雨の多い環境下でも日本の栽培者たちは農薬の使用を最小限にする努力を怠らない。そのうえで病害を回避するために開発されたのがビニールシートを用いキャノピー全体に屋根をかけるレインカットと、ビニールシートでフルーツゾーンだけを覆うグレープガードと呼ばれる手法だ。また、ワイナリーによっては蝋引きした紙やビニールで作られた傘をブドウの一房ごとにかけていることもある。 これらの手法は海外の生産者やワインのプロに話すとその労力の大きさと仕事の細やかさに驚かれるものだ。病害のリスクを圧倒的に低減することができる非常に効果的な手段であり、日本ならではの繊細な文化を反映している手法ともいえる。低収量で密植=高品質とは限らない もうひとつ海外の生産地と大きく異なる点はブドウの仕立て方だ。ブドウはつる植物であるため、支柱やワイヤーなどによる支えが必要だ。どのようにその支えを配置するかを「仕立て」というが、海外のワイン用ブドウ栽培では多くの場合、比較的高密植で生垣状にブドウを仕立てる「垣根仕立て(VSP)」が主流。一方で、生食用ブドウの栽培を基本にして発展してきた日本ではいわゆるブドウ棚に代表される低密植の「棚仕立て」が広く見られる。近年は垣マンズ・レインカットグレープガードビニールで作られた傘63病害のリスクの高さを補う日本独自の工夫
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