パンづくりのメカニズムとアルゴリズム
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アメリカから導入された2大パン製法 パン製法と一口に言っても、お国が違えばパンの種類や加工法も千差万別。今日の日本は世界でも類を見ないほど多くのパンを加工・販売している。日本の製パン科学と加工技術・設備は世界的にも群を抜いており、高品質なパンの大量供給が可能となっている。量販店やコンビニで販売されているパンがその代表格であり、最先端をいく合理化された生産ラインを持つ大手ベーカリーが大きく貢献している。 それらの礎となったのは、第2次世界大戦後にアメリカから導入された“Baking Science & Technology(製パン科学と加工技術)”である。現在でも主流となっている2大パン製法、「ストレート法」と「中種法」がプラント輸入とともに導入された。その後もアメリカのベーカリー業界のマニュアルやノウハウが提供されたことで、1950年代に日本のベーカリー業界は飛躍的な成長を遂げることになる。 驚くべきことにアメリカでは、2大パン製法は今より100余年前にアメリカ陸軍によって発表されていた。当時アメリカ陸軍は、第1次世界大戦に連合国の一員として1917~18年にヨーロッパ戦線に参戦すべく、野戦を想定してさまざまな準備をしていた。その一環として、食料供給を目的とした移動式ベーカリーの開発もなされており、1916年11月には「Manual for Army Bakers, 1916 (United States. War Dept)」が、スコット将軍(H.L.Scott)によって発令される。翌年にはパン製法や兵糧パンの開発並びに移動式野戦ベーカリー設営のためのマニュアルブックとして軍内部で刊行された。第1次世界大戦後の1923年には「Manual for Army Bakers, 1916 (United States. War Dept)」のコピーが一般に公開され、アメリカベーカリー業界と共有されることとなる。その内容は多岐にわたり、現在の“Baking Science & Technology”の基礎的な部分をすべて網羅した非常に完成度の高いものであった。もっとも、このベーカリー業界の急速な発展の背景には、1900年にフライシュマンズ社によるアメリカで初めてのベーカリー向けの圧搾イーストの工業化(パン用酵母の純粋培養による量産化)の成功があったことを忘れてはならない。高密度で天文学

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