ショーケースに並べられたケーキを選ぶときに、いつも
気になるタルトケーキ。
ツヤツヤのフルーツがこぼれんばかりにのったものから、
焼き色がおいしそうな素朴なタルトまでいろいろあります。
さて、タルトの生地は粉をねってつくる練りこみ生地を
つかいます。
タルトなどの型を敷いてつかう生地の総称を“パータ・
フォンセ”と呼び、甘味がなく、お菓子にも料理にも
つかう基本的な練りこみ生地です。
この生地の配合比や材料をかえることによって、
風味に変化をあたえたり、食感の違うタルト生地を
つくることができます。
菓子にも料理にも使う基本のパータ・フォンセの他に、
砂糖を多く配合してつくる生地をパート・シュクレ、
パート・サブレ等と呼び、区別します。
パート・シュクレは、水を用いないので粘りがなく、
もろく、口溶けのよい生地。
パート・サブレは、パータフォンセやパート・シュクレより、
もろい状態の生地。砂糖と卵の量が多く、口の中で
溶けるようなもろさの生地です。
パータ・フォンセのフォンセは「型に敷き込む」の意味。
パータ・ブリゼ(ブリゼは「砕けた」の意味)ともいいます。
(「プロのためのわかりやすいフランス菓子」より)
今まではさほど気にしていなかったタルト生地、
今度からは、生地の微妙な違いも愉しんでみましょう!
タルトがたくさん掲載されている本をご紹介します。
◆「オーボンヴュータン河田勝彦の菓子 ベーシックは美味しい」
著者:河田勝彦 価格:6510円(税込)
河田氏の40年間の菓子づくりを凝縮した一冊。
生菓子から焼き菓子、チョコレート、アイスクリーム、
糖菓まで計125品を掲載しています。
本書では、16品のタルトをご紹介。
まずは、“パータ・シュクレ”と“パータ・フォンセ”の
基本のタルト生地の作り方と、9品のタルトを掲載。
たとえば、アルザス地方の代表的なフルーツタルトの
一つでもある、“タルト・アルザシエンヌ”。
白ワインでリンゴの香りが際立つ一品。
酸味の強い香りのいいリンゴを組み合わせると
おいしくなります。
そして、タルトの中に入れるクリームと生地の合体した
おいしさが味わえるタルトは7品を掲載。
その中のひとつ、タルト型をつかわずにつくる
“タルト・パン・コンプレ”。
全粒粉のパン・コンプレをかたどったお菓子。
直径18センチの円形の型をあて、くり抜いた2枚の生地に
クレームダマンドを挟んで焼き上げた一品。
アーモンドとバターの風味が広がる、表面は飴のような
パリンとした食感が味わえます。
昔は、パリのいくつかの店ではつくられていましたが、
今ではフランス人でも知らない人が多いほど
つくられなくなってしまったそうです。
本書のレシピには、お菓子に込める著者の考え方、
技術のポイントなどを解説した「シェフのひと言」を
掲載しています。ご参考に。
著者:杉野英実 価格:4725円(税込)
素材の表現力が天才的にすぐれ、繊細な味わいのある
杉野氏のお菓子69品を詳細なプロセス写真とともに
ご紹介しています。
本書でご紹介のタルトは、12品。
チョコレート、キャラメル、フルーツ、木の実など
素材はいろいろ。
フルーツをつかったタルトは8品。
◎ベル・ジャルディニエール
◎ベベ・ルージュ
◎タヒチ
◎タルト・ココ・バナーヌ
◎タルトレット・オ・フィグ
◎タルト・オ・ペシュ・エ・オ・プリュンス
◎タルト・ア・ラ・ルバーブ
◎タルト・オ・フリュイ・フレ
たとえば、暑い夏におすすめの“タヒチ”。
フィリングには、パッションフルーツのクリームと
酸味の強いソースがさわやかな一品。
甘く香ばしいタルト生地と、2?3ミリにカットし、
斜めに倒してきり口を美しくかさねたマンゴーの
黄色があざやかで元気になれそうですよ。
ほか、ガナッシュと生クリームでリッチな味わいの
チョコレートのタルトや、丸ごといれたナッツが
香ばしいキャラメルタルトなどもご紹介。
素材の持ち味を生かすこと、季節感をいかに表現するか
ということを大切にする杉野氏の感性あふれるお菓子を
堪能できる一冊です。
◆「フランス菓子店『イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ』の焼き菓子教室」
著者:椎名眞知子 価格:1890円(税込)
プロの味が家庭でも気軽に楽しめ人気店の菓子教室
「入門コース」の焼き菓子のレシピを公開した一冊。
本書でご紹介のタルトは、ビスケット生地とタルト生地
をつかった9品。
◎リンゴのタルト
◎イチゴのタルトレット
◎チョコレートのタルト
◎ブルーベリーのタルト
◎ココナッツとバナナのタルトレット
◎チーズのタルト
◎ブラックチェリーのタルト
◎ビールのタルト
◎レモンのタルトレット
たとえば、ちょっとめずらしい“ビールのタルト”。
ビールをお菓子につかうとどんな味になるのか気になる一品。
サックリとしたタルト生地に、フィリング(中身)は、
ビール、グラニュー糖、赤砂糖(サトウキビから
作られる砂糖の一種)、バター、全卵をつかい、
ふんわりと柔らかくプリンのような口あたりのタルトです。
赤砂糖は、ブラウンシュガーでも代用が可能。
おいしくつくるポイントは2つ。
苦みが強くコクがあるビールがおすすめで、フィリングの
固まりをよくするためによく冷やしておくこと。
そして、バターは、ビールに冷やされて固まらないように、
人肌に温めて加えるといいそうですよ。
家庭でつくる少量のレシピは時間や温度なども明確に
表示され、焼き菓子をつくるための材料、器具、基本ルール
も掲載しています。