天丼いもや(東京・神保町)
丁寧にきもちをこめて つくり続ける天丼は、つゆとてんぷら、ごはんの3大要素が味を決める
天丼1杯500円。平均提供時間5分から7分。この数字をみると、単なる安かろうまずかろうの店と思うでしょうが、けっしてそうではありません。
「天丼いもや」は丼メニューの本来の姿である量、価格、早さを実践しつつ極限までの質の追及がなされているのです。連日賑わいをみせる店の様子が、それを裏づけているといえるでしょう。
天丼のおいしさは、タイミングと相性にあります。丼つゆと天ぷら、そしてご飯。
3つをめぐる様々な要素が、タイミングよく、そして相性よくマッチしてこそ、初めておいしさが生まれます。たとえば高級素材を使った天ぷらをご飯にのせれば、即おいしい天丼になるという保証はないのです。同店の魚介類は、冷凍品がフル活用されています。もちろん吟味して選び、冷凍だからこそ必要なプロセスをきちんと踏むのはいうまでもありません。
一方手をかけられるところは徹底的に手をかけます。たとえばご飯は少量炊きを徹底しておひつで保温。また丼つゆはショウガと干しシイタケを加えて長時間ねかせたオリジナルの味。先代から引き継ぐ味をまもって、丁寧に天丼をつくりつづけたいとする、店主の真摯な姿勢も印象的です。