新版 そば打ち教本
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味を醸し出すもとは主に甘皮と双葉である。通常、個体あたり2〜3の分枝を有し、葉の基部に小さい白い花[小花]を咲かせ、小花が数個集まって小花房を形成し、それがさらに20〜30個集まって花房を形成している。●ソバは他家受精の植物ソバの群落には、めしべが長い「長柱ち花か」  ん    ま  個体と、短い「短た柱ち花か」個体があり、出現比率は1対1である。異なる花柱の型の間でのみ受粉が可能で、典型的な他家受精作物である。花の構造的な特徴は、長柱花個体の花粉粒は小さく、短柱花個体では大きい(資料❷、❻、❼)。この現象は遺伝によるもので、異型花柱性(ヘテロスタイリー)と呼ばれている。長柱花には短柱花の花粉が必要で、反対に短柱花には長柱花の花粉が必要である。同柱花同士の交配の場合は「不適合受粉」といい、受粉ちょうゅうゅうした花粉は花粉管を伸ばすが、途中で止まってしまい受精できない。だから、ソバは1本だけでは実がならない。これとは対照的に、ダッタンソバは稲や麦と同じく自家受精が可能であるため、1個体だけでも種子がなる。受精の効率がソバに比べて高いため、収量はソバの約2倍に達することもある(193頁以降参照)。ソバの小花には8本のおしべがあり、その基部には8個の蜜腺がある。その蜜を求めてミツバチ、チョウ、ハナアブ、アリなどが訪れ(資粉(風媒)もあるが、遠方ではその効率は極めて悪い。●ソバは短日性の植物基本的には、ソバは短日性の植物である。つまりもっとも日が長い夏至の前に種を播くと花が咲くのが遅れて草丈が高くなり、倒れてしまう。ただし、夏の栽培で徒長して実がつかない傾向は秋栽培型品種で著しく、夏栽培型品種群(高緯度地方に適した品種で、北海道の「キタワセソバ」など)では影響は少ない。その理由は、高緯度地方は夏の日長(昼間の長さ)が長く、それに敏感に反応してゆっくり成長していると霜が降るまでに種子がつかずに枯死するからである。日長に対して鈍感な品種だけが栽培時期の日が長い高緯度環境に適応して生き残れたのだ。低緯度の起源地から高緯度地方に拡散料❽)、その時に受粉が行われる。風による受して進化してきた過程で、日長に敏感なものは淘汰されてきた。●ソバは無限伸育性の植物開花や結実が進行する特徴がある。この成長の特性は大豆と同じで、無限伸育性(無限伸長性ともいう)と呼ばれる。花が咲き実がついても次々と開花するので、最後まで実がつくのを待つと多くの実が落ちてしまい、収穫には厄介な性質である。手刈り収穫では約7割が熟した頃に収穫して圃ほ場で乾燥させること、コンバインでは約9割が熟した頃に収穫することが推奨されている(資料❾)。●ソバの実には後熟作用があるも、植物体のまま3〜7日天日に晒すことによって茎や葉の養分が実に運ばれ(養分転流という)、完熟させることができる。この性質を利用したのが、昔から「島し立だて」や「はざ掛け」などと呼ばれる伝統的乾燥法である。熱風で強制的に乾燥させる場合とは異なり、香りが飛ばないため、風味のよい玄ソバができる。●ソバの実の熟成と水分・呼吸の関係うに見えても、未熟で内部に水分をかなり含んだものがある。無限伸育性であるがために収穫時に完熟した種子と未熟な種子が混在していて、水分に偏りがある。一部の種子の水分が15・5稲や麦と違い、ソバは葉や茎の成長と同時にソバは収穫期に未熟の実が一部に残っていてソバは収穫後にソバ殻[果皮]が乾燥したよ〈短柱花〉花被柱頭(めしべ)葯(おしべ)蜜腺〈長柱花〉179資料❷ ソバの花の構造

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