーストと比べると、発酵によって醸し出される風味は、より複雑で深みが増すと思う。 僕たちが店でつくっている酵母は、レーズン種、ホップ種、サワー種の3種類。「パンストック」の生地には、このうち、ほんのりフルーティな甘みと香りが加わるレーズン種と、まろやかな酸味のサワー種を使っている。微量のイーストも加える。自家製の酵母種が担う役割は、発酵による風味の豊かさ。安定した膨らみ(炭酸ガス)についてはイーストの力を借りるという考えかたで、多くの生地でこのような自家製酵母種+イーストの組み合わせを採用している。 また、微量のイーストだけを加えて発酵させ、小麦粉や牛乳など、素材の風味を表現する生地もある。「自家製の酵母種を使うこと」自体を目的とするのではなく、あくまでも、それぞれのパンのテーマに合わせ、より美味しくするために必要なものを選んでいる。酵母
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